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EUが取り組む違法なオンライン取引対策-野生生物取引とのかかわりー


2月17日から、EU域内に利用者を持つ、すべてのオンライン・プラットフォームに、違法な商品やコンテンツの取引対策が義務付けられました。

これにより、2022年11月、EUで施行された「デジタルサービス法(DSA:Digital Service Act)」が本格始動となります。

日々拡大し、利用の在り方も多様化し続けるオンライン空間ですが、その一方で、違法な商品やコンテンツが取引される問題も多発するようになりました。

DSAは、これに対応する法律で、多くの商品やコンテンツの流通に使われるオンライン・プラットフォームに対しても、十分な対策の実施を義務付けました。

便利な反面、違法な商品やコンテンツを拡散させる要因にもなっているプラットフォーム側の責任を明確にし、社会的な役割を課している点は、DSAの画期的な要素といえるでしょう。

表:BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)。オンライン取引市場は年々拡大傾向にある。これを運営し、収益を上げているオンライン・プラットフォームは、違法性のある取引を排除する、大きな責任を負っている。

表:BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円)。オンライン取引市場は年々拡大傾向にある。これを運営し、収益を上げているオンライン・プラットフォームは、違法性のある取引を排除する、大きな責任を負っている。

出典:経済産業省、2023年8月31日ニュースリリースより
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html (経済産業省のサイト)

オンラインで取引される違法な商品の中には、野生生物やそれを材料にした製品も含まれます。

野生生物の過剰な利用は、時にその種(しゅ)を絶滅に追い込んでしまう大きな問題。そのため、希少な野生生物の取引には規制が設けられている場合も多くあります。

しかし、それを守らずに野生生物が違法にオンラインで取引されるケースは後を絶ちません。

そうした中で、DSAにより、プラットフォーム側の対策が義務付けられたことは、希少な野生生物の保護においても、大きな意味を持ちます。

スリランカヒョウ(Panthera pardus kotiya)。ヒョウの毛皮が、服飾品や小物などの加工品として、不適法にオンライン販売される例も。
© naturepl.com / Lucas Bustamante / WWF

スリランカヒョウ(Panthera pardus kotiya)。ヒョウの毛皮が、服飾品や小物などの加工品として、不適法にオンライン販売される例も。

オンライン・プラットフォームは商品の製造や販売を直接行なうわけではありませんが、取引の機会を広く提供する立場として、安心・安全な商品を提供する責任を問われる時代に変化しつつあります。

DSAのルールの施行を皮切りに、日本でも、オンライン・プラットフォームの自主的な取組みが進むことに期待したいところです。
(野生生物担当:柴田)

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自然保護室(野生生物)
柴田 有理

法務博士。大学院卒業後は官公庁に勤務。法律等による取締りの実務に携わった後、2023年にWWFに入局。現在は違法な野生生物取引及び持続可能でない野生生物取引対策業務を担当。

プライベートでもWWF会員。たくさんの人が地球のことをポジティブに考えられる未来を目指して日々勉強中。気になる動物はアオウミガメとセンザンコウ。

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