© Marcelo Flores / WWF-Chile

南米の海のライオン「オタリア」


南米の海に生息するアシカの仲間、オタリア。

チリ南部の豊かな海の生態系を象徴する種のひとつでもあります。

英語ではSouth American Sea Lion「南米の海のライオン」と呼ばれ、実際に遭遇すると、名は体を表すかのような風格を感じさせます。

オタリア(Otaria byronia)。オスは大きさが2.1~2.6メートルで体重が300~350kg、メスは大きさが1.5~2.0メートルで体重が170kg程にまで成長します。
© Cayetano Espinosa / WWF-Chile

オタリア(Otaria byronia)。オスは大きさが2.1~2.6メートルで体重が300~350kg、メスは大きさが1.5~2.0メートルで体重が170kg程にまで成長します。

そんなオタリアは、アンチョベータなどの小魚、イカやタコなどの軟体動物をはじめ、さまざまな生きものを食物としています。

そのため、こうした生きものが豊富にいるチリ南部の海は、オタリアにとっての楽園なのです。

オタリアの主食のひとつ、アンチョベータ(ペルーカタクチイワシ)。カタクチイワシ科の魚の一種で、サーモン養殖の餌の原料などとして使われるため、漁業も盛んに行なわれています。
© WWF / JURGEN FREUND

オタリアの主食のひとつ、アンチョベータ(ペルーカタクチイワシ)。カタクチイワシ科の魚の一種で、サーモン養殖の餌の原料などとして使われるため、漁業も盛んに行なわれています。

しかしオタリアは、人の海の利用による影響を最も受けている野生生物の一種でもあります。

特に、アンチョベータなどの小魚の漁業では、食物を求めてやってきたオタリアが漁網に誤ってかかってしまう「混獲」が多く発生しています。

アンチョベータなどの小魚を漁獲する漁船。オタリアのほか、ハイイロミズナギドリやマゼランペンギンなどの海鳥も多く混獲されています。
© Diario La Tribuna

アンチョベータなどの小魚を漁獲する漁船。オタリアのほか、ハイイロミズナギドリやマゼランペンギンなどの海鳥も多く混獲されています。

また、チリ南部の海に広がる、サーモン養殖場での被害も問題となっています。

オタリアが養殖場の網を破ってサーモンを食べてしまうため、害獣として駆除されるといったことが起きているのです。

チリのサーモン養殖場。日本で消費されるサーモンはその多くが輸入で、サケ・マス類の輸入量の約6割がチリ産です。そのため日本のサーモン消費は、オタリアの駆除をはじめチリでの養殖に関わる問題と深くつながっています。
© WWF-Japan

チリのサーモン養殖場。日本で消費されるサーモンはその多くが輸入で、サケ・マス類の輸入量の約6割がチリ産です。そのため日本のサーモン消費は、オタリアの駆除をはじめチリでの養殖に関わる問題と深くつながっています。

さらに、こうした漁業での混獲やサーモン養殖場での被害は、オタリアだけでなく、海鳥や鯨類などさまざまな海の生きものにも及び、海洋生態系への幅広い影響が心配されています。

そのため私たちは、小魚の漁業やサーモン養殖業をサステナブルな形に転換するための活動をはじめ、海洋保護区の管理強化や固有種チリイルカの保全活動など、幅広い取り組みを展開しています。

日本のサーモン消費とも深くつながりチリの海を守るために、ぜひ皆さんにも、私たちの活動を応援いただければと思います。(海洋水産グループ 吉田)

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自然保護室(海洋水産)
吉田 誠

チリ、インドネシア、中国のフィールドプロジェクトを担当。

田舎生まれの田舎育ち。こどもの頃から自然の中で遊ぶことが好きで、自然を守る仕事がしたいと思っていたところ、WWFと出逢いました。海の環境、海の生きものを守るため、頑張ります。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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