ダボス会議にて企業・金融機関向け「生物多様性リスクフィルター」を発表
2023/01/16
- この記事のポイント
- 2023年1月16日、WWFはスイスのダボスで開催されている、世界経済フォーラム(ダボス会議)において、企業や金融機関を対象とした「生物多様性リスクフィルター(BRF)」を発表しました。このBRFは、企業や金融機関が、自社のビジネスやサプライチェーン、また投資先の事業などに、生物多様性に関連したリスクが無いかをチェックし、対策を講じるための新しいツールです。WWFはこれを無料のオンラインツールとして公開し、必要とされる投資やビジネスモデルを提供することで、2022年12月に合意された「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」の目標達成を目指しています。
注目される、生物多様性へのビジネスの貢献
2022年12月に開催された、国連生物多様性条約の締約国会議(CBD-COP15)において、各国政府は新たな生物多様性保全のための国際目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」に合意しました。
この枠組みは、2030年までに生物多様性の損失から回復に転換し(ネイチャー・ポジティブ)、そのために世界の国々、企業、自治体など、あらゆる社会的な立場の人々が、協力することを約束したものです。
とりわけ、今後注目され、また期待されているのが、世界経済と金融システムの貢献です。
世界経済フォーラムによれば、実際、世界のGDPの50%以上(44兆米ドル)は、全ての自然環境、そして生物多様性に高く依存しており、その危機はあらゆる産業部門の企業や投資家にとって、大きなリスクとなることが明らかにされています。
こうした発表を受け、2022年12月には、52カ国 330以上の企業と金融機関(総収入1.5兆ドル以上)が、すべての大企業および金融機関は、2030年までに自社の生物多様性への影響と依存度を評価し、開示すること義務付けるよう、各国の政治リーダーに対し要請しました。
しかし、多くの企業や投資家は、この「生物多様性リスク」にどう対応すればよいのか、自分たちの行動が自然にどのような影響を与えるのか、把握と理解に苦労しているのが現状です。
新たな生物多様性の国際目標を達成するために
そこでWWFは、企業や金融機関に対し、生態系保全とビジネスの観点から、森や海、河川流域などの自然環境に対する空間的な理解を促進し、投資やビジネスモデルの検討に必要な課題や優先性を判断するツールとして、「生物多様性リスクフィルター(BRF:Biodiversity Risk Filter)」を開発。
無料オンラインツールとして、2023年1月16日、世界経済フォーラム(ダボス会議)で公開しました。
Biodiversity Risk Filterのサイト(英語) 外部リンク
これを活用することで、企業は自社のバリューチェーン上などにおいて、生物多様性に関連するリスクと機会を把握し、、科学的根拠に基づくアプローチを実施することが可能になります。
また、投資家に対しても、最も生物多様性リスクを軽減できる分野やビジネスに向けた、優先的な投資を促す手立ての一つとなります。
自然界の破壊を食い止め、生物多様性を回復に向かわせるためには、経済や社会を自然と調和したものへとシフトさせていく必要があります。
WWFは今後も、「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」の目標達成に向けた、ビジネスや金融の貢献を可能な限り大きなものとしていくため、生物多様性リスクに注目した取り組みを継続していきます。
解説:生物多様性リスクフィルター(BRF:Biodiversity Risk Filter)について
「生物多様性リスクフィルター(BRF:Biodiversity Risk Filter)」の基盤となっているのは、生物多様性に関連する50以上のデータ群であり、生物多様性に関連した世界的かつ総合的なリスクについての情報を提供しています。
そこには、種(野生生物)や生態系、保護地域、そして森林破壊、生息地の破壊、汚染、農業のための土地利用変化など、生物多様性損失に関与する情報が含まれていることが特徴です。
また、これらのデータはWWF、IBAT、IUCN、UNEP-WCMC、ENCORE、RepRisk、FAO、世界銀行、NASA、その他多くの機関から提供されています。
さらに、WWFとクライメート&カンパニーが開発した特定の方法論ガイダンスは、特に金融機関が、このリスクフィルターツールを使用することを推奨しています。
これは、金融機関が投融資を判断する際に利用するさまざまなデータを用いて、事業所やサプライチェーンのリスクを把握する方法を説明するものであり、実際にツールの結果を適用することで、資産運用を決定する際のリスクの概要を把握することに役立ちます。
こうした情報を手に入れることで、投資家は、最もリスクが軽減できる分野への、優先的な投資を行なうことが可能になります。
企業や金融機関が抱える生物多様性に関するリスクを分析する、このような多様なデータを集めたプラットフォームの提供は、世界初の試みとなります。
また、このツールは、民間セクターによる、持続可能なビジネスと投資の拡大を支援し、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)、科学的根拠に基づく目標ネットワーク(SBTN)、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を含む、グローバルな枠組みに対する企業や金融機関のコミットメントとエンゲージメントをサポートするものです。
Biodiversity Risk Filterのサイト(英語) 外部リンク
関連情報
- Biodiversity Risk Filterのサイト:WWF Risk Filter Suite Platform(英語)
- 金融機関向け特別方法論ガイダンス(Specific methodological guidance)
- WWFインターナショナルの発表資料:WWF’s new Biodiversity Risk Filter helps companies tackle nature-related risks
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