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カカオ農園拡大が引き起こすガーナの森林破壊をGISで視覚化 「ガーナ森林マップ」公開

この記事のポイント
WWFジャパンは、ガーナ共和国における森林破壊とカカオ農園をはじめとする様々な土地利用を地図化し、「ガーナ・カカオ森林ランドスケープ土地利用マップ」(英名:Land Use Map of Ghana Cocoa-Forest Landscape、以下、「ガーナ森林マップ」)として公開しました。1980年から2020年の40年間でガーナの森林面積は半減したこと、その主な原因はカカオ農園の拡大であることが読み取れます。
目次

ガーナの森林はなぜ減ったのか?理由を検証

ガーナ森林マップでは、1980年、2000年、2020年の3つの時点におけるGIS(地理情報システム)情報を比較して土地利用の変化を把握できます。各レイヤーでは、森林やカカオ農園に加え、鉱区や低木林、休閑地など、計12種類の土地利用が確認可能です。詳細は[こちら]を参照ください。

ガーナ・カカオ森林ランドスケープにおける土地利用変化(左から1980年、2000年、2020年)。緑・黄緑色が森林(閉鎖林+疎林)、赤・ピンク色がカカオ農園(モノカルチャー+シェード・カカオ/日陰樹との混植)。
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ガーナ・カカオ森林ランドスケープにおける土地利用変化(左から1980年、2000年、2020年)。緑・黄緑色が森林(閉鎖林+疎林)、赤・ピンク色がカカオ農園(モノカルチャー+シェード・カカオ/日陰樹との混植)。

ガーナ・カカオ森林ランドスケープにおける12種類の土地利用について、1980年、2000年、2020年の変化を示すグラフ。
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ガーナ・カカオ森林ランドスケープにおける12種類の土地利用について、1980年、2000年、2020年の変化を示すグラフ。

ガーナ森林マップのデータ取得方法と精度

ガーナ森林マップの作成には、1980年、2000年、2020年のランドサット画像(Landsat 4-8 Collection 2 Level-2 scene-based data)を使用しました。リモートセンシングにより確認された12種類の土地利用は、精度向上のためサンプリングによる地上でのデータ検証(ground truthing)も実施。1980年、2000年、2020年の土地利用・土地被覆マップの全体的な精度はそれぞれ88.2%、81.3%、77.4%程度と推定されます。

ガーナ森林マップで使用する森林データは、FAOによる森林の定義に沿って区分されており、ガーナ林業委員会(Forestry Commission)による検証を経ています。また、2020年のレイヤーは2020年12月31日時点のものです。

ガーナ森林マップの活用方法

ガーナ森林マップは、カカオ農園拡大による森林破壊の深刻な状況を示すとともに、企業が持続可能なカカオのサプライチェーンを築くためのリスク把握に役立つと考えられます。

1)カカオ調達の森林破壊リスクを確認

カカオを使用する企業は、自社の調達先となる農園の位置情報を把握し、座標を入力することでその地点の土地利用を確認できます。たとえ位置情報が不明でも、後述する通り、州あるいは郡レベルの土地利用変化も見ることができるため、地域が分かっていれば森林減少の大まかな傾向を把握することができます。

2020年のレイヤー上に、とある緯度経度を入力した例。当該地は2020年時点でカカオ農園(シェード・カカオ)に転換済みであるため、EUDRの定義上は森林破壊には該当しない。
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2020年のレイヤー上に、とある緯度経度を入力した例。当該地は2020年時点でカカオ農園(シェード・カカオ)に転換済みであるため、EUDRの定義上は森林破壊には該当しない。

ガーナ森林マップは、EUDR(欧州森林破壊防止規則)と同様の森林の定義およびカットオフデートを使用していますが、あくまで森林破壊や土地転換のリスク把握・管理のためのツールであり、企業のEUDR対応にそのまま使うことを想定して開発されたわけではありません。EUDR遵守を求められる企業が森林や土地利用データを採用する際には、自社の具体的な活動やサプライチェーンの特性を踏まえてデータを精査することを推奨します。様々な専門家や研究者が、オープンソースのデータや特定のデータに頼るのではなく、複数のソース(現地調査、政府や専門機関が提供するデータ等)を併用して信頼性を高める重要性を主張しています。

直ちにEUDRに対応する必要のない企業であっても、国際的な定義や基準に沿うことは非常に重要です。また、EUDRの有無にかかわらず、カカオを使用する企業にはサステナブル調達を進めることが国際社会から求められていることに留意が必要です。

2)地域による森林減少・土地利用変化の違い

ガーナ森林マップでは、州あるいは郡レベルの土地利用変化も見ることができます。たとえば、日本向けカカオが生産されるセントラル州Assin South郡にはカクム国立公園があるため州内の他の郡に比べて自然度の高い森林である閉鎖林が多く残っていますが、公園外では森林減少が進んでいます。

任意の郡や州をクリックすると、土地利用に関するデータのグラフおよび数値データがポップアップする。図はAssin South 郡(左:1980年 右:2020年)。黄色枠で囲われた棒グラフが閉鎖林の面積。
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任意の郡や州をクリックすると、土地利用に関するデータのグラフおよび数値データがポップアップする。図はAssin South 郡(左:1980年 右:2020年)。黄色枠で囲われた棒グラフが閉鎖林の面積。

さらに、補足資料「ガーナ・カカオ森林ランドスケープにおける郡別土地利用変化」では、日本企業がカカオを調達している可能性のある以下の地域(郡)において、1980年から2020年の40年間における土地利用変化をグラフとデータテーブルで示しています。

州名 群名
セントラル(Central)州 Assin South郡、Assin North郡、Assin Central郡、Twifo Atti-Morkwa郡、Upper Denkyira East郡、Upper Denkyira West郡
アシャンティ(Ashanti)州 Adansi South郡
ウェスタン(Western)州 Amenfi Central郡、Prestea-Huni Valley郡
ガーナ森林マップから「Legend」上の赤枠部分をクリックすることでも「補足資料」にアクセス可能。
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ガーナ森林マップから「Legend」上の赤枠部分をクリックすることでも「補足資料」にアクセス可能。

補足資料中、Central州Assin South郡における1980年と2020年の土地利用変化を比較するグラフ。補足資料ではガーナ森林マップでポップアップする地域別情報の一部を日本語の簡易な解説付きでまとめている。
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補足資料中、Central州Assin South郡における1980年と2020年の土地利用変化を比較するグラフ。補足資料ではガーナ森林マップでポップアップする地域別情報の一部を日本語の簡易な解説付きでまとめている。

カカオを調達する企業に伝えたいこと

森林破壊のないカカオのサプライチェーンを確立するには、まず農園までのトレーサビリティを追求し、リスクを把握することが重要です。

ガーナにおける森林減少は急速に進行しており、日本企業には持続可能なカカオ調達の実現に向けた責任があります。日本企業には、ガーナ森林マップを活用して森林破壊リスクや土地利用の変化を適切に把握し、サステナブル調達を進めていただきたいと思います。

WWFジャパンは引き続きガーナの森林をモニタリングし、企業の持続可能な調達を支援していきます。

ガーナ森林マップはこちら

ガーナ・カカオ森林ランドスケープ土地利用マップ、その他カカオ調達方針等に関するご質問がありましたら、下記までお問い合わせください。

WWFジャパン 森林グループ
forest@wwf.or.jp

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