2020年WWFジャパンより新年のご挨拶
2020/01/01
明けましておめでとうございます。
WWFジャパン事務局より、いつも活動を支えてくださっている皆さまに、新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は「気候変動」という言葉が欧州を起点として「気候危機」に代わり、日本でも台風15号に続く19号の甚大な被害が発生しました。地球温暖化の進行がもはや将来への懸念ではなく、私たち自らが被害を受ける想定外のクライシスをもたらしつつあるのです。
急速に増え続ける世界人口を考えるとき、私たちは従来の「自然との付き合い方」を根本的に見直さなくてはならない時代に生きているのだと思います。宇宙は無限のように見えますが、地球上の生きものが暮らせる空間は地表から僅か10キロの大気圏という狭いスペースに過ぎません。この空間で蓄熱効果の高いCO2の濃度が上がれば、気温は上昇し、逃げ場のない熱は海水をも温めるのは当然です。
人間が居住地として暮らせる陸地面積は地表面積の1/6以下に過ぎず、世界人口の75億人で割れば一人あたりの面積は中学校の校庭ほどの広さに過ぎません。このスペースを健全に次世代に継承するには地球環境というスペースとその資源再生力を正しく理解し、維持管理するという考え方が必要になります。「New Deal For Nature and People(人と自然との新たな関わり方)」が必要なのです。
21世紀はインターネットや新たなインフラ開発で飛躍的に便利になりました。それでも澄んだ空気や水、太陽の熱エネルギーや森の保水機能、蜂や蝶などによる農作物の授粉など、人類が自然から得る生態系サービスの数々が損なわれては、人類最大の共有財産を失いかねないでしょう。
世界経済フォーラム、いわゆるダボス会議では世界の一握りの富豪が占める資産は世界の何パーセントという議論が話題になりますが、これは金融資産に限った話であり、豊かな自然から生まれる健康な生活、安全な社会における分業や相互信頼などの価値は含まれていません。私たちは生命の多様性と尊さを理解し、何を所有するかよりもどう生きるかを議論して行きたいと思います。
森や海、そしてそこに息づく素晴らしい野生生物を含めた地球という世界が共有する資産を守るために、WWFは、「地球益」を優先し、自然と人類が共生できる社会作りのための働きかけをして参ります。また世代間の不公平を無くすべく、問題の先送りは解決策として認めません。
2020年は、気候危機、持続可能な開発、そして生物多様性の保全について、重要な政治的決定がなされる年になります。
新年を機に更に皆さまの御意見を伺いながら進みたいと思います。
引き続き、ご理解とご支援のほど、宜しくお願い申し上げます。