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ちょっと待って!野生動物のペット飼育

この記事のポイント
スナネコやフェネック、マーモセット、そしてカワウソなど、SNSやテレビ番組で人気者となった“ペット”。本来野生で暮らすこれらの生きものを、個人が飼育することには、さまざまな問題がともないます。「かわいいから!」という理由で衝動買いし、後で大変なことになってしまうケースも少なくありません。
目次

かわいい!でもペットに向いていないかも?

時にペットの愛らしさ、可愛さは、人の暮らしに喜びや癒しを与えてくれます。
近年は、イヌやネコ以外の「エキゾチックペット」や「エキゾチックアニマル」と呼ばれる動物をペットで飼う人も増え、求められる動物も多様化してきました。

ペットとして流通している動物は、大きく2つに分けられます。

一つは、イヌやネコのような、家畜化されたペット。こちらは、人間と数万年間にもおよぶ長年の付き合いのある動物です。

もう一つは、サルやカワウソ、キツネなどの野生動物をペットにしたもの。こちらは本来、人の生活圏とは別の、自然の世界でくらしていた動物。

最近は、ペットにされたこれらの野生動物が、SNSなどでも人気を博しています。しかし、実はこうした動物は、イヌやネコと異なり、生態や飼育に必要な知見や情報が乏しく、動物の健康を維持することが難しいという問題があります。

また、野生動物ならではの問題も指摘されています。

© Andre Dib / WWF-Brazil

野生動物をペットにすることで起きる「5つの問題」

野生動物をペットにすることで生じる代表的なリスクとして、次の5つが挙げられます。

1)野生の個体を乱獲し「絶滅」に追い込むリスク

ペット販売されている動物の中には、絶滅の心配がある動物が含まれています。
「飼育繁殖」と表示されていても、実は、野生で捕まえられた動物が混じっている可能性もあります。

生息地破壊などによって、すでに数を減らしている場合、捕獲によって、絶滅の危機が急激に高まる動物もいます。

また、生息状況がよく分かっていない野生動物も多くいるため、捕り続けてしまい、気づかないうちに動物を絶滅の危機にさらしているかもしれません。

シロフクロウ(Bubo scandiacus)は絶滅のおそれが高い種のひとつ。生態系の頂点に位置するフクロウの個体数減少は、その地域の生態系維持にも大きな影響を与えます。
© Kari Schnellmann

シロフクロウ(Bubo scandiacus)は絶滅のおそれが高い種のひとつ。生態系の頂点に位置するフクロウの個体数減少は、その地域の生態系維持にも大きな影響を与えます。

2)密猟や密輸といった「違法取引」のリスク

国際条約や日本の法律で守られている動物は、価値が高いとされ、密猟や密輸のターゲットになることもあります。

密猟は絶滅の危機を高めるだけでなく、密猟された動物自体を苦しめてしまうことも。
密猟された場合、劣悪な環境で管理、運ばれることもあり、その過程で死んでしまうことが多いのです。

また、密輸に関しても、大きな問題があります。
密輸の手口は巧妙なため、すべての密輸を税関で止めることは困難。摘発される密輸事件は起こっている密輸全体のほんの一部と言われています。

密猟された後、押収されたホウシャガメ(Astrochelys radiata)。
© WWF-Madagascar

密猟された後、押収されたホウシャガメ(Astrochelys radiata)。

日本の法律では、ペットショップやアニマルカフェに、動物の由来(入手)の合法性の証明を求めていません。

そのため、ペット市場に密猟・密輸された動物が紛れ込んでいたり、業者が虚偽の情報開示を行なっていたとしても、消費者は見分けるすべがないのです。

気をつけて買ったつもりでも、結果的に密猟や密輸を助長してしまうおそれがあります。

3)適した飼育環境が用意できない「動物福祉」のリスク

野生動物は本来自然に暮らす生きもの。

夜行性、マーキングといった野生動物ゆえの生態や習性が、一般家庭での飼育に適さず、動物や飼い主に大きな負担を強いる可能性があります。

また、診療できる獣医師も限られているため、動物が病気になった場合、十分な治療を受けさせてあげられないかもしれません。

スローロリスは夜行性の動物。暗いところでも良く見えるように集光性の高い目を持っています。昼行性の人間との生活を強いることで目に負担を与えてしまうかもしれません。また、SNSで見られるバンザイのポーズも、危険を察知したときに見せるポーズと言われています。人とのふれあいが、スローロリスのストレスになっているおそれがあります。
© Rob Webster / WWF

