【動画あり】「森林破壊の最前線」最新報告書を発表
2021/01/28
世界の森林の今
「青い星」とも呼ばれる地球。
地球が青く見える理由はいくつかありますが、その一つは、地球表面の約70%が海に覆われているためです。残りの約30%が陸地で、森林はこの陸地のおよそ30%。
つまり海を含めた地球全体からすれば、森はたった10%ほどの広さしかありません。
この森林に、陸上生物種の半分以上が生息しています。
それらのほとんどが、森林が生み出す酸素を吸い、森の恵みで命をつなぎ、さらに人間はさまざまな用途に木々を利用します。
また、二酸化炭素の吸収源としても大きな役割を果たす森林は、すでに世界各地に被害を及ぼしている気候危機の影響を緩和するものとして、ますます重要視されています。
動画:Deforestation front 日本語キャプション付き
日本の1.2倍が消失 森林減少の要因と対応
それにも関わらず、今回発表された報告書『森林破壊の最前線』によれば、2004年から2017年までの間に、世界24カ所の「最前線」で4,300万ヘクタール以上の森林が失われたことが明らかにされました。
これは日本の1.2倍に相当する大きさです。
世界的に、森林の持つ価値や重要性が見直される動きがありながらも、それでもなお減少し続ける森林。
国連食糧農業機関(FAO)の報告書『森林資源評価報告書2020』によれば、1990年以降、世界では4億2000万ヘクタールもの森林が失われてきました*。これは日本の11倍にも相当する広さです。(*植林などによる増加面積を加味しない純粋な減少面積)
この背景には、場所や時代によって異なる、さまざまな要因があることが本報告書では指摘されていますが、それでも世界的に大きな要因になっているものとして、農業や植林地の開拓、火災、インフラ開発、鉱業などがあること確認されています。
森林減少を食い止めるために
一方で、これ以上の森林減少を防ぐための取り組みも、国際的な枠組みや国、地方行政、企業、先住民、地域住民、NGOなどの多様なステークホルダーにより、世界各地で行なわれてきました。
例えば、国立公園などの保護区の設立、望まれない開発を防ぐために先住民の所有する土地を明確化すること。
他にも、政策的に森林の開拓を一時的に停止する措置や国をまたぐ取引時に事業者に課す規制などがあげられます。
また、森を減らす大きな要因として本報告書でも言及されている、林産物や農畜産物を生産、購入する企業の間では、合法性の確認はもちろんのこと、そうした産品のトレーサビリティを確保し、持続可能性を確認しようとする動きが広まっています。
関連リンク:責任ある林産物の購入
さらに消費者の間でも、より環境や人権に配慮した製品を、意図的に選択しようとする傾向が拡大し、そうした中で森林認証制度FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)やパーム油の認証制度RSPOは、一定の役割を果たしてきたと考えられます。
関連リンク:森を守るマーク 森林認証制度FSCについて
関連リンク:RSPOについて
近年では、途上国が森林減少や劣化を防ぐことにより、温室効果ガスの排出量を減少させた場合などに、先進国からの経済的支援を受けられるメカニズム「REDD+(レッドプラス)」や、政府や企業、地域住民などがそれぞれの経済的利益、社会的発展や環境保全を、統合的に進展させる管轄アプローチなどの新しいイニシアティブも生まれています。
それでもこうした取り組みが、全ての森林減少を食い止めるには至っていないのが現状です。
世界の森林破壊と日本の関わり
幸い日本は、24ヶ所の世界の「森林破壊の最前線」には含まれていません。
しかし、だからといって日本に暮らす人々のビジネスや生活が、森林減少に無関係なわけでは決してありません。
それは、日本は木材、紙、パーム油、天然ゴム、バイオマス燃料、大豆、牛肉など多くの林産物、農畜産物を海外から輸入しているからです。
こうした産品の生産地では、森林が減少し、そこにあった自然の森林生態系が大きく損なわれているケースがあることが報告されています。
関連リンク:APP(エイピーピー)社、エイプリル(APRIL)社関連情報
関連リンク:パーム油 私たちの暮らしと熱帯林の破壊をつなぐもの
本報告書のまとめには、守られるべき森が失われている全ての現場に有効な万能薬は存在しないこと、それゆえに森林減少を食い止めるための対策は、政府や地方行政、民間企業、先住民、地域住民、NGOといった多様なステークホルダーによる取り組みを、その地域の事情に合わせて包括的かつ長期的な視野に立って行なわねばならないことが強調されています。
現在の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、かねてからその必要性が訴えられてきた自然の価値を再評価し、これまでの在り方を見直す、抜本的な変化を引き起こす契機となりました。
また、これからの復興を考えるにあたっては、持続可能な社会の構築を目指す「グリーン・リカバリー」をWWFも提唱しています。
これからの環境保全の取り組みのベースとなる考え方として、この「グリーン・リカバリー」の推進を、WWFは目指していきます。