©Brady Goorappa

モーリシャスでの船舶事故 懸念される生態系への影響


インド洋に浮かぶモーリシャス島の南東部で7月、日本の船が船舶事故を起こし、積んでいた重油が流出。

サンゴ礁やマングローブといった、沿岸域の自然としては、最も多様性が高く、豊かな環境を、広く汚染する問題が生じました。

事故前のモーリシャス島
ⓒNaokuni Kato

事故前のモーリシャス島

現地では、油の除去作業が進められており、日本からの緊急支援も行なわれていますが、マングローブのように木々が細い根を広く巡らせた場所は、人が入ることも難しく、またその根や幹にべったりと付着した油を除去するのは、困難を極めます。

また、船の燃料になる重油は水を含むと海底に沈み、サンゴなどの上にも沈殿してしまうため、サンゴだけでなく、魚や貝、エビなどの生きものたちも打撃を受けてしまいます。

報道されないものが多いですが、実は毎年世界中の海で、こうした油の流出を伴った大小の船舶事故が生じています。

ですが、被害の深刻さを左右するのは、流出した油の量だけではありません。
どのような場所で、油が流出したか、が、非常に重要なのです。

今回のように、サンゴ礁やマングローブのような、生物多様性が豊かな環境はもちろん、重要な漁場や、アザラシ、ラッコなどの海獣類、海鳥の集団繁殖地に近い海域などは、量がそれほど多くなくとも、甚大な被害を引き起こしてしまいます。
過去にも、1989年のアラスカでのエクソン・バルディーズ号の事故や、1999年に北海で起きたパラス号の事故など、海の生きものに深刻な影響を及ぼした船舶事故は、少なくありません。

いかに、こうした事故を繰り返さぬようにしていくか。
海の自然を守る上で欠かせないこの取り組みを、この事故を機に、日本でも今一度、見直し、実現していかねばならないと思います。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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環境保全団体です。

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