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モーリシャスの油流出事故から一年が経ちました


2020年8月6日にインド洋のモーリシャスで起きた油流出事故から、一年が経ちました。

撤去作業の遅れにより、今も座礁地点に残っている船体が潮の満ち引きでサンゴ礁のリーフを削り取っていると考えられます。

座礁船の撤去作業は現在も完了していません
©Eco Sud

座礁船の撤去作業は現在も完了していません

こうした船体による濁りや、事故後に流出・拡散・堆積した油が、時を経て、サンゴ礁や周辺環境、野生生物に及ぼす影響を中長期に確認していくことが重要です。

WWFジャパンは、地元の自然保護団体Eco Sudとパートナーシップを組み、2021年春から3年間の環境モニタリング調査を開始しています。

調査対象は、サンゴ礁や海草藻場、マングローブのほか、モーリシャス政府主導の環境モニタリング調査で対象とされていない、海鳥やウミガメなども含みます。

モーリシャスの沿岸域で確認されているタイマイ
©Eco Sud

モーリシャスの沿岸域で確認されているタイマイ

事故現場海域だけでなく、モーリシャス全島の沿岸域 10 カ所で環境の変化を記録してゆきます。
現在はコロナ禍で制限がある中ですが、すでに第 1 回目の調査を8 カ所で実施しました。

時間が経過するにつれ、油流出事故の直接的な影響を判断することが難しくなってきます。
例えば、島内で利用されている農薬なども自然環境や野生生物に影響を及ぼす可能性があるからです。

ラムサール登録地ブルーベイ海洋保護区近くのテーブルサンゴ
©WWF Japan

ラムサール登録地ブルーベイ海洋保護区近くのテーブルサンゴ

今後はそうした人為由来の汚染物質の残留状況も含め、地域コミュニティに調査結果を報告するワークショップも開催していく予定です。

一年前、手製のオイルフェンスを作り、油の回収に懸命に取り組むモーリシャスの島民の姿が目に焼き付いている方も多くいらっしゃるかと思います。

環境モニタリング調査やワークショップを通じて、暮らしを支えてくれるかけがえのない身近な自然環境の現状を知り、それを守り、維持していく地域の取り組みに発展していくことを願っています。

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自然保護室長(淡水・リーダー開発・PSP)
安村 茂樹

修士(生物化学・早稲田大学)
サンゴ礁センター駐在時に地域住民主体の環境調査を立ち上げ(現在も石垣島、久米島で継続中)。南西諸島域にて、多分野の研究者と協働した野生生物有害化学物質汚染調査、生物多様性評価調査を指揮。GIS手法を用いた保全重要域図は生物多様性条約で示されたEBSAに、野外調査ではオキナワトゲネズミ再発見や久米島沖のサンゴ大群集発見に寄与。UNEP/GEF黄海プロジェクトと連携した日中韓湿地保全活動をリードし、2020年より緊急支援や淡水・教育活動に関わる部門を統括。

沖縄のサンゴ礁と森、中国・韓国の干潟の保全に従事。国際会議でサイドイベント主催やロビー活動をする機会をいただきました。国際、環境、NGO-この3ワードが合わさるWWFで、何をすべきか考え、その仕事の醍醐味を実感し、行動する。そんな機会を一人でも多くのスタッフに提供したいです。晴れの日に気が向いたら、自転車で通勤し、休みは、川でカヌー漕いでいます。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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