©Jaap van der Waarde / WWF- Netherlands

アフリカゾウ保全、更なる促進へ!レッドリスト更新


現存する地上の野生動物では最大の種であるゾウ。
このゾウが今、何種いるか皆さまご存知でしょうか。

動物がお好きな方ならば、アジアゾウとアフリカゾウの名前がすぐに思い浮かぶかと思います。

東南~南アジアに広く分布するアジアゾウ。アジアゾウは世界に1種ですが、その中に、インドゾウやセイロンゾウ、スマトラゾウ、といった「亜種」がいます。やはり生息地の森の破壊や密猟により、絶滅の危機にあります。(レッドリストのカテゴリーは、EN:絶滅危惧種)
©Ola Jennersten / WWF

東南~南アジアに広く分布するアジアゾウ。アジアゾウは世界に1種ですが、その中に、インドゾウやセイロンゾウ、スマトラゾウ、といった「亜種」がいます。やはり生息地の森の破壊や密猟により、絶滅の危機にあります。(レッドリストのカテゴリーは、EN:絶滅危惧種)

アフリカの東部~南部のサバンナや半砂漠に生息するアフリカゾウ(サバンナゾウともいう)。大きく曲がった象牙を持ち、体重は最大で10トンにもなります。過去50年で少なくとも60%減少したとされています。(レッドリストのカテゴリーは、EN:絶滅危惧種)
©Martin Harvey / WWF

アフリカの東部~南部のサバンナや半砂漠に生息するアフリカゾウ(サバンナゾウともいう)。大きく曲がった象牙を持ち、体重は最大で10トンにもなります。過去50年で少なくとも60%減少したとされています。(レッドリストのカテゴリーは、EN:絶滅危惧種)

その通り、ゾウは長い間、この2種とされてきました。

しかし最近は、これに1種を加え、3種とする分類が主流になりつつあります。

その1種が、「マルミミゾウ」と呼ばれる、アフリカ中西部のコンゴ盆地を中心とした熱帯林にすむゾウです。

マルミミゾウは身体が小さく、肩の高さは2.4mほど。あまり湾曲しない牙も持ち、丸く小さな耳をしています。体重も最大で6トンほどです。これまで31年間で86%減少したとされています。(レッドリストのカテゴリーは、CR:近絶滅種)
© WWF / Carlos Drews

マルミミゾウは身体が小さく、肩の高さは2.4mほど。あまり湾曲しない牙も持ち、丸く小さな耳をしています。体重も最大で6トンほどです。これまで31年間で86%減少したとされています。(レッドリストのカテゴリーは、CR:近絶滅種)

もとはアフリカゾウの亜種とされていましたが、最近は別種とされるようになりました。

このマルミミゾウ、生息地が熱帯林の中ということもあり、その生態や個体数は、よくわかっていませんでした。

しかし、他のアフリカゾウと同じく、象牙を狙った密猟は、マルミミゾウを絶滅の危機に追いやる深刻な脅威となってきました。

サバンナに生息するアフリカゾウが、1960年代から90年代にかけて、密猟で激減したのに対し、マルミミゾウは2000年以降に、多くが密猟の犠牲となったのです。

またその背景には、生息国の政変や内戦、深刻化する熱帯林の破壊といった問題もあります。

こうした状況を受け、IUCN(国際自然保護連合)は、「レッドリスト」でこれまで2種に分類してきたゾウを、2021年3月25日発表のリストの最新版より初めて、正式に3種とする分類を採用。

マルミミゾウを第三の、絶滅の危機にあるゾウとして記載することにしました。

あくまで1種のアフリカゾウを2種に分けただけではありますが、種や生息地の単位で、野生生物の絶滅危機とその理由を細かく検証し、保全の手立てを考えることは、とても大事なことです。

また今回、サバンナに生息するアフリカゾウについても、絶滅の危機の度合いを示すカテゴリーが、これまでの「VU(危急種)」から「EN(絶滅危惧種)」へとランクが上がり、より深刻な状況にあるとの評価がされています。

絶滅の危機が上がっていることは非常に残念で憂慮すべきことですが、より適切な保全管理や国際協力を強化することに役立つことを期待したいと思います。

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自然保護室(野生生物 グループ長)、TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

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