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FSCの森とオオサンショウウオの川


「オオサンショウウオなら普通にいるよ。アユを獲る仕掛けのところに、夜いくと口を開けてアユを待ってるんだ」

これは岐阜県の東白川村を訪れた折、ここで林業や製材業を手掛けていらっしゃる方々が、地元を流れる白川の様子として聞かせてくれたお話です。

オオサンショウウオといえば日本の特別天然記念物。

そのすみかは、岸辺が豊かな緑で覆われ、礫とよばれる小石や砂地などのきれいな水流のある場所に限られます。

また、生息場所が無事でも、上流での開発などによって環境が変化すると、その影響も受けてしまう、非常に保護の難しい動物です。

オオサンショウウオ。現存する両生類では最大の種(しゅ)です。近年は近縁の外来生物チュウゴクオオサンショウウオとの交雑も各地で確認されており、国内はもとより、世界的にも絶滅が心配されています。(この写真は東白川のものではありません)
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オオサンショウウオ。現存する両生類では最大の種(しゅ)です。近年は近縁の外来生物チュウゴクオオサンショウウオとの交雑も各地で確認されており、国内はもとより、世界的にも絶滅が心配されています。(この写真は東白川のものではありません)

そんな動物が、当たり前にいる、というのですから、もちろん、私たちはビックリ。

さらには、 アジメドジョウやカワヨシノボリ、カワムツ、アブラハヤなどなど、さまざまな淡水魚も生息しており、地元の方々からは、「昔はよく魚を食べたり、釣って遊んだりした」と楽しそうにお話していただきました。

多様な生態系を育みながら、人々の日常生活の一部にとけこんでいる、そんな白川の自然は、実際感激するくらい素晴らしく、川に迫る谷あいの斜面のあちこちからは、きれいな沢や湧水がいくつも本流に流れ込んでいます 。

しかも、そうした村内の山林は、ほとんどが天然林ではなく、ヒノキやスギの人工林。

東白川村は「東濃檜」で知られる林業の町ですが、この高品質の木材を生み出すための厳しい山林の管理が、川への土砂の流出を防ぎ、豊かな水源を育んでいるのです。

東白川村を流れる白川の流れ。木曽川につながる川の一つです。適切な森林管理により山林の表土が安定しているためか、雨が降っても、川がほとんど濁らないそうです。地元では、底生生物の観察会として カワゲラ・ウォッチングも開催されたことがあるそうです。
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東白川村を流れる白川の流れ。木曽川につながる川の一つです。適切な森林管理により山林の表土が安定しているためか、雨が降っても、川がほとんど濁らないそうです。地元では、底生生物の観察会として カワゲラ・ウォッチングも開催されたことがあるそうです。

この東白川村の森林管理は、持続可能な林業の国際認証である「FSC®認証」も取得。20年以上にわたり、その取り組みを続けてこられました。

地元の森と木々を大切にする方々の思いと営みが、山林を守り、豊かな水の流れを育んでいる東白川。

持続可能な林業と生物多様性の保全が、確かに一つになった、素晴らしいこの取り組みを、もっと多くの方に知ってもらい、日本の中でも広げていければ、と思います。

私たちが地元の方にご案内いただいた、東白川村のFSC認証林。よくあるヒノキやスギの人工林と異なり、林床をさまざまな植物が覆う、自然の豊かさが際立った森でした。こうした取り組みは、木曽川全体の流域保全という観点から見ても、非常に重要です。
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私たちが地元の方にご案内いただいた、東白川村のFSC認証林。よくあるヒノキやスギの人工林と異なり、林床をさまざまな植物が覆う、自然の豊かさが際立った森でした。こうした取り組みは、木曽川全体の流域保全という観点から見ても、非常に重要です。

【お知らせ】
WWFジャパンではネイチャー・ポジティブを推進する取り組みの一環として、国産のFSC認証材を広めるため、企業や自治体との連携・協力を目指しています。ご関心をお持ちの方は、ぜひご連絡ください。(WWFジャパン森林グループ:forest@wwf.or.jp

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自然保護室(淡水グループ)
羽尾 芽生

大学卒業後、官公庁に入省し、安全保障、国際交流、先端技術等に関する業務に約7年間従事。 2023年より現職。農産物の生産や精密機器等の製造過程で利用される「水」に着目し、日本が関連する海外フィールドでの責任ある水利用管理やコレクティブアクション(流域でのステークホルダー間の協同活動)を主に担当。

自分は何のために生きているのか。よく自問しますが、たぶん、特別な意味も使命もなく、偶然生きています。地球の育む豊かな自然、そして、たくさんの人々に支えられて、なんとか生きてこれました。 地球の未来とそこにくらす生きもの(人々)の未来に、ほんの微力であっても恩返ししたいです。 まずは目の前の活動を丹念に精一杯やる、そこからが第一歩!

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環境保全団体です。

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