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EC企業の責任を考える -野生生物のオンライン取引対策勉強会の開催-

この記事のポイント
2023年10月31日、楽天市場や楽天ラクマといったオンラインプラットフォームを運営する楽天グループ株式会社の社内勉強会に、WWFジャパンが講師として登壇しました。インターネットの普及によりオンラインでの取引が増加する中、野生生物のオンライン取引も増加しています。世界的にも野生生物のオンライン取引の課題が指摘される中、EC企業としての取り組みが求められています。今回の勉強会は、野生生物のオンライン取引における課題について社内の理解を深め、取り組むべき課題がどこにあるのか、取引の場を提供するプラットフォームとしての検討を促進する目的で行われました。
目次

なぜEC企業で勉強会?~プラットフォームの役割とは~

輸送技術や通信技術の発達により、野生生物の密猟や違法取引は組織化され、世界では、大規模な摘発事例が目立つようになりました。

アフリカゾウの牙(象牙)やサイの角(犀角)など、アジアでの需要が高い野生生物・製品の摘発事例も後を絶ちません。

取引ルートも日々刻々と変化しており、ITの普及やSNSによる情報の拡散もあいまって、取引が複雑化し、規制が追いついていません。

また、オンライン市場は匿名性が高く、顔の見えやすい実店舗などと比較しても取り締まりが困難なため、課題のある野生生物の取引はますます拡大している様子がうかがえます。

そのような中、オンラインでの取引を仲介するECサイトの役割が注目されています。

なぜなら、ECサイトは、数多く存在する消費者と事業者をつなぐ接点であり、消費者に対して生物多様性に配慮した健全な商品を提供するために事業者と協力することによって、販売される商品の調達や生産過程におけるトレーサビリティを担保することのできる存在だからです。

そこで、2023年10月31日、楽天グループ株式会社(以下、楽天)サステナビリティ部が開催した「野生生物のオンライン取引に関する社内勉強会」にWWFジャパンのスタッフが参加し、健全なプラットフォーム構築に向けて、企業がどのように野生生物のオンライン取引の課題に取り組む必要があるのかについて、解説しました。

野生生物のオンライン取引社内勉強会

【概要】
日時:2023年10月31日
場所:楽天グループ株式会社 本社
参加者:楽天市場や楽天ラクマなどの関係各部署の方々
主催:楽天グループ株式会社 サステナビリティ部

勉強会には、サステナビリティ関連の部署を中心に、運営サイトである楽天市場や楽天ラクマを担当する方々などの参加がありました。

WWFジャパンでは、野生生物のオンライン取引対策について、関連する行政機関や企業での取り組み促進に向けた活動を行なっていることから、その課題や今後考えられる対策・施策について情報提供する機会となりました。

勉強会は二部構成とし、第一部では野生生物のオンライン取引の課題について講義いたしました。

第二部では参加者が実際に、楽天市場・楽天ラクマでの野生生物の販売状況をモニタリングして、課題を共有するワークショップを実施しました。

第一部の講義では、野生生物の国際的な取引は過去14年間で5倍以上に増加していること、その中には違法な取引も存在することや、絶滅危機種の取引が確認されていることなど、野生生物をとりまく現状について紹介しました。

その他、具体的な事例を用いながら、オンライン取引特有の課題についても解説しました。

例えば、地域や野生生物種ごとに規制内容が違っている場合、出品の説明が不充分であったり、画像が不鮮明であったりすると、規制対象かどうかの判断が困難になるなどの課題があります。

そうしたことから、実際に過去にネットオークションやフリマアプリでの違法取引が摘発された事例や、具体的な出品を参照しながら「出品のどのような点に着目するべきなのか」といったことを解説しました。

さらに、法的な取引制限がないものの、野生生物の生息や自然環境に影響を与える可能性のある取引の実態について、実際の販売の事例を用いて紹介し、今後どのようなことに取り組むことが必要か、考える機会としました。

勉強会の様子。具体的な出品事例の紹介は、業務にかかわる部分とあって非常に関心が高く、熱心に耳を傾けていました。クイズ形式を用いた参加型のセッションでは、活発な意見交換の中にも、真剣な眼差しが見て取れました。
© WWFジャパン

勉強会の様子。具体的な出品事例の紹介は、業務にかかわる部分とあって非常に関心が高く、熱心に耳を傾けていました。クイズ形式を用いた参加型のセッションでは、活発な意見交換の中にも、真剣な眼差しが見て取れました。

第二部のワークショップでは、実際に自社のECサイト上の出品について検索するワークショップを実施しました。

参加者は4,5人のグループに分かれ、キーワード検索を活用して、ECサイト内での出品状況を確認し、最後に報告し合い、モニタリングする上での気づきや課題、今後取り組めると良い事などについて共有しました。

楽天が運営する取引プラットフォームでは、健全な売り場づくりのため、出店・出品者に向けた各種規約・ガイドラインを設けて、それらモニタリングや、不適切商品をユーザー側からも指摘できる通報機能を設置するなどの措置が講じられています。

象牙の国際取引は原則禁止されているが、日本の法律では、一部の場合を除いて、象牙を国内取引することができる。しかし、日本の象牙市場が国際的な違法取引を助長していることが指摘されている。2011年から2016年にかけて、日本から中国に合計約2.4トンもの象牙が密輸出された実態も報告されている。楽天ではこの課題に関し、自社のプラットフォーム上で象牙の取引を禁止する自主ルールを設けている。
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象牙の国際取引は原則禁止されているが、日本の法律では、一部の場合を除いて、象牙を国内取引することができる。しかし、日本の象牙市場が国際的な違法取引を助長していることが指摘されている。2011年から2016年にかけて、日本から中国に合計約2.4トンもの象牙が密輸出された実態も報告されている。楽天ではこの課題に関し、自社のプラットフォーム上で象牙の取引を禁止する自主ルールを設けている。

ウミガメの国際取引は原則禁止されているが、日本の法律では、ウミガメを使用した製品の国内取引が認められている。しかし、国内で流通しているウミガメに密輸由来のものが混ざっている可能性が指摘されている。2000年から2019年に合計約564kgのタイマイ(べっ甲の原材料)が日本への密輸入として押収されており、国内に継続的に密輸されたタイマイが流入していると考えられる。楽天では、この課題に関し、自社のプラットフォーム上でウミガメを使用した製品の取引を禁止する自主ルールを設けている。
© Antonio Busiello WWF-US

ウミガメの国際取引は原則禁止されているが、日本の法律では、ウミガメを使用した製品の国内取引が認められている。しかし、国内で流通しているウミガメに密輸由来のものが混ざっている可能性が指摘されている。2000年から2019年に合計約564kgのタイマイ(べっ甲の原材料)が日本への密輸入として押収されており、国内に継続的に密輸されたタイマイが流入していると考えられる。楽天では、この課題に関し、自社のプラットフォーム上でウミガメを使用した製品の取引を禁止する自主ルールを設けている。

今回勉強会を実施したことで、参加者からは「現在の取り組み以上に、ECサイトとして検討すべきことがある」といった声が多く寄せられ、今後更なる取り組みを検討していく第一歩となりました。

オンラインでの野生生物取引の課題は一朝一夕で解決する問題ではありませんが、課題解決に向けては、引き続き楽天をはじめEC企業への情報提供を続けながら、業界全体としてもオンラインにおける野生生物の取引問題に取り組めるよう、対話を続けていきます。

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