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簡単にはいかない、チリイルカのフィールド調査


南米チリの沿岸域にのみ生息する固有種で、南部パタゴニア地域の生物多様性の豊かな海を象徴する「チリイルカ」。

丸みを帯びた背びれが特徴で、体長1.7メートルほどの小型のイルカです。

私たちは、生態系の豊かさの指標としても重要なこのチリイルカの保全活動を、2016年から行なってきました。

チリイルカ(Cephalorhynchus eutropia)。別名ハラジロイルカともいいます。WWFの取り組み開始以前は、ほとんど調査が行なわれておらず、その生態や個体数もはっきりとわかっていませんでした。
© Sonja Heinrich / WWF Chile

チリイルカ(Cephalorhynchus eutropia)。別名ハラジロイルカともいいます。WWFの取り組み開始以前は、ほとんど調査が行なわれておらず、その生態や個体数もはっきりとわかっていませんでした。

まず取り組んだのが、このチリイルカの個体数や生態を明らかにすること。

そのため、重要な生息海域と考えられていた、チロエ島とその周辺でフィールド調査に着手。

ですが、これがなかなか簡単にはいきませんでした。

イルカの背びれは人間の指紋と同じように個体によって模様が異なっているため、個体数を推定するために背びれを両側からカメラで撮影し記録します。
© Sonja Heinrich / WWF Chile

イルカの背びれは人間の指紋と同じように個体によって模様が異なっているため、個体数を推定するために背びれを両側からカメラで撮影し記録します。

チリイルカは周囲の音や気配に敏感なため、見つけるのも容易ではありません。

また、個体数を推定するために、背びれを両側からカメラで撮影し記録するのですが、時に大きな群れに遭遇するとその作業も一苦労。

これだけでも大変なのですが、撮影した背びれのデータから個体を識別して分析し、その海域の個体数を推定するのも骨が折れるものでした。

チリイルカが確認された場所で、海面水温、水深、水の塩分濃度や濁度、また海岸までの距離なども記録し、チリイルカの好む環境についても調査を行ないました。
© WWF-Japan

チリイルカが確認された場所で、海面水温、水深、水の塩分濃度や濁度、また海岸までの距離なども記録し、チリイルカの好む環境についても調査を行ないました。

しかし、こうしたフィールド調査での苦労が、今まさに進めているチリイルカの保全計画づくりに大きく役立っています。

推定個体数や生態、さらに漁業や養殖業など人の海の利用とチリイルカの生息海域との重なりを調査した結果をもとに、さまざまな関係者と話し合いを行ない、実効性のある保全計画ができつつあります。

また、このチリイルカが生きる海では、日本も多く輸入しているサーモンの養殖も盛んに行なわれています。

こうした産業を持続可能なものに変革していくことも、チリイルカと豊かな海の自然を守るために、欠かせない取り組みです。

このチリイルカの保全をはじめとしたチリの海を守る活動を、ぜひ応援いただければ幸いです。(海洋水産グループ 吉田)

海流の贈りもの

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自然保護室(海洋水産)
吉田 誠

チリ、インドネシア、中国のフィールドプロジェクトを担当。

田舎生まれの田舎育ち。こどもの頃から自然の中で遊ぶことが好きで、自然を守る仕事がしたいと思っていたところ、WWFと出逢いました。海の環境、海の生きものを守るため、頑張ります。

人と自然が調和して
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WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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