© Staffan Widstrand / Wild Wonders of China / WWF

4月23日「マヌルネコの日」に


標高4,000m、西ヒマラヤはハンレの集落近く。インダス川上流域の、なだらかな稜線の山々に囲まれた大草原と湿原の上。

ユキヒョウ保全プロジェクトの現場を訪れた道中、双眼鏡でアカアシシギの姿を追いかけていた私たちは、現地の方の言葉に飛び上がりました。

「ああいう岩場にマヌルネコがいるんだ」

指し示された先に見えたのは、ごつごつした岩の塊。それが、小さな半島のように平原の端に突き出ています。

おそらく岩質が異なるのでしょう、浸食された石灰岩の地形の中で、明らかに雰囲気の違う場所。そして、動物が隠れるには何とも都合の良さそうな地形です。

マヌルネコは、主に中央アジアの草原地帯に分布する野生動物で、大きさはイエネコと同じくらい。長い毛足とずんぐりした体形を持つ、独特な風貌で知られています。

絶滅危機種ではありませんが、ヒマラヤでは数が少なく情報も乏しいため、ここで名を聞くことになるとは、思いもよりませんでした。

しばらくの間、目を皿のようにして岩場を双眼鏡で見まわすも、姿を見ることはかなわず…

それでも、野生のマヌルネコが実際に生きる自然を、わずかながらも垣間見られたことは、忘れられない思い出になりました。

今日、4月23日は「マヌルネコの日」。マヌルネコのことを広く伝え、その保護を訴えるため、イギリスの保護団体が制定した記念日だそうです。

私たちが今、西ヒマラヤで支援している、ユキヒョウの生息環境を守る取り組みも、マヌルネコをはじめ、多くの野生生物を守ることにつながるもの。

この地のマヌルネコが姿を消すことなく、いつか出会うことができる日を迎えられるように、これからも取り組みを続けていきたいと思います。

マヌルネコ(Otocolobus manul)
© Staffan Widstrand / Wild Wonders of China / WWF

マヌルネコ(Otocolobus manul)。この写真は、中国の青海省で撮影されたもの。ネコ科の中では珍しく、属1種に分類されています。標高5,000mの高山帯を含む、岩場や草地、灌木林、半砂漠のような厳しい環境に生息し、ナキウサギやジリスなどの小動物を主食としています。絶滅のおそれは今のところありませんが、生息域の分断や、獲物となる小動物の減少による影響が懸念されています。

【寄付のお願い】ユキヒョウの未来のために|野生動物アドプト制度 ユキヒョウ・スポンサーズ

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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環境保全団体です。

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