シベリアトラの野生復帰を断念
2018/10/18
※2023年6月26日をもって、WWFロシア(Vsemirnyi Fond Prirody)はWWFネットワークから離脱しました。
極東ロシアの現場で活動するWWFロシアのスタッフから、残念な報告がありました。
保護していた一頭のメスのシベリアトラ(アムールトラ)の野生復帰を断念した、というものです。
このトラは今年2月、沿海地方のアレクセイ・ニコルスコエという町に出没して捕獲され、野生に戻すことを目指してリハビリセンターでトレーニングを受けていました。
このトレーニングは、保護したトラが再び、自然の中で獲物を獲れる力を身につけ、自立して生きていけるようにするものです。また、人への警戒心を維持し、野生復帰後に里に近付くことのないように、トレーニングは人が直接接触することなく行なわれます。
実際、毎年数頭のシベリアトラが、このトレーニングを受け、野生に戻されてきました。
しかし、すべての例で取り組みが成功するとは限りません。
保護され、「カザーチカ」と名付けられた今回のメスのトラは、たくさんのスタッフが半年以上にわたるトレーニングを施してきましたが、狩りの力と人への警戒心を十分に取り戻すことができませんでした。
結局、10月9日、カザーチカはクラスノヤルスクの動物園に運ばれ、そこで余生を過ごすことになりました。
トラの命を救うことはできましたが、これは保護活動としては残念ながら失敗です。
野生生物の保護は、あくまで「野生で生きる生きもの」の未来を存続させていくこと。目の前の一頭がとにかく死ななければそれでよい、というものではないのです。
野生にトラを戻すのは大変な取り組みです。
年間たとえ数頭でも野生に戻せるならば、いまだ500頭ほどしかいないシベリアトラにとって貴重な数になります。
すみかの森と、その自然の豊かさのシンボルでもあるトラを守っていく取り組みは、これからも続きます。