2025年 新年のご挨拶


新年、あけましておめでとうございます。
WWFジャパン事務局長の東梅貞義です。

昨年、環境問題に取り組む私たちWWFジャパンを、さまざまな形でご支援いただきました皆さまに、また協働を通じて活動をご一緒に推進してくださった皆さまに、心から御礼を申し上げます。

海の未来をひらく!新たな活動の成果

皆さまのご支援のおかげで、私たちは2024年の1年間も、確かな活動の成果を手にすることができました。

たとえば、海洋の保全活動については、持続可能な漁業の取り組みを、国内外で進めることができました。

海の生物や水産資源、また人権などに配慮した、持続可能なシーフードの国際認証として、私たちが推進している、MSCとASCの新たな認証が誕生したのです。

ASC認証の取得が実現した、インドネシアでの持続可能なエビ養殖の改善プロジェクトがスタートしたのは、2021年。

養殖を手掛ける現地インドネシアの生産者や水産企業の方々、そしてここで生産された持続可能なエビを購入している、日本の小売企業の皆さんと協力し、調査から始め、改善を施し、審査を受け、さらに改善を重ねて、ついにASCの国際認証を取得しました。

MSCについては、日本で多く消費されているマグロの漁業で、まき網漁では初となる認証取得が実現。こちらも、持続可能な漁業を実現するため、WWFが協働してきた水産会社の方々の多大な努力により、見事に実を結ぶこととなりました。

これらの成功には、大きな意義があります。

日本は世界屈指の水産大国であり、その消費は今も、地球各地の海の自然にも影響をもたらしています。
その中で、海外と日本の食卓を結び、対話を通じた取り組みと協力による取り組みが、海の未来につながる確かな成果を生み出したのです。

こうした活動には、短くても数年、長ければ十年以上の時間がかかるケースも珍しくありません。それを実現できたのは、長年WWFの活動に関心を寄せ、ご支援を続けてくださった、サポーターの皆さまのおかげです。

© WWF-Indonesia

深刻化する地球環境の危機の中で

2024年は、こうした現場での活動成果がいくつも生まれた一方で、国際社会では環境保全の動きに、強い逆風が吹いた一年でもありました。

ネイチャー・ポジティブ(生物多様性の回復)と、カーボンニュートラル(気候変動の抑止:脱炭素)という、2つの大きな環境問題を解決するため、世界の国々の代表が集まって開催された国際会議、すなわち、生物多様性条約の第16回締約国会議(CBD-COP16)と、「パリ協定」の推進を目指す気候変動枠組み条約第29回締約国会(COP29)は、いずれも大きな成果に乏しい結果となりました。

WWFは、これらに先立って、「生きている地球レポート(LPR)2024」を発表し、世界の生物多様性の豊かさが、1970年以降、73%も失われたことを指摘。
地球環境に深刻な危機が迫っていることに、改めて警鐘を鳴らしましたが、残念ながら、世界の国々のリーダーたちは、その危機を回避するために必要な決断を、いまだ下せずにあります。

さらに、ウクライナや中東で続く戦争や、自国第一主義の台頭など、国際社会にとって深刻な課題が、今後も大きな影響をもたらすことが予想されます。

皆さまと共にネイチャー・ポジティブの未来を!

それでも、私たちは決して希望を無くしてはいません。
この1年を振り返るだけでも、環境の保全に向けたさまざまな動きが加速してきた、その実情を見てきたからです。

ネイチャー・ポジティブという言葉は、2年前とは比較にならないほど、広く使われるようになりました。また、政府の政策や、企業のサステナビリティの取り組みの中でも語られ、浸透するようになりました。

気候変動と生物多様性、さらには災害や貧困などの問題は、一つのつながった国際的な課題として、より強く認識されるようになり、その解決に向けた取り組みも、単なる社会貢献の域にとどまらず、政治やビジネスの主要なテーマになりつつあります。

そして、国連会議の場には、議決権を持つ主役である、各国の政府代表たちだけでなく、世界中から集まった、自治体や企業、市民団体の関係者など、「非国家アクター」と呼ばれる人々が、共に声を上げ、連携し、行動し始めています。

私たちWWFもその一員として、地球の未来を左右する次の大事な5年間に向け、ネイチャー・ポジティブとカーボンニュートラルの実現を目指していきます。

世界情勢がどう変わるとも、また難しく解決に時間がかかるとしても、世界の仲間たちと共に、立ち止まることなく活動を続けて行きたいと思います。

ぜひ、ご注目ください。
そして、私たち一緒に、この2025年を、世界の人と自然にとって、よりよい一年にできるよう、共に歩んでください。

Together possible 力を合わせれば、必ず実現できます。

本年も私たちの活動にご理解とご支援を、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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事務局長
東梅 貞義

国際基督教大学教養学部理学科卒業(生物専攻)。英国エジンバラ大学修士号(Master of Science)取得(自然資源管理専攻)
1992年WWFジャパンに入局以降、日本全国各地の重要湿地の保全活動に携わる。
2019年からはシニアダイレクターとして、WWFジャパンが手掛ける地球環境保全活動全般を統括。
2020年7月 WWFジャパン事務局長就任
座右の銘は、Together possible 「一緒なら達成できる」

自然保護に取り組み30年近く。これまでのフィールドは、日本では南は石垣島のサンゴ礁から、北海道の風蓮湖まで、世界ではペンギンの生きる南米の海から、渡り鳥の楽園の黄海、そしてミャンマー・タイの東南アジア最大級の手つかずの森まで。野生生物と人の暮らしが交差する現場で、現地の人々や研究者、グローバル企業、国際機関の方々とご一緒に、自然保護と持続可能な未来を目指して日々取り組んでいます。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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