スローロリスは夜行性の動物。暗いところでも良く見えるように集光性の高い目を持っています。昼行性の人間との生活を強いることで目に負担を与えてしまうかもしれません。また、SNSで見られるバンザイのポーズも、危険を察知したときに見せるポーズと言われています。人とのふれあいが、スローロリスのストレスになっているおそれがあります。

【関連資料】守ろう地球の仲間たちースローロリス編ー 京都市動物園・公益財団法人日本モンキーセンター共同制作

4)動物から人へ「感染症」をもたらすリスク

野生動物は、さまざまな動物由来感染症の病原体を保有している可能性があります。

動物由来感染症の中には、人が感染すると重症化する可能性の高いものもあります。

深刻な感染症を引き起こすおそれがあるとして、サルやプレーリードッグなど、すでに輸入が禁止されている野生動物もいます。

サルの一種、ピグミーマーモセット(Cebuella pygmaea)
© J.J. Huckin / WWF-US

サルの一種、ピグミーマーモセット(Cebuella pygmaea)

5)新たな「外来生物」を生み出してしまうリスク

不十分な管理によって逃げたり、飼育が難しいために遺棄されたりする野生動物もいます。毒や鋭い牙を持っている動物の場合、人に危害を加えるおそれもあります。

こうした動物は、もともとその地域に生息していた動物の住み処や餌をうばったり、捕食したりして、生態系に大きな影響を与えます。

不適切な管理によって、バランス良く保たれていた生態系が壊れてしまうかもしれないのです。

アライグマはテレビ番組をきっかけに、人気となり大量に輸入されましたが、人慣れしないその飼いにくさから、野外に遺棄される例が多発。害獣となり、捕獲される数も増えています。
© Frank PARHIZGAR / WWF-Canada

アライグマはテレビ番組をきっかけに、人気となり大量に輸入されましたが、人慣れしないその飼いにくさから、野外に遺棄される例が多発。害獣となり、捕獲される数も増えています。

その動物、飼っても問題ないですか?

ペット飼育を検討する場合は、まずは、自分が飼おうと思っている動物が、「野生動物ではないか?」「5つのリスクが生じないか」を確認することが大切です。

また、「人に慣れない」「噛みついたり引っかいたりする」「鳴き声がうるさい」など、周囲の人たちにも迷惑を及ぼす可能性も考える必要があります。。

動物が持つ「かわいい」以外の側面に目を向けることは、一緒に暮らすことで起こる飼い主や、飼われる動物の負担を減らし、また、野生に暮らす仲間を絶滅や密猟といった脅威から守ることにもつながります。

© naturepl.com / Klein & Hubert / WWF

「飼育員さんだけが知ってる あのペットのウラのカオ」を見て、ツイートしよう!

WWFジャパンでは、動物園と一緒にこの「野生動物をペットにする」ことで起きるさまざまな問題について知っていただくため、キャンペーンを開始。
動画コンテンツ「飼育員さんだけが知ってる あのペットのウラのカオ」を公開中です。

キャンペーンサイトでは、「#ペットにしても幸せにできない動物」をつけてTwitter投稿ができるようになっています。

動物が好きなあなただからこそ、野生動物はやっぱりペットには向いていないかも思った方、野生動物をペットとして飼育することに疑問を感じた方は、ぜひその想いをTwitter投稿し、家族や友人、同僚など、周りの人に伝えて頂けませんか?あなたの投稿が、この問題をより多くの人に知ってもらうきかっけになります。

▼キャンペーンサイトリンク
https://www.wwf.or.jp/campaign/uranokao/

▼野生動物のペット問題について、より詳しくお知りになりたい方はこちら
野生動物のペット利用の課題とWWFジャパンの取り組み

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