© 杉村光俊

トンボと歩んだ40年~四万十市トンボ自然公園


先月、高知県四万十市にあるトンボ自然公園(トンボ王国)を訪問しました。素晴らしい湿地環境のもと、多種多様なトンボの姿を見ることができました。

ご案内くださったのは、(公社)トンボと自然を考える会・常務理事の杉村光俊さん。園内の湿地再生作業にも参加させて頂き、貴重なノウハウを実地でご指導頂きました。

アジアイトトンボ。冒頭の画像はヒメアカネ。
© 杉村光俊

アジアイトトンボ。冒頭の画像はヒメアカネ。

トンボ自然公園は、来年設立40周年を迎えます。
活動の立ち上げ当時は、自然環境を「再生するために人手を加える」という考えは目新しく、広く理解を得るため様々なご苦労もあったようです。
公園内で生息確認されているトンボは、毎年60種以上。

アキアカネ。初期に創られ約40年維持されてきた池は、重要な繁殖地になっていました。
© 杉村光俊

アキアカネ。初期に創られ約40年維持されてきた池は、重要な繁殖地になっていました。

1985年、WWFジャパンは、杉村さん達の活動を支援するため、トラスト運動に参加。公園内にあるその場所は今も大切にまもられていました。

四万十市トンボ自然公園内にある「WWF池」の現在。
© WWFジャパン

四万十市トンボ自然公園内にある「WWF池」の現在。

トンボ自然公園では現地の普及にも力を入れていて、四万十川流域の小学校内ビオトープ作りにも積極的に関わってきました。
私も飛び入り参加させて頂いた、四万十町立東又小学校で行われた出前授業では、トンボを「生きた教材」として、子どもたちが生き生きと熱心に学ぶ姿が印象的でした。

ミヤマアカネ。四万十町立東又小学校内のビオトープで。
© 杉村光俊

ミヤマアカネ。四万十町立東又小学校内のビオトープで。

また、この数十年の間に、四万十川流域のトンボ相には、気候危機の影響が如実に表れているとのことでした。

四万十川が注ぎ込む海に面した砂浜にはスナアカネが飛び交う姿が見られた。もともとはアジアからアフリカにかけての乾燥地帯を中心に分布し、1977年の初記録以降、大陸からと考えられる飛来と一時的な発生を繰り返している。
© 杉村光俊

四万十川が注ぎ込む海に面した砂浜にはスナアカネが飛び交う姿が見られた。もともとはアジアからアフリカにかけての乾燥地帯を中心に分布し、1977年の初記録以降、大陸からと考えられる飛来と一時的な発生を繰り返している。

四万十市の水田周辺で見られたベニトンボ。もともとは台湾・南西諸島等の熱帯・亜熱帯域に生息する南方種。最近は四万十市でも普通に見られるようになった。
© WWFジャパン

四万十市の水田周辺で見られたベニトンボ。もともとは台湾・南西諸島等の熱帯・亜熱帯域に生息する南方種。最近は四万十市でも普通に見られるようになった。

こうした気候危機の影響や水質など、トンボが教えてくれる環境問題について、鮮明なトンボの写真満載で詳細にレポートした書籍も今年発刊されました。

『四国・中国・近畿のトンボでわかる快適環境』杉村光俊・吉田一夫・山本哲夫・大濱祥治編著、二橋亮監修。四万十市トンボ自然公園で販売中。

『四国・中国・近畿のトンボでわかる快適環境』杉村光俊・吉田一夫・山本哲夫・大濱祥治編著、二橋亮監修。四万十市トンボ自然公園で販売中。

都会ではだいぶ数少なくなってしまったトンボ。
一方で、トンボの楽園と原風景をまもり続ける取り組みが、高知で着実に根づいていました。

今回学んだことは、南西諸島を含む今後の湿地再生の取り組みに活かしていきたいと考えています。

四万十市トンボ自然公園のウェブサイト

(野生生物グループ 小田倫子)

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自然保護室(野生生物)
小田 倫子

弁護士として10年間稼働後、家族の転勤に伴い沖縄県名護市に居住したことを契機に、自然保護の仕事を志し大学で保全生態学を専攻、2013年WWF入局。法人パートナーシップ担当として生物多様性保全・気候危機対策に関する企業との協働プロジェクトの提案・実施業務を担当後、野生生物グループに異動、今は国内希少種を保全するフィールドプロジェクトを担当。
学士(法学・農学 東京大学)
法学修士(カリフォルニア大学バークレー校)

国内希少種の宝庫である南西諸島で主に活動しています。フィールドで生き物に出会い、その美しさ・不思議さを仲間と分かち合える瞬間が至福の時。趣味は里山散策と水生生物の観察。

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環境保全団体です。

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