シリーズ:自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集 自治体連携で供給する再エネ電力が、東北地域の活性化に
2022/07/19
神奈川県横浜市「再エネ発電由来の電気の利用が東北の地域活性化につながる実証事業」
- WWFの「ここに注目」
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- 再エネ供給ポテンシャルが低い都市部ならではの施策
- 施策の軸は都市部への再エネ導入の推進と再エネ供給自治体の地域活性化の両輪
- 都市部への電力供給だけでなく、連携先自治体の地産地消も可能
- 小売電力事業者の決定には入札方式を採用し、安価な電力供給を目指す
施策概要
横浜市の電力需要は大きいが、再エネ供給ポテンシャルは低く、市内電力需要の1割以下と試算されている。市内で発電される再エネ電力だけでは需要をまかなうことができないため、市は再エネ資源を豊富に有する東北の13市町村と「再生可能エネルギーに関する連携協定」を締結。連携先自治体に立地する再エネ発電所で発電された電力を、横浜市内の事業者に供給するとともに、それぞれの地域の住民・企業が交流を深め、相互の地域活力の創出につながる取り組みを開始している。
「再エネ発電由来の電気の利用が東北の地域活性化につながる実証事業」は、連携協定の新たなスキームとして令和2年にスタートしたプロジェクト。連携先自治体に立地する再エネ発電所の電気を市内に供給するとともに、その電気料金の一部を地域活性化資金として発電所が立地する自治体に還元し、その活用方法を自治体と協議のうえ決定する。また、市内の事業者に電気を供給する小売電気事業者を入札方式によって決定することで、安価な電力供給を目指している。
連携先自治体の発電所からの電力の調達、入札方式で決定した小売電気事業者への電力の販売、連携先自治体への地域活性化資金の還元などの一連の業務は、横浜市と連携協定を結んだ「株式会社まち未来製作所」が行なっている。まち未来製作所が調達した電力は、連携先自治体の新電力会社に優先的に販売するなど、エネルギーの地産地消にも貢献が可能。
実証事業の第1弾では福島県会津若松市から約700万KWが横浜市内事業者に供給され、それにより会津若松市に対し年間100万円の地域活性化資金が生まれる見込み。
予算
広域自治体連携費として450万円(令和4年度)
削減効果
第1弾(令和2年度)と第2弾(令和3年度)の募集で、計24の横浜市内事業者が再エネ由来の電気に切り替え。これにより5,165t-CO2/年削減
その他効果
・連携自治体間の交流行事や地域活性化資金を活用した地域の活性化
・電気料金の一部が地域に還元され活性化につながることで、再生可能エネルギーの拡大と地元に恩恵をもたらす発電事業が増えていくことを期待している
施策を通して
<実施前の課題>
エネルギーの供給は自治体単独ではできず、民間事業者とどのように連携し、どのようなスキームをつくるかが課題となる。そこで、民間事業者から様々な行政課題の解決策にかかる提案を募集する横浜市の取り組み「テーマ型共創フロント」で、本連携協定を推進するアイデアを募集。まち未来製作所から出された提案について意見交換を行ない、最終的に連携協定を結んだ。同社はエネルギー事業及び地方創生のコンサルタントをしており、地域が抱える課題に詳しく、同社から、地域活性化資金という連携先自治体にメリットを創出するスキームの提案があった。
<実施における課題や改善点>
この事業は、発電事業者、小売電気事業者、電力供給を受ける事業者がいないと成り立たない。各連携先自治体の協力を得ながら、それぞれの確保・拡大をどのようにしていくかが、現在進行形の課題となっている。
<施策のメリットとデメリット>
メリット:
・都市部にとっては再エネ電力の導入を推進できる
・発電所が立地している自治体にとっては、発電所を地方創生、地域活性化につなげられる
デメリット: なし
こんな自治体にオススメです
再エネ供給のポテンシャルが少ない都市部の自治体と、再エネ資源を豊富に有し、それを活用したい自治体
今後の方針
現在、実証事業を実施して、課題も少しずつ見えてきているので、それぞれの課題に対応し、よりよい形に変えながら今後も進めていく。また、当該スキームを活用した再エネの追加性についてもチャレンジをしていきたい。
再生可能エネルギーに関する連携協定
東北の再エネ発電由来電気の市内供給に関する実証事業
テーマ型共創フロント
第1回実証事業の結果についての記者発表資料
第2回実証事業の結果についての記者発表資料
自治体担当者からのコメント
横浜市温暖化対策統括本部プロジェクト推進課
小室 達郎さん
再エネ導入を促進するうえでは、事業者の方に複数の選択肢を用意することが大切です。本実証事業にご参加いただいた事業者の方は、地域活性につながることが切り替えの動機の一つになっていると考えます。今後、再エネの大量導入につなげていくためにも、発電所が立地する自治体と横浜市の双方にメリットがある「よい再エネ」を増やすなど、大都市ならではの貢献を考えていきたいと思っています。