「山の幻」ユキヒョウ保全の舞台裏
2024/12/26
標高4,000m。日本一の標高を誇る富士山(3,776m)より高い地域で、絶滅危惧種ユキヒョウの保全活動を行なう仲間がいます。
WWFは、西ヒマラヤのラダックでユキヒョウ保全に取組んでいます。
今回、私は現地を訪れ、保全活動に同行し取組状況を視察してきました。WWFインドのフィールドチームの活動をご紹介したいと思います。
この地域に生息するユキヒョウに迫る脅威は多岐にわたります。
✓ 気候変動(地球温暖化)による生息環境の変化
✓ 過放牧の影響によるユキヒョウの獲物となる野生動物の減少
✓ 家畜を襲う獣害としての駆除
みなさん、これらの脅威からユキヒョウを守るために何をしたら良いと思いますか?
ユキヒョウに限ったことではありませんが、野生動物の保全活動に予め成功が約束された方法はありません。
保全活動を進めるには問題の原因を調査し、関係する人々を特定し、その生活、文化、置かれている状況を正しく把握する必要があります。
フィールドチームは多くの調査を行ない、原因を把握し、ユキヒョウ保全のための取組を行っています。
✓ 個体数測定のためのカメラトラップ設置、及び1万枚を超えるユキヒョウ画像の分析
✓ 多様なステークホルダーとの対話及び取組協力依頼
✓ 持続可能な放牧を促すためのコミュニティ支援
✓ ユキヒョウや肉食動物と人々との軋轢を緩和するための 若い世代を対象とした環境教育
一見、容易に思えますが、現場の多くは富士山よりも標高の高い場所。
時には標高5,000mを超える山で調査を行なうこともあります。
また、関係者との打合せや、保全活動に関心のない人々に対話のテーブルへついてもらうため、舗装が十分でない数百キロの道を幾度も往復します。
そんなハードな現場に同行した私は、車酔いと高山病のダブルパンチに数日打ちのめされました。
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世界ユキヒョウの日に学校でイベントを開催し、子供たちにユキヒョウをはじめ、住んでいる地域の自然の豊かさや価値を子供たちの目線に合わせて伝えています。
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過放牧に依存しない持続可能な牧畜を実現するため、2024年7月から女性コミュニティで新たな収益源となるハンディクラフト生産の指導を行い、地域の特産品であるパシュミナを使用したショールの生産を行なっています。
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ユキヒョウや肉食動物によって家畜が被害にあっている地域の人々を訪問し、取り組んでいる獣害対策の効果をヒアリングしました。
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10,000枚を超える画像データを1つずつ確認し、ユキヒョウの斑点の位置などから個体を特定。担当するスタッフは、「ユキヒョウが夢に出てくる」ほど膨大な量のデータを分析しています。
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現場への移動時には標高5,000mを超える場所も
今回の視察を通して、日本のみなさまのご支援に支えられ、難しい環境や状況の中でもユキヒョウ保全活動を継続できていること、また現地での活動が、関係者の理解を得ながら、着実に進んでいることを実感しました。
この活動を継続し、ユキヒョウと地域の人々が安心して生活できるよう、今後もプロジェクトへの貢献に努めていきたいと思います。
今後も引き続き、活動へのご理解とご支援を、よろしくお願いします。