タイのケーン・クラチャン国立公園で2頭目のトラを確認!


トラの保護活動を行なっているタイから、嬉しいニュースが届きました!

絶滅寸前のインドシナトラが、タイ最大の自然保護区ケーン・クラチャン国立公園で、今年初めに確認されていた1頭に続き、この夏、2頭目が確認された、というのです。

私たちはWWFタイの仲間たちと一緒に、ここで2018年6月より自動撮影カメラによる調査を実施してきました。
今回の確認は、その調査によるものです。

2頭目(上)と1頭目(下)。2枚の写真を見比べると、左前脚の模様が異なっていることが分かります。
2頭目(上)と1頭目(下)。2枚の写真を見比べると、左前脚の模様が異なっていることが分かります。

2頭目(上)と1頭目(下)。2枚の写真を見比べると、左前脚の模様が異なっていることが分かります。

それにしても、このトラはどこから来たのでしょう?

トラはなわばりを持つ習性があり、なわばりの外へ出ることはあまりありません。
しかし開発などで生息環境が失われたり、親から離れ独立して間もない場合には、新たななわばりを求めて広く移動することがあります。

今回の国立公園は、周囲に農地や住宅などが迫り、トラにとっては移動しにくい場所。
ですが、公園の西端は隣国ミャンマーとの国境に接しており、そちら側にはまだ豊かな森が残っています。

もしかしたら今回のトラは、ミャンマーからやってきたのかもしれません。

ケーン・クラチャン国立公園の位置。ミャンマーと国境を接している。

ケーン・クラチャン国立公園の位置。ミャンマーと国境を接している。

そんなわけで、確認された2頭がどうしているかは、以下の3パターンが考えられます。

  • 2頭とも一時的に立ち寄っただけ
  • どちらかは公園内に留まっている
  • 2頭とも留まっている

今のところ正解は分かりませんが、調査を継続し、情報を集めていくことは、次に行なうべき保全活動の大きなヒントになります。

ケーン・クラチャン国立公園。地形は険しく、カメラの設置にも往復数日から数週間かかる。この森のどこかでインドシナトラが今日も獲物を求めて歩いている。
©WWFジャパン

ケーン・クラチャン国立公園。地形は険しく、カメラの設置にも往復数日から数週間かかる。この森のどこかでインドシナトラが今日も獲物を求めて歩いている。

2頭目確認の知らせは、国境にとらわれず、森と森、生息地と生息地のつながりを維持することが、いかに重要かということを思い起こさせてくれる出来事です。

私たちも引き続き、タイからミャンマーに続くメコン地域の貴重な森を、一つの生態系としてとらえ、保全活動を継続していきます。

地球から、森がなくなってしまう前に。

森のない世界では、野生動物も人も、暮らしていくことはできません。私たちと一緒に、できることを、今日からはじめてみませんか?

今日、森林破壊を止めるためにできること

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自然保護室(森林)
岩渕 翼

博士(生命科学・東北大学)
カリフォルニア州立大学卒業。学位取得後、大学のポスドクや助教として生物と環境の相互作用や、生物多様性の保全や評価手法の開発、企業緑地の生物多様性配慮等に関する研究を行う。研究の傍ら、栃木県環境審議会専門委員として行政支援を行うほか、東日本大震災後には人と自然の復興を目指すグリーン復興の活動に関わる。その後、環境保全NGOに勤務し森林や湿地の保全プロジェクトを担当。WWFジャパンでは東南アジアを中心に、森林や野生生物の科学的なモニタリングから天然ゴムなどの森林コモディティの持続可能な生産の推進など、多角的な活動を展開。

小学生の頃にファーブル昆虫記を読んで感激し、その頃から将来は生き物に関わる仕事をすると心に決めていました。さらに中学生の頃に「沈黙の春」を読み衝撃を受け、環境保全を意識するようになりました。そのあと生態系の仕組みを調べる研究者になり、科学に基づいた保全を追求するために保全の現場に関わるようになりました。森林保全プロジェクトと同時に子育てプロジェクトも進行中。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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