かささぎの渡せる橋におく霜の… 七夕によせて


「かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける」

百人一首に収録されているこの有名な歌。

「霜」とあるので冬の歌かと思いきや、これは本日7月7日の七夕の歌だそうです。

七夕の日は年に一度、織姫と彦星が天の川を渡って会うとされる日。

その折、川を渡る橋をかけるのが、「かささぎ」という鳥です。

これはカラスの一種で、白と黒の身体に、光沢のある羽を持つきれいな鳥で、日本では北九州一帯にのみ分布しています。

もっともこの鳥は、文禄・慶長の役の折に朝鮮半島から大名が日本に持ち帰ったとか、渡ってきた個体が定着したなどといわれ、昔から日本にいたわけではなかった模様。

上の和歌を詠んだ大伴家持などは奈良時代の方なので、本物の鳥の姿は見たことが無かったに違いありません。

ともあれ東京などで暮らしていると、カササギはなかなか姿を見ることができないため、九州の水田プロジェクトのフィールドに出向いた折に目にしたりすると、非常にテンションが上がります。

ですが先日、別の場所で、久方ぶりにこの鳥を見た時はビックリさせられました。

場所は、ユキヒョウの保護プロジェクトの現場であるインドはラダック州、西ヒマラヤの標高4,000mの高地。

西ヒマラヤで出会ったカササギたち。谷を吹き上げる風に乗って遊んでいました。

西ヒマラヤで出会ったカササギたち。谷を吹き上げる風に乗って遊んでいました。

やはりカラスというべきか、人のすむ集落の周りをすみかとしているようでしたが、それでもこんな場所でお目にかかれるとは!

日本では平地でくらす鳥の、意外かつ逞しい一面を見ることができました。

そんなカササギたちが活躍する、本日7月7日の七夕の日。

願わくば今宵の雲が晴れ、天の川に橋がかかりますように。

西ヒマラヤのプロジェクト現場。この標高4,000mの高地にユキヒョウやヒグマ、ウリアルなどが生息しています。画面中ほどの緑のある場所が人の集落。奥の雪をいただく山嶺は、7,000mを超えます。

西ヒマラヤのプロジェクト現場。この標高4,000mの高地にユキヒョウやヒグマ、ウリアルなどが生息しています。画面中ほどの緑のある場所が人の集落。奥の雪をいただく山嶺は、7,000mを超えます。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

人と自然が調和して
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WWFは100カ国以上で活動している
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