© Michèle Dépraz / WWF

感染症と野生生物 新型コロナウイルスの問題によせて


連日大きく報道されている、新型コロナウイルス感染症。
日本でも感染と被害の拡大が懸念されています。

この新型コロナウイルス感染症、実は私たちWWFが取り組む野生生物の保全活動にも、深いかかわりがあります。

この病気が、野生動物からヒトに感染するようになった「人獣共通感染症」であるためです。

「野生動物」からヒトに感染する人獣共通感染症の例としては、SARSやエボラ出血熱をはじめ他にも知られています。人獣共通感染症は、全ての感染症のうち約半数を占めています。2000年代初頭のエボラ出血熱では数多くの野生のゴリラもこの病気の犠牲になりました。
© Martin Harvey / WWF

「野生動物」からヒトに感染する人獣共通感染症の例としては、SARSやエボラ出血熱をはじめ他にも知られています。人獣共通感染症は、全ての感染症のうち約半数を占めています。2000年代初頭のエボラ出血熱では数多くの野生のゴリラもこの病気の犠牲になりました。

報道によれば今回の新型コロナウイルス感染症は、中国の市場で売られていたコウモリが発生原因であったとの指摘があります。

そして、密輸を含むこうした違法な「生きた『野生動物』」の取引は、これらのさまざまな感染症を広げるおそれがあるのです。

今回は特に、アジアの野生動物の食肉の取引と食用が注目されていますが、日本でも盛んな『野生動物』の「ペット」利用もその危険は同じ構造です。

しかも、現在の日本の『野生生物』ペット取引の管理体制の課題は根深く、感染症の防除も難しいことが懸念されます。

ペットとして人気のフェレットやカワウソなどの肉食動物も感染症をもたらす危険性が指摘されています。
© Gerald S. Cubitt / WWF

ペットとして人気のフェレットやカワウソなどの肉食動物も感染症をもたらす危険性が指摘されています。

長年にわたり、野生生物の違法取引の撲滅と、厳しい取引管理を求める活動の中で、私たちも感染症のリスクについて早期から警鐘を鳴らしてきました。

今回の新型コロナウイルスの件でも、日本を含むアジア太平洋地域のWWFはいち早く、違法な野生生物取引にかかわる市場閉鎖を求める声明を発表。

違法な、また管理不十分な取引が野生動物を絶滅危機に追いやり、同時に人や社会にも甚大な影響を及ぼすこと、そして解決には各国の協力と法制度の強化が欠かせないことを訴えました。

日本でも今後、より踏み込んだ規制や取り組みが、国際社会から求められるでしょう。

ヒトだけでなく、自然や野生生物の健康も一つの視野で捉える「ワンヘルス・アプローチ」を基本に、緊急の対策と予防を、私たちも求めてゆきたいと思います。

キクガシラコウモリ類は、さまざまな感染症の自然宿主になることが知られています。こうした感染症への対策の考え方として、現在、One Health(ワンヘルス)という考え方が国際的な主流になりつつあります。これは、人、動物、環境の衛生に関わる者が連携して取り組むものです。
© Wild Wonders of Europe / Dietmar Nill / WWF

キクガシラコウモリ類は、さまざまな感染症の自然宿主になることが知られています。こうした感染症への対策の考え方として、現在、One Health(ワンヘルス)という考え方が国際的な主流になりつつあります。これは、人、動物、環境の衛生に関わる者が連携して取り組むものです。

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事務局長
東梅 貞義

国際基督教大学教養学部理学科卒業(生物専攻)。英国エジンバラ大学修士号(Master of Science)取得(自然資源管理専攻)
1992年WWFジャパンに入局以降、日本全国各地の重要湿地の保全活動に携わる。
2019年からはシニアダイレクターとして、WWFジャパンが手掛ける地球環境保全活動全般を統括。
2020年7月 WWFジャパン事務局長就任
座右の銘は、Together possible 「一緒なら達成できる」

自然保護に取り組み30年近く。これまでのフィールドは、日本では南は石垣島のサンゴ礁から、北海道の風蓮湖まで、世界ではペンギンの生きる南米の海から、渡り鳥の楽園の黄海、そしてミャンマー・タイの東南アジア最大級の手つかずの森まで。野生生物と人の暮らしが交差する現場で、現地の人々や研究者、グローバル企業、国際機関の方々とご一緒に、自然保護と持続可能な未来を目指して日々取り組んでいます。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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