欧州が温暖化ガス9割減案を提示 日本の目標は?
2024/03/27
欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は2024年2月、EU域内の2040年の温室効果ガスの排出量について、1990年比で90%削減という新たな目標を設定すべきだと提言しました。
これは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、その報告書において、地球の平均気温の上昇を産業革命時と比べて1.5度に抑えるために必要、として示した世界全体の削減目標を、大幅に上回るものです。その野心の高さは、世界をあっと言わせました。
これはまさにEUが脱炭素化を環境対策のみならず、巨大な産業振興策として位置づけ、そのトップを走ろうという政治的野心を示していると言っても過言ではないでしょう。下の図からもわかるように、EUは温室効果ガスの排出経路を2050年に向かってまっすぐに下げていくのではなく、2040年に向けてより急激に削減しようとしているのです。
https://climate.ec.europa.eu/eu-action/climate-strategies-targets/2040-climate-target_en
もちろんこの目標案が合意されるまでには困難が待ち受けています。そもそもEUの「2030年に55%削減」という現在の目標自体、達成が危ぶまれています。欧州委員会の報告によると、今のEUの削減ペースでは、2030年に51%程度までにしか削減率が届かないといいます。2030年に向かっての努力も足りていない現在、その10年先についてさらなる野心的な目標を目指すことが困難であることは間違いありません。
ひるがえって2024年にエネルギー基本計画の改定を予定している日本。温室効果ガスの約9割が化石燃料由来である日本としては、エネルギーの選択こそが日本の気候変動対策になります。
しかし、日本では伝統的に経済と環境が別々の場で議論されてきました。脱炭素化が経済成長の源泉であることは、「GX実現に向けた基本方針」でも認められている中、日本はただちにパリ協定の次の目標を議論する場を、省庁の壁を越えて立ち上げ、エネルギーミックスの議論を一体化して進めていくべきです。
そう願って、東洋経済オンラインに「日本はどうする?欧州が温暖化ガス9割減案を提示」と題して寄稿しました。
ぜひ多くの皆さまに読んでほしいと願っています!
(気候・エネルギーグループ 小西)