国連水会議に向けて 世界の水の危機について報告
2023/03/20
- この記事のポイント
- 2023年3月22~24日にニューヨークで国連水会議が開催されます。46年ぶりの開催となる、この国連の水会議を前に、WWFは3月15日、GlobeScanおよびCircle of Blueと共に、水環境の危機についてまとめた報告を発表。その中で、水資源の不足への懸念が過去数年間に増加していること、また世界の人々の実に58%が、この問題に深刻な懸念を抱いている実情を紹介しました。
国連水会議の開催に向けて
環境や経済、社会、ビジネス、そして生活に、さまざまな影響を及ぼす水資源の不足。
国連は2023年3月22日から24日にかけて、世界的にも深刻化しているこの水問題を解決するため、46年ぶりとなる水会議を開催します。
これに先立つ3月15日、WWFはウェビナーを開催し、GlobeScan、Circle of Blueと共に行なった、水環境の危機に関する研究結果を発表しました。
この研究は、世界の約30,000人を対象に行った意識調査に基づくもので、世界中の人々がどれくらい、どのように水と気候に関連した影響を、ストレスとして感じているかを、明らかにしたものです。
高まる世界の水不足への不安
この研究結果の発表では、回答した世界の人々の 58% が、淡水資源の不足が「非常に深刻」と認識している問題であると同時に、国や地域によっては、その認識が特に強い傾向があることも明らかにされました。
たとえば、ブラジルやコロンビア、メキシコなどでは、水へのアクセスに大きな懸念があるとする回答が多く見られました。
中国や韓国、日本などでは「非常に深刻」とする回答が20%前後と少ない傾向がありますが、「深刻」と併せると、日本でもその比率は70%になり、高い危機感を有していることがわかります。
また、コロンビア、イタリア、メキシコ、ペルー、トルコの回答者の大半からは、個人的にも淡水不足の影響を強く受けていると述べているほか、アルゼンチン、ドイツ、韓国、ベトナム、ペルーといった国々では、過去 1 年で水不足への懸念が最も大きくなったと回答しました。
全体でも、水不足の影響を「全く影響を受けていない」と回答したのは、わずか25%。世界全体としても生活やビジネスに欠かせない水の不足やアクセスに、深刻な不安が生じている現状が明らかになりました。
この他、気候変動についても、その被害を経験した人の37%が、「干ばつ」という水不足を伴う形で影響を被っていると回答しており、気候変動と水不足のかかわりについても示される結果となりました。
失われる淡水の生物多様性と水資源の保全に向けて
安定した健全な水資源の供給には、水源を涵養する森などの自然や、河川、湖沼、氾濫原などの淡水の生態系が欠かせません。
しかし今、こうした淡水をめぐる「流域」の自然と、そこに生きる野生生物は、地球上のあらゆる地域で、劣化と減少の一途をたどっており、生物多様性の豊かさも失われ続けています。
今回の研究で明らかにされた、世界の人々の水に対する危機感の広がりは、気候変動の深刻化と淡水の生物多様性の消失に一致するものといえるでしょう。
WWFはこの研究報告に際し、世界が協力してこの問題に取り組む必要があることをあらためて指摘すると共に、水資源と淡水の生物多様性の保全に向けた企業や政府の取り組み、そして国連水会議への強い期待を表明しました。
WWFインターナショナルでウォーター・スチュワードシップの推進を主管するアレクシス・モーガンは次のように述べています。
「淡水をとりまく自然が失われ、気候変動が深刻化するにつれ、水資源の不足は悪化し続け、世界中の社会や経済にも影響を与えています。しかし、さまざまなステークホルダーの協力による、湿地、河川などの自然な流れの再生、地下水の回復などを通じて、私たちは水の問題を解決する手段があることを証明してきました。今こそ、こうした解決策に緊急に投資を行なっていくべき時です」
これからの水資源の持続可能な利用と、淡水の生物多様性の保全に向け、国連水会議の場で、どのような交渉が行なわれ、合意が生み出されるのか。世界の大きな注目が集まっています。
【関連情報】上記の研究発表を行なったウェビナー
The Future of Water: Insights to Help You Stay Ahead of What’s Next(2023年3月15日開催)
▼発表資料、当日の動画はこちら
GlobeScanのウェブサイト(外部サイト:英文)