© Jürgen Freund / WWF

公文教育研究会主催「English Immersion Camp2018」に参加しました

この記事のポイント
2018年8月、WWFジャパンは公文教育研究会主催の小学生向けサマーキャンプにて講演をしました。このキャンプは英語に興味をもち自主的に学習している子供たちを対象に、6日間の合宿形式で英語に「Immersion=どっぷりつかる」プログラムです。世界に興味を持つ子供たちに、日本の私たちの暮らしがかかわる環境問題について「食」の切り口から課題提起し、さまざまな視点で考えてもらいました。

英語にどっぷりつかりながら環境問題を考える

公文教育研究会は2014年よりWWFジャパンの実施している森林保全活動にご支援くださっていると同時に、WWFジャパンの法人会員でもあります。そのご縁もあり、より多くの子どもたちが環境を守る活動に関心をもち、自発的に考え、行動する力を身に着けて欲しいということから、昨年に引き続き今回もEnglish Immersion Campで講演の機会をいただきました。

WWFが登壇したのは、全6日間あるキャンプの4日目にあたる「Wonderland」という3時間のプログラムです。まずはイントロダクションとして公文スタッフの方から、私たちが日本で食べている食物は世界中から運ばれてきていること、食品パッケージの原材料欄にはさまざまな情報が含まれていることを、具体例を挙げながら伝えていただきました。

次いでWWFからは、私たちが日々、購入している食品や日用品の多くは原材料に「パーム油」が使われていることをご紹介しました。

一生懸命にお話をきいてくれました

パーム油は森林伐採と深いつながりがあります。パーム油の原料が採れるアブラヤシ農園をつくるためにインドネシアなどでは天然林が大規模に切り開かれていることや、そのあおりを受けて野生動物がすむ場所をなくしたり、農園内に侵入した野生動物と現地の人々との間で衝突などの問題が起きていることをご説明しました。

パーム油のメリットと生産における問題

そのうえで、子供たちは5つの役割に分かれてグループごとにロールプレイを行いました。役割は①パーム油の生産者、②インドネシアの経済産業大臣、③食品会社の社長、④昔からインドネシアの森にすむ先住民の子供、⑤スマトラトラ です。役割にあわせて、パーム油のメリット・デメリットが記載されたカードが配られました。その情報を理解したうえで、それぞれの立場から、アブラヤシの木をたくさん植えることをどう思うか議論してもらいました。

ロールプレイでは自分が与えられた役の背景情報を読み込んだうえで自分の意見をまとめます

パーム油のメリットをよく知る生産者役の子は「アブラヤシは育つのが早いし、短期間でたくさん実がとれるから油もたくさん作れる。家族のためにお金を稼がなくてはならないから、もっとアブラヤシを育てて売りたい」と話し、経済産業大臣役の子は「もっとお金を稼いで病院などを作ったりしたいので、アブラヤシを育てたい」と語ります。

また、社長役の子は「パーム油を使ってたくさんお金を稼いだら、その利益から現地の人たちを支援したい」と意見を述べました。一方、元々インドネシアの森にすむ子ども役の子は「森は水や食べ物、住む場所を提供してくれる大切な場所なので、これ以上森を切らないで欲しい」、スマトラトラ役の子は「森がなくなると生きる場所がなくなって困る!」など、しっかりそれぞれの立場が置かれた状況を理解した発言がありました。

質疑応答も頑張って英語で!

どういうパーム油なら使っていいの?

日本にいる私たち自身が直接インドネシアに行って森を切ったり、野生動物や先住民の方々を追い出したりしているわけではありません。しかし、消費者として日々使っている製品の背景にはこういった問題が潜んでおり、間接的に関わっている可能性があります。そこで子どもたちには、環境について日々の暮らしの中でできることのひとつとして、環境や人権に配慮して作られたRSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil:持続可能なパーム油のための円卓会議)の認証製品を選ぶという方法を紹介しました。パーム油を使うことが問題なのではなく、問題のある方法で生産されたパーム油を良いものに変えていくことが大切と、WWFは考えているからです。

RSPOの認証油マーク

海の食べ物は大丈夫?

その後は少し視点を変えて、海の環境問題に配慮した水産物の認証制度「MSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)」や「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)」をご紹介しました。

日本人に親しまれている魚のひとつにサケがあります。現在、日本で消費されているサケの約40%はチリから来ています。南部の沿岸域ではサケの養殖が盛んで、沿岸には養殖場が非常にたくさん存在しています。しかし、その過密な養殖が原因で水質汚染が引き起こされたり、養殖場のサケを狙う保護獣であるオタリアなどが殺されるケースがあることをご紹介しました。

こういった問題の解決に、消費者が貢献できるひとつの手段として、お店で魚を買うときは環境負荷をかけない形で生産されたASCやMSCの認証マークつき製品を選ぶと良いことを紹介しました。

MSC、ASCの認証油マーク

環境か、おいしさか?選ぶことの難しさ

セッションの最後にはポテトチップスの食べ比べをしました。あらかじめパッケージから出して情報を隠した2種類を味見して、各自が好きな味を選びます。その後、片方だけがRSPOの認証製品であると明らかにしたうえで、どちらを買うかを尋ねてみました。結果、意外にも多くの子どもたちは意見を変えませんでした。どちらのグループにも「こっちの方が美味しいから」と、好みを理由に挙げた子が多くみられました。日頃、自分が選ぶ品物の背景に環境問題が潜んでいることを知っても、すぐに行動する人ばかりではないという消費者心理が反映されているようにも感じられます。

子どもたちの心に残ったこと

感想を聞くと、子どもたちからは実にいろいろな反応が返ってきました。

6年生の女の子は「木をむやみに切らないとか動物を殺さないとか、必要以上のことをしないのが大事だと思った」、3年生の男の子も「エコマークとかあんまり興味なかったけど今日は面白かった。なるべくエコなものを買えると良いなと思った」とコメントしました。

また、「今日のお話を聞いて、これからは、食べる時に『この食材はどういう流れで僕の手元に来ているのかな』ということをもっと知りたいと思ったし、お母さんにも質問してみようと思う」という6年生の男の子や「スナック菓子が大好きだけどエコなラベルがついているものを選ぼうと思った。お父さんやお母さんにもつたえて、なるべく環境によいものを買おうと思った」と、より踏み込んだ感想を寄せてくれた4年生の女の子もいました。

同席された公文社員の方からも「近い将来『私は公文をやっていて、WWFの話を聞いたのでWWFに入りました!』という子供が出てくると良いなと思っています。地球環境の話題を見聞きすることをきっかけに、環境に関心を持ち、子どもたちが『自分たちも考えよう』となっていくといいですね」というご感想をお寄せいただきました。

英語に興味があり自主的に学んでいる子どもたちは、国際社会への関心が高く、きっと潜在的に日本以外のどこかの国で起きている環境問題にも心を寄せてくれる可能性が高いと考えています。そんな子どもたちに、じっくりとWWFの活動をお伝えする機会をくださった公文教育研究会の皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。

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