モーリシャスでの船舶事故 懸念される生態系への影響
2020/09/04
インド洋に浮かぶモーリシャス島の南東部で7月、日本の船が船舶事故を起こし、積んでいた重油が流出。
サンゴ礁やマングローブといった、沿岸域の自然としては、最も多様性が高く、豊かな環境を、広く汚染する問題が生じました。
現地では、油の除去作業が進められており、日本からの緊急支援も行なわれていますが、マングローブのように木々が細い根を広く巡らせた場所は、人が入ることも難しく、またその根や幹にべったりと付着した油を除去するのは、困難を極めます。
また、船の燃料になる重油は水を含むと海底に沈み、サンゴなどの上にも沈殿してしまうため、サンゴだけでなく、魚や貝、エビなどの生きものたちも打撃を受けてしまいます。
報道されないものが多いですが、実は毎年世界中の海で、こうした油の流出を伴った大小の船舶事故が生じています。
ですが、被害の深刻さを左右するのは、流出した油の量だけではありません。
どのような場所で、油が流出したか、が、非常に重要なのです。
今回のように、サンゴ礁やマングローブのような、生物多様性が豊かな環境はもちろん、重要な漁場や、アザラシ、ラッコなどの海獣類、海鳥の集団繁殖地に近い海域などは、量がそれほど多くなくとも、甚大な被害を引き起こしてしまいます。
過去にも、1989年のアラスカでのエクソン・バルディーズ号の事故や、1999年に北海で起きたパラス号の事故など、海の生きものに深刻な影響を及ぼした船舶事故は、少なくありません。
いかに、こうした事故を繰り返さぬようにしていくか。
海の自然を守る上で欠かせないこの取り組みを、この事故を機に、日本でも今一度、見直し、実現していかねばならないと思います。