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湿地を再生したら、マナヅルがやって来た!


冬になると日本にもやってくる大型の渡り鳥マナヅル。

この鳥が夏の繁殖期を過ごす場所が、遠く離れたモンゴルにあります。
そんな場所で私たちが聞いた、湿地とマナヅルの復活の一歩のお話を紹介しましょう。


その場所は、モンゴル北東部のヘルレン川流域にあるハル・ヤマー自然保護区。
そこにある、フルスタイ湖という湖です。

フルスタイ湖。この湖があるハル・ヤマー自然保護区は、森林から草原の移行帯で、さまざまな野生動物が息づいています。
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フルスタイ湖。この湖があるハル・ヤマー自然保護区は、森林から草原の移行帯で、さまざまな野生動物が息づいています。

私たちがここを訪れた時、一帯には美しい湿地帯が広がっていました。

しかし、ほんの数年前までこの湖は、主に家畜の過放牧によって、水量が極端に減り、一部はぬかるみと化し、背の高い植物もほとんど見られなかったそうです。

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~2018年頃までのフルスタイ湖の様子。家畜が水飲み場として利用し、水量の減少や汚物による汚染が深刻化していました。

当時の様子を聞かせてくれたのは、ハル・ヤマー自然保護区のレンジャー、ヘルレンバートルさん。

行政と自然保護区、そしてWWFモンゴルが協力して取り組んだ、フルスタイ湖の再生活動の中心人物です。

この取り組みでは、地域の方々にもご支援いただきながら、家畜が湿地に侵入するのを防ぐフェンスを設置。野生動物が水辺を利用できる環境の復元を目指しました。

フェンス設置後のフルスタイ湖。特に湖の縁~フェンス以内に、植生が回復していることがわかります。
© WWF-Mongolia

フェンス設置後のフルスタイ湖。特に湖の縁~フェンス以内に、植生が回復していることがわかります。

「フェンスの設置後、わずか数週間で変化がありました」
と、ヘルレンバートルさんは語ります。

家畜の侵入がなくなると、大幅に水量が回復。さらに、マナヅル、ツクシガモ、オオハクチョウなど、さまざまな水鳥が飛来するようになったのです。

「保全計画の構想当初は、フェンス設置の効果に懐疑的な意見もありましたが、実際にマナヅルをはじめ鳥類が湖を訪れるようになると、地域の方々も含め、たくさんの人々が喜んでくれました」

近年、フルスタイ湖では、初夏になるとマナヅルが営巣し、ヒナが生まれ育っています。

フルスタイ湖で生まれたマナヅルのヒナたち。湿地の自然は見事によみがえりました!
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フルスタイ湖で生まれたマナヅルのヒナたち。湿地の自然は見事によみがえりました!

マナヅルのような絶滅の危機にある渡り鳥を守るためには、繁殖地と越冬地の双方で、保全活動を行なう必要があります。

この冬、日本や中国で羽を休めたマナヅルたちは、モンゴルやシベリアの繁殖地に、今ちょうど向かい始めていることでしょう。

鹿児島県出水市にて撮影した、親子と思われるマナヅル。幼鳥(写真右)は、頭部や後頚部が茶褐色をしています。モンゴルやシベリアで生まれたヒナが成長し、海を越え日本で越冬し、再び繁殖地に向け旅立ちます。
© WWF-Japan

鹿児島県出水市にて撮影した、親子と思われるマナヅル。幼鳥(写真右)は、頭部や後頚部が茶褐色をしています。モンゴルやシベリアで生まれたヒナが成長し、海を越え日本で越冬し、再び繁殖地に向け旅立ちます。

今年もフルスタイ湖でマナヅルが安全にすごし、新しい命が生まれますように。

私たちもWWFモンゴルの仲間たちと力を合わせ、湿地とツルの保全活動に取り組んでいきたいと思います。

フルスタイ湖を案内してくれた、ヘルレンバートルさん(左から2人目)。保全の背景と、ご自身の地元でもあるハル・ヤマーの自然に寄せる強い思いを語ってくれました。日本で行なわれたエコツーリズム研修に参加されたことがあるそうで、日本語であいさつしてくださいました。
© WWF-Japan

フルスタイ湖を案内してくれた、ヘルレンバートルさん(左から2人目)。保全の背景と、ご自身の地元でもあるハル・ヤマーの自然に寄せる強い思いを語ってくれました。日本で行なわれたエコツーリズム研修に参加されたことがあるそうで、日本語であいさつしてくださいました。

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自然保護室(淡水グループ)
羽尾 芽生

大学卒業後、官公庁に入省し、安全保障、国際交流、先端技術等に関する業務に約7年間従事。 2023年より現職。農産物の生産や精密機器等の製造過程で利用される「水」に着目し、日本が関連する海外フィールドでの責任ある水利用管理やコレクティブアクション(流域でのステークホルダー間の協同活動)を主に担当。

自分は何のために生きているのか。よく自問しますが、たぶん、特別な意味も使命もなく、偶然生きています。地球の育む豊かな自然、そして、たくさんの人々に支えられて、なんとか生きてこれました。 地球の未来とそこにくらす生きもの(人々)の未来に、ほんの微力であっても恩返ししたいです。 まずは目の前の活動を丹念に精一杯やる、そこからが第一歩!

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