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「持続可能な天然ゴム」を目指して 生産地での2年目の活動がスタート(動画あり)

この記事のポイント
株式会社ブリヂストンとWWFジャパンは、天然ゴムの持続可能性向上のための協働の一部として、2024年1月よりインドネシアのスマトラ島中部の天然ゴム生産地で、小規模な生産農家を支援する取り組みを開始しました。これは、1990年代より現地で自然保護活動を展開してきたWWFインドネシアの専門的な知見や地域との繋がりと、同社が長年培ってきた天然ゴム生産に関わる知見や技術とを組み合わせて実施するものです。生産性や品質の向上はもちろん、近年注目される「持続可能な調達」の分野で課題となっている農園の位置情報の取得や森林減少への関与のないことの確認なども含まれます。そんな持続可能な天然ゴムの生産と利用の実現を目指し、2025年1月、現地での2年目の活動がスタートしました。
目次

プロジェクト概要

目的 持続可能な天然ゴム生産を目指す小規模農家への支援
場所 インドネシア
スマトラ島リアウ州、ジャンビ州
実施体制 【日本】WWFジャパン、株式会社ブリヂストン
【インドネシア】WWFインドネシア、PT. Bridgestone Sumatra Rubber Estate(BSRE)

(関連リンク)
関連情報:「持続可能な天然ゴム」を目指して インドネシアでブリヂストンとの協働がスタート(2024年3月)

インドネシアの豊かな自然と農林産物の生産

野生のゾウ、トラ、オランウータンといった絶滅の危機に瀕する野生生物が今も息づく、希少な熱帯林が存在することで知られているインドネシアのスマトラ島。

多くの野生生物の命を育んできた森や川、土壌がもたらす自然の恵みは、多様な民族の暮らしや文化も支えてきました。

この世界屈指の豊かな自然が残る島は、天然ゴムや紙パルプ生産のためのアカシアやユーカリ、パーム油生産のためのアブラヤシといった農林産物の一大生産地でもあります。

これらの農林産物は地域の経済発展と世界の消費を支える一方で、自然の森を大規模に伐採し造成されるプランテーション(大規模な農園や産業用植林地)開発や小規模な農家による農地開拓は、スマトラ島の熱帯林を減少させる要因の一つにもなってきました。

スマトラ島中部に広がる自然の熱帯林。多種多様な木が混在する豊かな森林生態系は、絶滅危惧にある大型野生動物たちの命をもはぐくむ(左)。同地域の伝統的なボートレース祭り。木製の長いボートは、地域の森から一本のまっすぐの木を伐採しくり抜いてつくられるもの(右)。

スマトラ島中部に広がる自然の熱帯林。多種多様な木が混在する豊かな森林生態系は、絶滅危惧にある大型野生動物たちの命をもはぐくむ(左)。同地域の伝統的なボートレース祭り。木製の長いボートは、地域の森から一本のまっすぐの木を伐採しくり抜いてつくられるもの(右)。

天然ゴム産業を支える小規模な生産農家

世界的な人口増や経済発展などによって、今後も天然ゴムは需要の高まりが予測されています。

この主要な天然ゴム生産国のインドネシアやタイなどで、その生産を支えているのは、数ヘクタールほどの広くはない農地で農業をする天然ゴム農家たちです。

このような小規模な農家は、ゴムの木の育成や管理、樹液の採取、採取後の保管などについて正しい知識を得る機会が少ないために、低効率で低い品質の生産方法になってしまっているケースが多く、これが生計を改善するための新たな農地開拓の動機となって森林減少につながる可能性があります。

このためブリヂストンとの取り組みにおいては、同社が培ってきたノウハウを現地の小規模な生産農家に伝え、高効率で高品質の生産を可能とし、生計向上に寄与することで、新たな森林減少に関わりのない持続可能な天然ゴム生産が実現することを目指しています。

1年目の主な研修内容

初回トレーニングにてタッピング、安全管理、道具メンテナンスなどについて基礎から学ぶ(左)。ブリヂストンの農園にて苗の生産、植え付け、幼木管理などの一連の生産段階を視察・実習右)。

初回トレーニングにてタッピング、安全管理、道具メンテナンスなどについて基礎から学ぶ(左)。ブリヂストンの農園にて苗の生産、植え付け、幼木管理などの一連の生産段階を視察・実習右)。

正しい技術のトレーニングを継続しつつ、指導者として他者に広めていけるよう、教材を使った指導や伝え方などについても練習を実施(左)。2024年の最終トレーニングでは、一定の知識と技術を習得できたことを修了試験にて確認(右)。

正しい技術のトレーニングを継続しつつ、指導者として他者に広めていけるよう、教材を使った指導や伝え方などについても練習を実施(左)。2024年の最終トレーニングでは、一定の知識と技術を習得できたことを修了試験にて確認(右)。

2024年9月下旬に実施されたトレーニングの様子。ゴムの原料となる樹液(ラテックス)を収穫するために樹皮に切り込みを入れるタッピング作業や、集めたラテックスを凝固させて回収するプロセスを繰り返し練習。© WWF-Japan

2年目の活動が現地でスタート

2025年1月、この持続可能な天然ゴム生産のためのプロジェクトの2年目の取り組みがスタートしました。

主な活動の一つは、2024年にトレーニングを受けた農家から他の農家への知識と技術の拡大です。

それぞれの農家が属する生産者組合や農家グループのなかで、一連のトレーニングで習得したゴムの木の栽培や生産に関する知識や技術を伝える機会をつくり、より広い範囲で活かされることを計画しています。

この他にも、現地に不足してる天然ゴムの苗の供給体制の整備、収穫期を過ぎた古い天然ゴム木の植え替え、生計向上につながるアグロフォレストリーの導入、天然ゴム農園の位置情報のデータベース化などを計画しています。

高齢化も課題の一つとされる小規模な生産農家にとって、新しい知識や技術を習得したり、長く継続してきたやり方を変えたりすることは、時間も根気も要する取り組みです。、さらに農家自身が指導者としての自覚を持ち、リーダーシップをとって他者に伝えていけるようになることは、決して容易なことではありません。

プロジェクトではこれからも、現地で長く活動を展開してきたその経験を活かしながら、地域の人々に寄り添いながら、自然環境に配慮した持続可能な方法で、暮らしに欠かせない農産物や林産物の生産が行なわれるよう取り組みを継続します。

2024年の一連のトレーニングを通じて指導者としてのノウハウも習得。今後は他の農家さんへの指導に力を入れる(左)。アグロフォレストリーのメリットなどについて学ぶワークショップを開催。天然ゴム農園に適する樹木や農作物、その選び方のポイントなどについて学んだ後、実際にある農地を例に農家自身がレイアウト図面を作成(右)。

2024年の一連のトレーニングを通じて指導者としてのノウハウも習得。今後は他の農家さんへの指導に力を入れる(左)。アグロフォレストリーのメリットなどについて学ぶワークショップを開催。天然ゴム農園に適する樹木や農作物、その選び方のポイントなどについて学んだ後、実際にある農地を例に農家自身がレイアウト図面を作成(右)。

2025年1月に実施されたトレーニングの様子。1年目にトレーニングを受けた農家が今度は指導者として他の農家を指導。© WWF-Japan

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