「エキゾチックペット」の問題-アンケート結果を発表 意識変容、そして規制強化を!
2021/03/03
国境を越えるエキゾチックペット「5つの問題」
海外産のカエルやイモリなどの両生類、ヘビやトカゲ、カメなどの爬虫類、フクロウやオウムのような鳥類や、サルやカワウソ、ハリネズミ、またネコ科の動物と言った哺乳類、本来は野生生物であるこれらの動物が、日本で「エキゾチックペット」として人気を呼んでいます。
「エキゾチックペット」は、SNSやTV番組でももてはやされているほか、ペットカフェのような店舗の目玉としても注目されており、関心を持つ人や、飼育を希望する人も少なくありません。
しかし、こうしたペットの取引や飼育に、さまざまなリスクが伴うことについては、あまり認識がなされていません。
たとえば、次のような問題が懸念されます。
1)感染症
エキゾチックペットの捕獲や取引には、動物から人に感染する「動物由来感染症(人獣共通感染症)」を媒介するリスクがあります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も動物由来感染症のひとつであり、実際、コウモリを起源とし、別の野生動物を介して人に感染した可能性が指摘されています。
2)動物福祉
エキゾチックペットにされる動物の中には、一般家庭やカフェなどでの飼育に適さない種や、飼育のノウハウが十分に確立されていない種もいます。飼育する個体に精神的・肉体的なストレスが生じる可能性があります。
3)絶滅危惧種
エキゾチックペットの中には、絶滅のおそれのある動物が多く含まれています。種によっては、密猟やその取引によって、野生の個体を絶滅に追い込まれてしまう場合があります。
4)密輸
人気があり、高値で売買されるため、国際取引が禁じられている野生生物でも、密輸されるケースが後を絶ちません。日本に向けたエキゾチックペットの密輸も毎年発覚しており、日本に密輸された個体が、ペット市場で流通していることも分かっています。
5)外来種
不十分な管理によって逃げ出したり、飼育が困難で遺棄されたエキゾチックペットが、在来の野生生物を捕食したり、すみかを奪う、病気を伝播するなどして、生態系を脅かす事例が多く確認されています。
高まるペット人気とは裏腹に、こうした問題によるリスクは、日本ではいまだ十分に認識されていません。
日本で「エキゾチックペット」意識調査を実施
そこで、WWFジャパンは、2021年2 月1 日から3 日にかけて、インターネットを使った「エキゾチックペット」に関する意識調査を実施。日本全国の15 歳~79 歳、1,000 名を対象に、アンケートを行ないました。
2021年3月3日の「世界野生生物の日」に公開したその結果では、次のような傾向が明らかにされています。
- 「触れてみたい・飼ってみたい」人の割合
日本では、3人に1人(33%)がエキゾチックペットに「触れてみたい」、6人に1人(17%)が「飼ってみたい」と回答。特に若い世代で人気が高かった。 - 5つの問題を認識している人の割合
「エキゾチックペット」に関係する5つの問題について、68%がよく知らない・全く知らないと回答。 - 問題に対する危機感を持つ人の割合
情報提供を受けて、95%が「問題だと思う」「やや問題だと思う」と回答。最も重要な問題として「感染症(60%)」、次いで「絶滅危惧種(18%)」が挙げられた。 - 規制が必要であると考える人の割合
5つの問題について、95%が「規制が必要だと思う」「やや必要だと思う」と回答。このうち「必要だと思う」と回答した割合は、年齢が下がるほど低下する傾向が認められた。 - 問題を認識した上で「飼ってみたい」人の割合
情報提供後、「触れてみたい」人は33%→25%に低下。「飼ってみたい」と回答した人は17%→14%に低下。後者の減少幅は情報提供前と比べてわずか(-3%)であった。
調査によって明らかになったこうした傾向から、日本ではエキゾチックペットに関係する問題の認知度が低い一方、ひとたび知識を得れば問題意識を持つことが分かりました。
しかし、潜在的な消費者になり得る可能性のある、若い世代を中心とした層については、問題をただ認知するだけでは、飼育を希望する意向に変化があまり見られない傾向も見受けられました。
これは、エキゾチックペットをめぐる問題を解決していく上での、長期的な課題の一つであるといえます。
日本で求められる「エキゾチックペット」問題への取り組み
WWFジャパンでは今回の調査の結果をふまえ、今後の「エキゾチックペット」問題への取り組みにあたり、日本で重視すべき4つのポイントをまとめました。
- 政策努力
エキゾチックペットの取引を適切に規制する。そのための政策を早期に導入すること - 普及啓発
エキゾチックペットや関係する問題に対する一般の認識を高め、社会的な意識を醸成すること - 行動変容
若年層などをはじめとする、潜在的なエキゾチックペットの消費者の、意識と行動を変えていくこと - 事業改善
エキゾチックペットの販売・展示を手掛ける事業者による、取り扱いの改善が行なわれること
特に、1の「政策努力」については、エキゾチックペットに関連する5つの問題について、次のような問題があることから、早急な法体制の改善と施行が求められます。特に、60%の人が、特に最も重要な問題として、「感染症」を挙げていることから、ペットの輸入、国内の衛生管理を行う省庁は、連携して適切な規制を検討していくことが重要です。
5つの問題をめぐる日本の法規制の課題
- 感染症
サルやコウモリなど、感染症リスクが高く法律で輸入が禁止されている動物が、今も日本国内では、一般向けにペットとして、合法的に販売されている。 また、こうした動物の国内流通や飼育が法律でほとんど規制されていない。
現在の日本の規制は、エキゾチックペットの輸入や飼育を包括的に制限する内容になっておらず、将来の未知の感染症を予防することができない。 - 動物福祉
日本の法律では、エキゾチックペットなど野生由来の動物の福祉に配慮した飼育基準を定めていない。このため、これらの動物が福祉を十分に満たされない形で、一般家庭やカフェなどでペットやふれあいの対象として飼育されてしまっている。 - 絶滅危惧種
現状の日本の法律では、海外の生息国で絶滅が心配されている野生動物であっても、国内でのペット取引がほとんど規制されていない。
また、多くの種や個体が、流通経路が不透明なまま取引されており、本来の生息地における密猟や個体数の減少に拍車をかけている可能性がある。 - 密輸
日本の法律では、国内に流通している動物のほとんどについて、出所の証明を一切求められることなく販売ができる。このため、密輸された個体が紛れ込んだり、業者が虚偽の情報開示を行なっても、購入者は見分けるすべがない。 - 外来種
日本の外来生物法では、生態系への悪影響がすでに明らかな、一部の外来生物しか、輸入や飼育が禁止されていない。 持ち込まれることで今後、外来生物になる可能性のある海外の生物(エキゾチックペットを含む)を、予防的視点から予め規制し、輸入や飼育を包括的に制限する規制が存在しない。
WWFジャパンは今後、これらのエキゾチックペットの利用をめぐる問題の解決に向けて、政策強化、世論醸成、潜在消費者の行動変容、そして事業者による取り扱いの改善を実現すべく、関係省庁や専門家、事業者をはじめとする幅広いステークホルダーと協力しながら、取り組みを展開していきます。