© Tsubasa Iwabuchi / WWF-Japan

野生オランウータンに遭遇!しかし危機は目の前に


森林グループの岩渕です。
先日、なんと野生のオランウータンに遭遇する幸運に恵まれました。
場所はインドネシア・スマトラ島中部のブキ・ティガプル地域。

天然林の様子を見に行った際、ふと脇に目をやると、わずか10mほど先の木にぶら下がっていました。

こちらに興味を持ったようで、その場から去ることなくいろいろな表情を見せてくれました。

人間みたい?遭遇したのはスマトラオランウータンで、この他にボルネオオランウータンとタパヌリオランウータンの2種がある。3種ともIUCNレッドリストで近絶滅種(CR)。
© Tsubasa Iwabuchi / WWF-Japan

人間みたい?遭遇したのはスマトラオランウータンで、この他にボルネオオランウータンとタパヌリオランウータンの2種がある。3種ともIUCNレッドリストで近絶滅種(CR)。

実はこの地域のオランウータンは、かつて一度絶滅しており、現在生息しているのはすべて野生復帰を果たした個体です。

森林破壊によって母親と生き別れ、不法にペットとして飼育されていた個体を保護し、野生で生きる術を学ばせてから、野生復帰させてきました。
これまでに、約170頭がリリースされています。

ドリアンを食べるスマトラオランウータン。若いオスと見られる。
© Tsubasa Iwabuchi / WWF-Japan

ドリアンを食べるスマトラオランウータン。若いオスと見られる。

数が非常に少ない野生のオランウータンとの遭遇は、滅多にあることではありません。インドネシア人ですら、見たことがある人は限られています。とても幸運な出会いでした。

しかしそのわずか500m先で、一気に現実に引き戻されてしまうのです。

焼かれ、切り開かれたブキ・ティガプルの森
© Tsubasa Iwabuchi / WWF-Japan

焼かれ、切り開かれたブキ・ティガプルの森

そこに広がっていたのは、森が焼かれ、切り開かれてしまった光景でした。
この後、アブラヤシや天然ゴムの農園に転換されるのです。

このような農園で作られたパーム油や天然ゴムが、日本でも使われています。

私たちはWWFインドネシアの仲間たちと、これ以上森を切り開かずに、既存の農地で持続可能な農業を広める取り組みを続けています。

また今年、インドネシアやアマゾンでの大規模森林火災に対し、緊急支援を行ないましたが、このブキ・ティガプルでも、火の見やぐらの建設やパトロール強化などを進めています。

蘇ろうとしているオランウータン。
そのすみかの森を守る取り組みは、まだ道半ばです。

オランウータンを見た森
© Tsubasa Iwabuchi / WWF-Japan

オランウータンを見た森

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自然保護室(森林)
岩渕 翼

博士(生命科学・東北大学)
カリフォルニア州立大学卒業。学位取得後、大学のポスドクや助教として生物と環境の相互作用や、生物多様性の保全や評価手法の開発、企業緑地の生物多様性配慮等に関する研究を行う。研究の傍ら、栃木県環境審議会専門委員として行政支援を行うほか、東日本大震災後には人と自然の復興を目指すグリーン復興の活動に関わる。その後、環境保全NGOに勤務し森林や湿地の保全プロジェクトを担当。WWFジャパンでは東南アジアを中心に、森林や野生生物の科学的なモニタリングから天然ゴムなどの森林コモディティの持続可能な生産の推進など、多角的な活動を展開。

小学生の頃にファーブル昆虫記を読んで感激し、その頃から将来は生き物に関わる仕事をすると心に決めていました。さらに中学生の頃に「沈黙の春」を読み衝撃を受け、環境保全を意識するようになりました。そのあと生態系の仕組みを調べる研究者になり、科学に基づいた保全を追求するために保全の現場に関わるようになりました。森林保全プロジェクトと同時に子育てプロジェクトも進行中。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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