©Mikaail Kavanagh_WWF

まだまだ知られていない?動物由来感染症とエキゾチックペット取引問題


今も連日のニュースが続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。

多くの報道機関が、この話題を取り上げていますが、最近は、感染者の増減や、医療関係の話題に加え、さまざまな社会的な影響についての情報も目立つようになってきました。

産業界はもちろん、途上国を中心とした地域での食糧生産や、市民の間で取り組まれている、子どもたちを含めた社会的な弱者への支援活動に至るまで、さらに影響は広がる勢いを見せています。

私たちが取り組む野生生物の取引の問題も、同じく感染症に関係する社会的な問題の一つ。

ですが日本ではまだ、そうした問題に対する認識や危機感が、十分に根付いていないようです。

先日、日本で「エキゾチックペット」として取引されている、トカゲやカメ、サルといった珍しい野生動物の違法取引状況についてまとめた報告書を発表したのですが、その折に開催した記者発表会でも、その印象を受けました。

2007~2018年に日本税関によって差し止められた動物の分類 <br>感染症を引きおこすおそれがあるため、法律で日本への持ち込みが規制されている動物も含まれていた(サルやコウモリ)

2007~2018年に日本税関によって差し止められた動物の分類 
感染症を引きおこすおそれがあるため、法律で日本への持ち込みが規制されている動物も含まれていた(サルやコウモリ)

2007~2018年に日本税関で差し止められた動物 <br>輸出国・地域(線の太さは数量に比例)タイが最も多く、次いで中国本土、インドネシア<br>

2007~2018年に日本税関で差し止められた動物 
輸出国・地域(線の太さは数量に比例)タイが最も多く、次いで中国本土、インドネシア

密猟され、違法に取り引きされる野生動物は、海外からその国へ持ち込まれる際に、検疫などを受ける機会もなく、感染症の病原体を一緒に持ち込んでしまうリスクがあります。

新型コロナウイルス感染症は、どの動物が感染源/媒介者であったかは定かになっていませんが、動物から人に伝播する「動物由来感染症」と考えられています。他にも数あるこのような病気が、気づかれないうちに、管理の不十分な野生動物の取引を通じて、広がってしまう可能性がある、ということです。

今回、お集まりくださったメディア関係の方々にとって、多くはまだ、こうした野生動物取引と感染症の繋がりについて、新しいこれからのニュース、なのかもしれません。

普段の生活、社会にも深くかかわる可能性のある、この野生生物取引の問題。

これまで以上に認識が広がるように、私たちもより多様な観点で考え、取り組んでいかねばと思います。

フルーツコウモリ。さまざまなウイルスを保有していると考えられているコウモリ類は、感染症の発生源となりやすい。
©Chris Martin Bahr / WWF

フルーツコウモリ。さまざまなウイルスを保有していると考えられているコウモリ類は、感染症の発生源となりやすい。

報告書『Crossing the Red Line:日本のエキゾチックペット取引』

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自然保護室(野生生物 グループ長)、TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

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