©︎naturepl.com / Neil Aldridge / WWF

2月20日は「センザンコウの日」


毎年2月の第3土曜日は、「世界センザンコウの日」。

世界で最も密猟されている哺乳類、とも言われる、絶滅危機種センザンコウの保護を訴える日です。

センザンコウは全身をウロコで覆われた珍しい哺乳動物で、東南アジアに4種、アフリカに4種の計8種が知られています。


センザンコウは古くから、肉が食用に、皮革が革製品に、ウロコが薬の原料として利用されてきました。

2000年以降、特にアジアの経済成長に伴って需要が増大し、密猟や密輸が激化。

まずアジアで個体数が激減し、その後は代替としてアフリカの種が狙われるようになり、数を減らしました。

2000年から2019年までに、違法に取引されたセンザンコウの数は、実に89万頭を超えるといわれています。

押収されたセンザンコウの皮。2016年から2019年に密輸されたウロコは発覚しただけで206.4トンにのぼります。
©︎E. John / TRAFFIC

押収されたセンザンコウの皮。2016年から2019年に密輸されたウロコは発覚しただけで206.4トンにのぼります。

また近年は、こうしたセンザンコウの危機が、人にも危険を及ぼす可能性が指摘されるようになりました。

センザンコウを「中間宿主」とする動物由来感染症の広がりがあるのではないか、と懸念されているのです。

今、全世界に大きな影響を及ぼしている、新型コロナウイルス感染症(COVID- 19)も、こうした動物由来感染症のひとつ。

世界の各地で続く、野生生物の過剰な利用や密猟、違法な取引といった「野生生物犯罪」が、新型コロナや未知の感染症を含む、さまざまな感染症のパンデミックを引き起こすおそれが、確かにあるということです。

休んだり身を守るために丸まるセンザンコウ。新型コロナウイルスは、もともと野生のコウモリが保有していたウイルスといわれていますが、これが人に感染する過程において、センザンコウを経由したのではないか、と指摘する研究者もいます。
©︎naturepl.com / Jen Guyton / WWF

休んだり身を守るために丸まるセンザンコウ。新型コロナウイルスは、もともと野生のコウモリが保有していたウイルスといわれていますが、これが人に感染する過程において、センザンコウを経由したのではないか、と指摘する研究者もいます。

2021年の「世界センザンコウの日」は、本日2月20日。

センザンコウをご存知の方も、初めて知った!という方も、ぜひこの野生動物についてご関心を深め、その背景にある問題をご一緒に考えていただければと思います。

野生のセンザンコウを、その生息域の自然環境を守ること。それは私たち自身の未来を守ることでもあるのです。

地球への処方箋 コロナ禍を越えて、地球の健康を取り戻すために。ぜひご支援ください!

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自然保護室(野生生物 グループ長)、TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

人と自然が調和して
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