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生きものがつくる海の自然「世界 海の日」に寄せて


白保の浜で撮影したサンゴ礫。コモンサンゴ属やキクメイシ科、タバネサンゴ属、クダサンゴ属などの骨格が含まれているらしい。専門家が見るとどんな仲間のサンゴかもわかってしまうので、一緒に浜を歩くと何とも楽しい勉強になります。
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白保の浜で撮影したサンゴ礫。コモンサンゴ属やキクメイシ科、タバネサンゴ属、クダサンゴ属などの骨格が含まれているらしい。専門家が見るとどんな仲間のサンゴかもわかってしまうので、一緒に浜を歩くと何とも楽しい勉強になります。

「この写真の中に、何種類のサンゴが含まれてる?」

サンゴ礁の専門家のスタッフに聞いてみたところ、驚いたことに「少なくとも10種類以上かな」という答えが返ってきました!

写真をとったのは、私たちのサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」がある、沖縄県は石垣島、白保の海岸。

浜のすぐ先には、世界屈指の規模を誇るアオサンゴの群集をはじめ、さまざまな種類のサンゴが彩る海が広がっています。

川から流れ込む土砂が形成する本州などの砂浜とは異なり、サンゴ礁の海の砂は、その大半が砕けたサンゴの骨格や貝殻など。浜や砂が白く見えるのは、そのためです。
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川から流れ込む土砂が形成する本州などの砂浜とは異なり、サンゴ礁の海の砂は、その大半が砕けたサンゴの骨格や貝殻など。浜や砂が白く見えるのは、そのためです。

この浜の砂は、波で折れたサンゴが、海中で少しずつ細かくなったものもありますが、専門スタッフによれば、生きものたちが日々生み出している砂もあるとのこと。

たとえば、サンゴの骨格などの表面に生えた藻類を食物とするウニなどは、鋭い歯で固い骨格ごと藻を削り取って食べ、糞と一緒にサンゴ砂を排出するそうです。

また、ブダイのような魚も、生きたサンゴを、これまた骨格ごとガリガリ齧って食べ、同じく砂を排泄するそう。

白と青で彩られた、美しい南国の海とビーチは、実は動物たちのトイレ…ではなく、命の営みによって形作られているのです。

オオモンハゲブダイ
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オオモンハゲブダイ

ガンガゼ
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ガンガゼ

また、そこに存在する生きものたちが、どれほど多様であるかも、足許に広がる浜辺、わずか数センチ四方を見れば伝わってきます。

その骨格からわかるサンゴの種数は、それだけさまざまなサンゴがその海に生息し、それぞれのサンゴとかかわりながら生きる、さらに多くの生きものたちがいることを、語っているからです。

サンゴとはポリプと呼ばれる小さな生きもの集合体。石灰質の骨格は、この生きものたち共通のすみかです。また骨格の隙間などは、小さな魚やエビにとって安全な隠れ家になります。
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サンゴとはポリプと呼ばれる小さな生きもの集合体。石灰質の骨格は、この生きものたち共通のすみかです。また骨格の隙間などは、小さな魚やエビにとって安全な隠れ家になります。

海という世界、自然、生きものたちの奥深さ。

本日は、世界中でそんな海のことを考える「世界 海の日」です。

皆さんの好きな海、大切にしたい海の景色に、どのような生きものたちが息づいているか、想像してみていただければと思います。

折れた枝サンゴ。サンゴの成長は遅く、大きくなるまでには長い時間がかかります。マナーを守らない観光客がサンゴを折ってしまうと、それは生きものたちにとって手痛い打撃になります。
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折れた枝サンゴ。サンゴの成長は遅く、大きくなるまでには長い時間がかかります。マナーを守らない観光客がサンゴを折ってしまうと、それは生きものたちにとって手痛い打撃になります。

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自然保護室(コンサベーションコミュニケーション グループ長)
三間 淳吉

学士(芸術学)。事務局でのボランティアを経て、1997年から広報スタッフとして活動に参加。国内外の環境問題と、保全活動の動向・変遷を追いつつ、各種出版物、ウェブサイト、SNSなどの編集や制作、運用管理を担当。これまで100種以上の世界の絶滅危惧種について記事を執筆。「人と自然のかかわり方」の探求は、ライフワークの一つ。

虫や鳥、魚たちの姿を追って45年。生きものの魅力に触れたことがきっかけで、気が付けばこの30年は、環境問題を追いかけていました。自然を壊すのは人。守ろうとするのも人。生きものたちの生きざまに学びながら、謙虚な気持ちで自然を未来に引き継いでいきたいと願っています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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