メコンのトラとロシアのトラ
2019/05/24
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
この2月、タイの国立公園を訪れた際、とても貴重なものを目にしました。
野生のトラの足跡です。
大きさは9.5センチほど。
それが、森を通る細い小道の、固まった泥の上に一つだけ残されていました。
この足跡を目にしたのは、タイ西部、ミャンマーとの国境地帯にある、クイブリ国立公園。今年1月、9年ぶりに、インドシナトラの存在が確認された場所です。
足跡が一つだった理由は、森は湿度が高く、落ち葉なども多くて、足跡の残りやすい地面が、ほとんどないため。
こうした場所で、野生動物の痕跡を探して行なう調査は、本当に大変なものと言わねばなりません。
一方で、ふとロシアでのトラ調査の話を思い出しました。
ロシアでは、木の葉が落ち、雪上に足跡やフンが残る冬に調査を実施します。個体数もかなり正確に判る、精度の高い調査です。
雪の中での調査は、これはこれで大変きわまるものですが、そこで得られる調査の結果には、この熱帯の森の場合と大きな差があるな、と気づかされました。
野生動物は、生息状況やその密度、移動の範囲や経路が分かれば、優先的に打つべき保全の手立てが見えてきます。
ロシアやインド、ネパールなどでは実際、保護活動の成果もあり、野生のトラは近年わずかながら数の回復傾向が認められています。
しかし、現状の把握が難しいインドシナのような熱帯では、いずれも森の消失が進行。
これに伴い、インドシナトラも絶滅寸前の状況にあります。
数の増えている地域もあれば、減っている地域もある。また、起きている問題や生息環境によっても、保護のための手段も変わってきます。
何が、最も成功に近づける有効な手段なのか。常に考えながら取り組みを続けたいと思います。
地球から、森がなくなってしまう前に。
森のない世界では、野生動物も人も、暮らしていくことはできません。私たちと一緒に、できることを、今日からはじめてみませんか?