シリーズ:自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集 大地と風を耕す風力発電の先進地(山形県庄内町)
2022/03/16
山形県庄内町「庄内町農山漁村再生可能エネルギー基本計画」
- WWFの「ここに注目」
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- 地域の再エネ資源を、地域の事業者が開発し、利益を地域に還元する施策 原則として転用不可能な第1種農地に再エネを導入することが可能
- 食料生産と再エネ開発の両立を図ることができる
- 農林地で生み出される再エネの事業収入が地域の農林業に活用できる
施策概要
強風をまちづくりに生かすため、1980年から風力発電に挑み、水田地帯に風車を建設して、農業と再エネの両立を推進してきた。さらなる導入を図るため、農林水産業と調和した再生可能エネルギーの開発により農山漁村の持続可能な発展をめざす「農山漁村再生可能エネルギー法」に基づいて基本計画を策定。地域事業者3社による22.5MWの風力発電所が、2021年に竣工した。風力発電は町の電力使用量の約60%をまかなっている。
予算
0円
法律で設置が規定されている「農山漁村再エネ法に関する協議会」は既設の「新エネルギー推進委員会」が兼ねたため、追加費用の発生はなし
削減効果
31,320t-CO2年
その他効果
風力発電事業者3社のうち2社は庄内町、1社は隣接する酒田市の企業である。総事業費約100億円は主に県内の金融機関が融資し、土木や電気工事などは町内の企業が担っている。さらに、農林業を活性化するため、3事業者は風車1基あたり年間100万円を町に寄付。風力発電事業が地域経済の活性化に貢献している。
施策を通して
<実施前の課題>
風力発電に取り組んだ当時は、農地転用の規制が厳しくなかったため、水田地帯に風車を建設することができた。しかしその後、農地転用が困難になったため、町内の事業者が風力発電事業を計画しても実現が阻まれていた。2014年に農山漁村再生可能エネルギー法が施行され、一定の条件を満たせば、原則として転用できない第一種農地にも再エネの導入が可能になった。そこで、町は同法に基づいた協議会を設置。協議会が中心となって風力発電を促進する区域を設定するゾーニングを行ない、事業者を選定。地域の3事業者による開発に至った。
<実施における課題や改善点>
風力発電所は町内に建設されるが、発電した電力は町外の変電所まで送電しなければならない。そのため、道路を管理する山形県や隣接自治体、隣接自治体の住民など、多岐にわたる調整が必要であった。当初、こうした調整は事業者が行っていたが、町職員も担うようになった。くわえて、事業の恩恵を受けないなかで送電線が通過することになる隣接自治体の住民の理解を得るためも、説明会を重ねている。また、事業者は送電線を地下埋設して地中送電する計画を立てていたが、県道を管理する山形県の許可が得られなかったため、架空送電に変更している。
<施策のメリットとデメリット>
メリット:風力発電所が建設された丘陵部は人工林に覆われている。建設工事にともなって林道が拡幅され、森林施業や木材運搬などが容易になったことから、人工林の森林整備の推進が期待されている。また、事業者3社は風車1基あたり年間100万円を町の農林業の活性化のために寄付。固定資産税などを含めると、事業期間の20年間に町に入る収入は約10億円と推定されている。庄内町では、この収入を農林業の活性化のために活用していく。このように、地域の風が生み出す再エネの売電収入が農林業に還元されることによって環境と経済の好循環が期待できる。
デメリット:現時点ではなし
こんな自治体にオススメです
農林地を活用して再生可能エネルギーの導入を検討している自治体におすすめです。耕作放棄地などを、風力発電だけでなく、太陽光発電などに活用することによって、農業者が農外収入を得ることができ、農林漁業と再生可能エネルギーの両立を図ることができます。
今後の方針
2020年11月にゼロ・カーボンシティ宣言を行ない、2021年3月に地球温暖化防止実行計画を策定した。この計画に基づいて、脱炭素に向けた取り組みを推進していく。
「庄内町農山漁村再生可能エネルギー基本計画」
「庄内町ゼロ・カーボンシティ宣言」
「庄内町地球温暖化対策実行計画」
自治体担当者からのコメント
山形県庄内町 環境防災課新エネルギー係
本田勝彦さん
庄内町は、40年前に風力発電に取り組み始めた当初から、地域の再生可能エネルギー資源を、地域の力で開発し、その利益を地域に還元することによって環境と経済の好循環を構築することを基本に据えてきました。風力発電事業のほとんどは、地域外の大企業によって行われていますが、庄内町では風を活かしたまちづくりの蓄積から2社の風力発電事業者が誕生し、この事業に結実しました。これからもエネルギーの地産地消の取り組みを推進することによって、脱炭素社会の実現へとつなげていきたいと考えています。