山と海をつなぐ水の恵みを絵にする~石垣島
2022/06/20
「森は海の恋人」という言葉をお聞きになったことがある方もいらっしゃると思います。宮城県気仙沼で長年にわたり豊かな海を守るために山に木を植える活動をされてきた畠山重篤さんやその仲間の皆さんの活動から生まれた言葉です。
山と海・沿岸は水系を通じてつながっている。これは東北だけではなく、南西諸島の島々でも同じです。けれども、山は山、海は海という考えが一部では根強くあり、実際の事業計画などでは、陸域での開発や人間活動の影響が水環境や海に与える影響について十分に顧みられない場面を多く目にしてきました。
沖縄県・石垣島の日本最南端のラムサール条約湿地・名蔵アンパルの上流域で進められている大規模ゴルフリゾート開発計画においても、山地での開発が水環境に及ぼす影響について、事業計画ではあまりに軽視されているという懸念を持っています。
この点をどうやったら分かりやすく伝えることができるか。畠山さんと絵本「山に木を植えました」を制作された絵本作家スギヤマ カナヨさんに相談したところ、先日、石垣島の現場を訪れてくれました。
スギヤマ カナヨさんが石垣島を訪問された際、名蔵アンパルの自然を守る活動を長年続けてこられた皆さんと対談も行われました。
そして、スギヤマさんには、この目に見えないけれど、確実につながっている、島の水の恵みのつながりを絵にするプロジェクトにご協力頂けることになりました。
この絵が石垣島での保全活動の力になることは間違いなく、今後関連する記事などで紹介できればと考えています。
(野生生物グループ 小田倫子)
追伸 石垣島から戻り後に気仙沼の植樹祭にいらっしゃったスギヤマさんから、次のようなメッセージを頂きました。
「毎年6月に気仙沼の『森は海の恋人植樹祭』に参加しています。
木々豊かな山々がしっかりと保水した雨水は、湧水となり川となります。川は地表の流れと地下の水脈となり、山からの養分と鉄分を運びながら気仙沼の舞根湾へ注がれます。
30年以上続くこの取り組みがどれほど海を豊かにしていることか。
これはあらゆる命を繋ぐ、気仙沼のみならず自然の仕組みです。
とりわけ石垣島は太古からの自然が手付かずのままで、それこそが宝島!自然の力であるエコシステムはあらゆる問題を解決してく鍵を内包しています。
山に足を踏み入れればぐっと酸素が濃くなり、山から溢れ出る水のせせらぎが、アカショウビンをはじめ鳥の声と共鳴しています。
名蔵アンパルの干潟を歩けば、マングローブの根元でシオマネキやチゴガニらがわらわらと出迎えてくれます。
彼らはそこで生きながら干潟を浄化し肥沃なものにしているのです。
そして砂地からは山からの湧き水がこんこんとまるで生き物のように湧き出しています。
忘れてはならないのは、この命をつなぐ自然の仕組みの中に私たちの命も含まれているということ。
これらのものがこれからも変わらず存在していくことは、石垣島のみでなく、日本の、ひいては世界のために必要不可欠で、もしそのことに気づき理解できなければ、未来を生きる子どもたちに多大なる代償を背負わせることになると思うのです。」