野生生物の違法取引対策
2010/01/01
世界の野生生物を脅かす問題
世界にはさまざまな野生の動植物が生息しています。しかし現在、少なからぬ野生生物が減少し、絶滅の危機に瀕しています。
その理由の一つが、人間による、野生生物の「過剰な利用」です。
私たちは、食品、医薬品、ペット、衣類、装飾品などいろいろな形で野生生物を利用しています。
利用しているものは、生きた動植物はもちろんのこと、植物の種や動物の羽、牙、爪、毛、骨など、実にさまざま。私たちの暮らしは、野生生物の命に支えられていると言っても過言ではありません。
しかし、必要以上の利益や利用を追い求めることで、過剰な捕獲が行なわれてきたことで、多くの野生生物が、数を減らし、絶滅の危機に追い込まれてきました。
野生生物の保護や、自然環境の保全対する意識が高まった現在も、衣食や薬、また観賞用、ペットなどのために、野生生物の捕獲や売買が、世界各地で絶えることなく行なわれています。
WWFは、地球の生物多様性を保全するため、生物の過剰な利用や乱獲、またそれを助長する密輸などの調査やパトロール活動を支援し、取引規制についての提言を行なうことで、野生生物の保護活動に取り組んでいます。
トラフィックの活動
WWFは、IUCN(国際自然保護連合)と共同で、野生生物の国際取引を監視し、市場での野生動植物の流通を調べる、国際的な機関「トラフィック・ネットワーク」を設立。その取り組みを支援しています。
トラフィックは、野生生物の取引状況について調査を実施。現状や改善のための提言を、ワシントン条約事務所に対し行なっています。
活動の目的
トラフィックの活動が目指しているのは、国際市場での野生動植物の過剰な取引や消費、密猟・密輸を防ぐことで、絶滅のおそれのある種(しゅ)を保全することです。この取り組みは、一方的な野生生物の利用や取引の禁止を求めるものではなく、その持続可能な利用を確立することを目的に行なわれています。
トラフィックは、取引に関わる問題において、以下の4つに重点を置いています。
希少種の保護
過度な取引によって特定の野生動植物の存続や脅かされないようにします。日本の市場において行なわれる取引の透明性を高めることによって、取引を管理し、自然に悪影響を及ぼさないようにします。
生態域(エコリージョン)の保全
ある特定の種が過剰に利用され、減少することでその地域の生態系のバランスは崩れ、そこに住む他の野生生物にも影響を及ぼします。また一方では、外来種が生息地に入り込むことによって従来の生態域に悪影響を及ぼし、その地域の生態系は崩れるという問題も発生します。トラフィックは野生の動植物の取引によって特定地域の生物多様性が脅かされないようにします。
資源の確保
食物や薬など、人間が必要としている野生の動植物の利用が、将来にわたって維持できるようにします。
国際協力
野生動植物の取引が国際的に協力されることを支援します。取引の悪影響をふせぎ、持続可能な範囲で行なわれるよう、国際的な協定や政策を開発し支援します。
日本での活動
トラフィックは、イギリスに置かれた本部を中心に、世界20カ所の拠点を中心に活動を展開しています。各国の事務所は、それぞれの地域を中心として、野生生物の取引状況についての調査や、政府や関係者に対する現状改善のための提言を行なっています。
日本に事務所を置く、トラフィック・ジャパンオフィスは、トラフィックの一員として、また、WWFジャパンの野生生物取引調査部門として、日本がかかわる野生動植物の取引に関する問題を中心に、活動を行なっています。
日本は食品、ペット、伝統薬や装飾品など、さまざまな形で野生生物を輸入している、世界でも有数の野生生物消費国です。その中には違法なもの、あるいは持続性や野生生物への影響が考慮されていないものも少なくありません。トラフィックは、市場調査や公的データの分析を行ない、それらに基づいて関係省庁などへ報告・提言を行なっています。