© Elisabeth Kruger / WWF US

「サステナブル・バンキング・アセスメント(SUSBA)」の評価果(2023年)

この記事のポイント
2024年3月、WWF はSUSBA アセスメント(2023年版) の調査結果に基づく新しい報告書を公表しました。当報告書は日本の5行を含むアジア地域の49の銀行(水産物については世界の40行)による持続可能性の取り組みを評価したものです。2023年は生物多様性枠組基金(GBFF)の発足、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の提言の発表等、規制や枠組みの開発にとって重要な年でした。そうした動きのなか、金融機関のESGインテグレーション(投資判断に環境や社会などの非財務情報を組み入れること)は進んでいますが金融機関の環境問題への対応のさらなる加速の必要性は依然として高く残っています。
目次

「サステナブル・バンキング・アセスメント(SUSBA)」の評価レポート(2023年)の概要

2024年3月、WWFは日本の5行を含むアジア地域の49の銀行(水産物については世界の40行)による持続可能性の取り組みを評価した SUSBA アセスメント(2023年) の調査結果に基づく新しい報告書を公表しました。

「サステナブル・バンキング・アセスメント(SUSBA)2023」報告書全文(英語のみ)

「サステナブル・バンキング・アセスメント(SUSBA)2023」仮訳

重要なテーマと傾向

現在、金融機関の間では、財務評価に自然課題評価を組み込んでいくことが不可欠である、という認識が高まっています。

今回の調査でも、対象の銀行の83%が、環境悪化に伴う社会的・経済的リスクおよび生物多様性の損失および/または森林減少のリスクを認識していると回答しました。

一方、調査対象の銀行のうち、事業活動に伴うネガティブな環境・社会的影響の削減、またはポジティブな影響を高めるための「目標」を掲げ、その達成状況を開示している銀行は、わずか 13%に過ぎません。

「森林破壊ゼロ」「転換ゼロ」のコミットメント、海洋持続可能性基準の支持、生物多様性の主要地域の保護、ウォーター・スチュワードシップへのコミットメントは、銀行が環境への影響を最小化し、投融資先全体に持続可能な取り組みを促す上で、非常に重要な要素です。

しかし、その実施状況は、決して十分なものとはいえません。

セクター別評価

本レポートではパーム油、エネルギー、水産物に関してそれぞれセクターごとに評価しています。

パーム油セクター

SUSBA のパーム油指標全体のパフォーマンスを分析すると、銀行にとっての主な課題はパーム油のバリューチェーン全体におけるパーム油方針の適用が依然として不十分であることが見えてきます。アブラヤシのような森林リスク商品に起因する森林減少に対処するためには、すべての利害関係者の協調と連携をさらに強化し、サプライチェーン上でのトレーサビリティ対策の導入していく必要があります。

エネルギーセクター

前回2022 年 の 調 査 対 象 46 行 の う ち62 %にあたる36行 が 2023 年 にTCFD 提言に基づく開示を導入することを確約しており、これは前年(2022年)比で11 ポイント増でした。一方、石炭採掘プロジェクトに制限をかける銀行の数は比較的横ばいで、新規の石炭採掘プロジェクトに制限をかけている銀行は 3 分の 1 に過ぎませんでした。また、ポートフォリオの排出量削減にコミットする銀行は増えているものの、顧客に排出量の開示や削減目標の設定を求めている銀行はまだわずかです。脱炭素目標を効果的に達成するためには、銀行の顧客、特に炭素集約型セクターの顧客が、科学的根拠に基づく排出削減目標を設定するよう、エンゲージメントしていくことが重要です。

水産物セクター

水産物セクターでは生物多様性の損失に関わる法的リスクや、違法・無規制・無報告(IUU)漁業 がブランドや消費者に与える風評リスクが増加していることが明らかになっており、水産会社は厳しい事業環境の中で活動しています。銀行は顧客である水産会社を定期的に評価し、環境および社会的リスクのある事業に資金がどの程度さらされているかを調べることは極めて重要で、顧客への積極的なエンゲージメントが必要となります。銀行は、TNFDの提唱するLEAP アプローチに基づいた評価や養殖・天然漁業のセクター別測定指標の利用を含め、TNFD 開示をするよう顧客に働きかけることが重要です。

WWFは今後も、金融機関との対話を通じて自然課題解決における銀行の役割を重視し、提言を行なっていきます。

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