マヌルネコとナキウサギ【動画あり】
2024/04/23
4月23日は、国際マヌルネコの日です。
英語でThe original grumpy cats(元祖・不機嫌ネコ)と呼ばれることもあるユニークな顔貌、モフモフな毛皮と丸みのある体形で人気の高い野生動物です。
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ラダックのハンレで出会ったナキウサギ。この個体は、放牧地でもある草原に巣穴を掘り暮らしていましたが、岩場の巣穴に棲む種もいます。冬眠はせず、蓄えた草や植物の根などを食べて厳しい冬を越します。
ナキウサギ映像
マヌルネコは、ユキヒョウ保全プロジェクトのフィールドである西ヒマラヤ・ラダックにも生息しています。ですが、今日はマヌルネコではなく、その重要な獲物であるナキウサギについてご紹介しようと思います。
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ラダックでも見られるクチグロナキウサギ(Ochotona curzoniae)。ナキウサギは、齧歯目と勘違いされることがありますが、耳の長いウサギと同じウサギ目の動物です。日本では、北海道にエゾナキウサギ(Ochotona hyperborea yesoensis)が生息しています。
ナキウサギは、アジア、北米及び東ヨーロッパの寒冷な気候の土地に分布し、現在世界で30種が知られています。ラダックにもヌブラナキウサギ(Ochotona nubrica)ラダックナキウサギ(Ochotona ladacensis)、ロイルナキウサギ(Ochotona roylei)、オオミミナキウサギ(Ochotona macrotis)、クチグロナキウサギの5種が生息していると言われています。
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巣穴の前でナキウサギの姿が現われるのをじっと待つWWFスタッフ
ラダック南東部の湖ソカーの周辺は、そこら中ナキウサギの巣穴だらけ。巣穴には入口が複数あり、どこから出て来るかわかりません。カメラを構えて、じっと待つのですが、たいてい見当をつけた穴とは別のところから顔を出すため、なかなか撮影できません。
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獲物に忍び寄るマヌルネコ(Otocolobus manul)
マヌルネコが生きていくためには、獲物となるナキウサギ、小型齧歯類や鳥類が充分にいなくてはなりません。
小動物や小鳥を支えているのは昆虫や植物です。
どの生きものが欠けても生態系を維持することはできません。しかし、人間が開発や気候変動の原因を生み出し、この西ヒマラヤでも、生きものの絶妙なバランスを崩しています。
マヌルネコが本当に不機嫌になってしまわぬよう、人間はもっと謙虚にならねばと思います(野生生物グループ 若尾)。