©大阪自然環境保全協会

コアジサシの舞う空


朝6時前くらいの時間。
最近、近くの雑木林から声が聞こえてきます。

カッコー、カッコー

言わずと知れたカッコウの声。しかも今朝は2羽も鳴いていた!

渡りの途中でしょうか、これから山地に移るのかもしれませんが、一年で今の時期しか聞けない夏鳥の声です。

夏の日本でヒナを育て、また秋に南の国へと旅立っていく、この夏鳥たち。

もちろん、海にもやってきます。
その代表が、コアジサシという水鳥。

アジサシ類はカモメ科の鳥ですが、いわゆるカモメよりも、姿はスマートで身体も小柄。鋭いくちばしを下に、空から水面にダイブして魚を獲る名手です。

コアジサシが日本の海辺や河口に姿を見せ始めるのは、5月の半ば頃から。

河原や海岸の地面の上に巣を作り、砂利や石によく似た模様のヒナを育てます。

が、こうした営巣可能な場所が開発などで失われてきた結果、数が減少。環境省の絶滅危惧Ⅱ類(EN)にも指定されています。

保護活動も各地で行なわれていますが、危機はまだ続いており、先日は大阪からも気になる情報をいただきました。

繁殖地のある大阪夢洲で大規模な開発計画が持ち上がり、保全活動に取り組む大阪自然環境保全協会の方々が、大阪市に対し繁殖期終了まで一時的な工事の延期を要望されているというのです。

コアジサシは近年は、埋め立て地や建物の屋上などでも果敢に営巣し、ヒナをかえす、高い適応力も見せていますが、貴重な繁殖地が失われるのは大きな打撃。

野鳥が安心して卵を産める場所とて、そうそう人の手で簡単に作れるものではありません。

コアジサシだけに限りませんが、夏の海の風物ともいえるこうした生きものたちの姿。しっかりと未来にのこしてゆかねばと思います。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

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