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南部アフリカ5カ国のアフリカゾウ個体数が明らかに

この記事のポイント
南部アフリカに位置する、アンゴラ、ボツワナ、ナミビア、ザンビア、ジンバブエ。この5カ国の国境が接しているカバンゴ・ザンベジ国境保護区(KAZA TFCA)で、2022年に行なわれたアフリカゾウの推定個体数の調査報告が発表されました。調査結果によれば、この地域に生息するアフリカゾウの推定個体数は22万7,900 頭。2014年から15年にかけて実施された同様の調査による推定21万6,970頭と、変わらない水準にあることが示されました。
目次

オカバンゴ川とザンベジ川 ~アフリカの野生動物の楽園

南部アフリカを代表する2つの川、オカバンゴ川とザンベジ川。

西部のアンゴラに源流を持つオカバンゴ川は、カラハリ砂漠の広がるナミビア、ボツワナを通り、最後はボツワナ国内の広大な内陸のデルタ「オカバンゴ・デルタ」に至る、海に河口を持たない内陸河川です。

また、ザンベジ川はアンゴラとザンビアの北部を源とし、モザンビークでインド洋に注ぐ、全長2,500kmを超える大河で、オカバンゴ川同様、乾燥した大地に貴重な水をもたらす川。

その流域に広がるサバンナや草地、森林、半砂漠の自然は、多くの野生動物にとって、生きる上で欠かせない、貴重な景観となっています。

とりわけ、アフリカゾウにとっては、アフリカ東部から南部を中心に広く生息している、サバンナゾウの総個体数の半分が生息するエリアと見られており、その保全が急務となっています。

©KAZA

象牙の密猟や人とのあつれきが続く中で

この地域に国土を広げるアンゴラ、ボツワナ、ナミビア、ザンビア、ジンバブエの5カ国では、国境地帯を中心とした一帯に、カバンゴ・ザンベジ国境保護区(KAZA:Kavango Zambezi Transfrontier Conservation Area)を設置し、協力してその自然環境や野生動物の調査・保全に取り組んできました。

国境を越えた、この国際協力に基づく取り組みには、非常に大きな意味があります。

アフリカゾウのような国境を越えて移動する動物を守り、複数の国を流れる川の流域の自然を保全する取り組みは、どこか一つの国の努力だけでは、実現することができないためです。

そうした中、5カ国は2022年に、WWFやKfW(ドイツ復興金融公庫)、Peace Parks Foundationなどの支援のもと、KAZAでのアフリカゾウの大規模な個体数調査を実施しました。

調査のほとんどは7機の軽飛行機を使って行われました。パイロットと調査者、記録者が1チームとなり、総員47名のクルーが195回、700時間のフライトを決行。2か月間に合計6万7,390kmを飛び、31万平方キロを探査しました。
©KAZA/Dylan Blew

調査のほとんどは7機の軽飛行機を使って行われました。パイロットと調査者、記録者が1チームとなり、総員47名のクルーが195回、700時間のフライトを決行。2か月間に合計6万7,390kmを飛び、31万平方キロを探査しました。

同地域でこの包括的な調査が行なわれたのは、2015年以来。
調査に先立ってナミビアで開催された、アフリカゾウを含む野生動物と人の間で生じているさまざまな「軋轢(あつれき)」、すなわち、農作物や居住地、住民への被害とその報復措置としての駆除といった問題についての話し合いでも、各国が適切な政策決定を行なう上で、確かな科学的データが必要であることが指摘されていました。

この必要性に応える上でも、今回実施された、南部アフリカのアフリカゾウ個体群の現状を調べる調査は、各国にとって重要な役割を担うものとして期待が寄せられていました。

推定個体数は 22万7,900 頭

2023年8月に行なわれた、KAZAに関係する各国代表の発表によれば、今回2022年の調査で確認されたアフリカゾウは、 22万7,900 頭(誤差を±7%想定)。

2014年から15年にかけて実施された、同地域での調査の結果である21万6,970頭を、わずかに上回る結果となりました。

これは、KAZA一帯での保全に尽力してきた、5カ国を中心とする関係者、支援者の努力が、確かな形で実りを結んだ、一つの証といえます。

一方で、一部ではゾウの死亡率の上昇がみられる地域もあり、今後その原因の分析についても取り組まれる予定です。

©KAZA

KAZA事務局と関係各国の代表は、今回の調査が、人間と野生生物の共存につながる、科学に基づいた政策や、土地利用計画の促進、さらには持続可能な観光の開発といった地域の課題への挑戦に貢献するものとして、今後の取り組みに対する姿勢を明らかにするとともに、調査の実施パートナーであるWWFや支援者、支援にあたった国際団体に対し、感謝の意を表明しました。

この調査によって、南部アフリカの状況については、よい結果が示されたものの、東部をはじめ、他の生息域では、今も人とのあつれきや密猟といった問題が続いており、干ばつなどによる影響も懸念されています。

WWFは引き続き、アフリカゾウの生息する国々で、各国政府および地域の自治体の関係者らと協力しながら、アフリカゾウの保全と人との共存を目指す活動に取り組んでいきます。

【寄付のお願い】アフリカゾウの未来のために|野生動物アドプト制度 アフリカゾウ・スポンサーズ

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