寒い季節に欠かせない毛織物とユキヒョウの関係
2024/12/10
一見、関わりがないように見えるユキヒョウの保全と毛織物。実は深い関係があります。
ここは、ユキヒョウが生息する西ヒマラヤのチャンタン地域。
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獲物となる草食動物が数を減らしていることが、ユキヒョウの絶滅のおそれを高める一因となっています。そして、草食動物減少の理由にヒツジなどの家畜の過放牧があると考えられています。
私たちはこの問題を解決するため、畜産物の価値を高め、環境に負荷の少ない放牧の実現を目指しています。
標高4,000mの高地であるチャンタン地域のハンレ、ソカーは特に寒さが厳しく、10月でも朝晩は気温が氷点下にもなるほど。
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女性グループが織ったパシュミナのストール。パシュミナに使われるヤギの毛の価格は、1㎏18,000ルピー(約32,000円)となり羊毛の2倍です。毛織物も高値で取引されています。
こうした地域で飼育されるヤギの毛は非常に細く、暖かく、そして肌触りが良いことから、その毛織物製品(パシュミナ)は世界中で人気があります。
高品質の山羊毛の特性を生かした高品質な毛織物を生産し、収益を向上させるため、WWFでは、チャンタン地域の女性グループに対して、織り機や、専門家による織物トレーニングを提供しています。
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グループは1グループ15~30名。年齢も10~60代まで様々です。子供を連れてトレーニングに参加する女性もいます。
また、マイクロファイナンスを地域5か所に導入し、自立した事業となるような後押しも行なっています。
参加者の中には、家事や道路建設、政府関係の仕事を終えてからトレーニングに参加している女性も少なくありません。
10度を下回る寒さの中、夜間にトレーニングに励む女性の姿がありました。
技術を身に着け、ビジネスとして成功させたい、という強い想いが伝わってきます。
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数ヶ月のトレーニングで、凝ったデザインのストールを織れるようになるメンバーもいます。
一方で、パシュミナの生産は他の地域でも行われており、他の生産者との競合も避けられません。製品の差別化や販路をどう拡大していくか、という課題があります。
WWFでは、毛織の技術向上に加え、生産管理や販売戦略など、効率の良い生産と収入を得るためのノウハウや管理体制の強化といった支援も行っていく予定です。
私たちはこれからも、女性たちへの支援を通じて、ユキヒョウの保全を目指していきます。