海を守るマーク(1) 天然水産物の認証制度 MSCについて
2009/09/14
MSC「海のエコラベル」ってなに?
枯渇する水産資源と拡大する影響
魚、貝、エビといった海の生き物は世界中の多くの人々が生きていく上で必要不可欠なものです。これらの海の生き物は、自然に繁殖し、成長するスピードを考えて適切な量を獲り、あわせてその生育環境を保全していけば、いつまでも食べ続けることができます。
しかし、この「適切な量」を超えて獲り続ければ、海の生き物は減ってゆき、しまいには将来食べるのが難しくなってしまいます。今や世界の水産資源の3分の1は過剰漁獲と言われており、その割合は年々、増加傾向にあります。
また、魚を獲る際に、ウミガメ、海鳥、小さな魚など他の生物が巻き添えになるようなことを避けなければ、豊かな海の生態系が壊れていってしまいます。推計によると、毎年数十万を超える海鳥、ウミガメ、イルカ類などが魚と一緒に「混獲(こんかく)」されています。中には絶滅の恐れのある生物も含まれています。
MSC認証制度とは
海を守りいつまでも魚を獲り続けられるよう、獲ってよい漁獲量や時期、魚の大きさなどを定めたり、他の生物がかかりにくい漁具を使うなど、厳しい取り組みをしている漁業者もいます。
MSC認証は、水産資源や海洋環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業に対する認証制度です。MSC「海のエコラベル」は、MSC認証を取得した漁業によって獲られた水産物の証です。消費者がこのラベルの付いた水産物を選ぶことによって、厳しい取り組みをしている漁業者を支えることにつながります。
こうして水産資源や海洋環境を守る漁業者が漁を続けることができれば、私たち消費者も、いつまでも水産物を食べることができるのです。
MSC認証の特徴と強み
MSC認証の根幹となる規格は、3つの原則から構成されています(図1)。①資源の持続可能性、②漁業が生態系に与える影響、③漁業の管理システムです。資源量(対象とする魚の数量)の大小だけではなく、将来的に適切な数量が維持されるか、対象以外の魚や野生生物への影響を最小限に抑えているか、そのためのルールや規則があり正しく運用されているかなど、幅広く審査を行います。
MSCの認証規格は、FAO(国連食糧農業機関)の「責任ある漁業のための国際行動規範」と「海洋漁業からの漁獲物と水産物のエコラベルのためのガイドライン」、ならびにISEAL(国際社会環境認定表示連合)の定める「社会環境基準設定のための適正実施規範」に準拠し、最善の科学的知見に基づき、水産関係者、科学者、NGOなどが協働で策定しています。また新たな知見と生産技術の向上に合わせ定期的に改定していくことが義務付けられており、常に厳格な認証システムとなるよう改善が続けられています。
その信頼性と透明性の担保のため、認証審査には客観的な証拠の提示と、MSCからも水産業界からも独立した第三者審査機関が必要になります(図2)。
- FAO「責任ある漁業のための国際行動規範」(英語)
- FAO「海洋漁業からの漁獲物と水産物のエコラベルのためのガイドライン」(英語)
- ISEAL社会環境基準設定のための適正実施規範(英語)
- ASI(国際認定サービス)(英語)
またMSC漁業認証を取得した漁業で獲られた水産物をMSC認証のものとして取り扱うためには、CoC(Chain of Custody:管理の連鎖)認証の取得が必要となります。CoC認証は、認証された水産物と非認証水産物とが混在することを防ぐとともに、認証水産物のトレーサビリティ(産地からの流通経路を確認する手段)を確保するためのものです(図3)。
MSC「海のエコラベル」を付けてお店に並ぶのは、厳格な審査を経て認証された漁業や企業により生産された信頼ある製品だけ。消費者もこのMSCラベルによって、それが水産資源や海洋環境に配慮した製品であることが分かり、安心して水産物を買うことができます。