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日本の未来を考えたい 2023年の3月11日


皆さま、こんにちは。
WWFジャパン事務局長の東梅です。

今年も3月11日、あの東日本大震災が起きた日がやってきました。

本日あらためて、震災の犠牲になられた多くの方々と、大切なご家族、親しい方々を亡くされたご遺族の皆さまに、WWFを代表し、心からの哀悼の意を表し、お見舞いを申し上げます。

毎年、この日になると、震災の年から現在までに、日本という国で起きてきた、さまざまな変化について考えます。

環境保全の分野では、2016年に宮城県南三陸町での漁業復興の取り組みの中で、日本初の持続可能な養殖の国際認証(ASC認証)の取得が実現。地域の漁業者の方々の大変な努力により、この取り組みが、現在も継続されています。

防災対策についても、近年は「NbS(自然に基づいた解決策)」が注目され、その実現に向けた動きがみられるようになりました。NbSは、気候変動や自然災害への対策手段を、自然の仕組みや機能から学び、活用していくというもので、これからの生物多様性の保全にも通じる取り組みです。

一方で、心配な「変化」にも気づかされます。
その最たる例は、昨年末から急に動きが出てきたGX基本方針と関連法の成立です。

昨年12月に政府が発表したGX基本方針は、本来、企業の主体的な参加に基づいた、日本のカーボンプライシングの促進、すなわちこれからの気候変動対策の大きなカギと目されている施策です。

しかし、その内容は、キャップ&トレード型の排出量取引制度の導入などを含む、効果の期待できるカーボンプライシングの本格導入につながる要素を欠いた、憂慮すべき内容です。
また、この方針では、これまでの原発依存低減の方針を大幅に転換し、利用を拡大することを定めていますが、これについても国民的議論が無いまま、拙速に決定がなされようとしている点も、大きな問題です。

内容として、世界の気候変動の取り組みの大目標である「パリ協定」の達成にも充分に貢献せず、国民にも原発方針の大幅転換の判断を問うことをしない。
こうした判断や政策の進め方は、本当にこれからの日本のためになると言えるでしょうか。

私は、WWFジャパンのスタッフとして、また東北出身の一個人として、これからの日本は東日本大震災が生んだ大きな犠牲と悲しみに正面から応え、真に持続可能な未来の達成を目指す道を示し、歩んでいかねばならないと思います。

震災から12年、私たちはこれからもぜひ皆さまとご一緒に、よりよい未来、人と自然が共生できる世界の実現に取り組んで参ります。

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事務局長
東梅 貞義

国際基督教大学教養学部理学科卒業(生物専攻)。英国エジンバラ大学修士号(Master of Science)取得(自然資源管理専攻)
1992年WWFジャパンに入局以降、日本全国各地の重要湿地の保全活動に携わる。
2019年からはシニアダイレクターとして、WWFジャパンが手掛ける地球環境保全活動全般を統括。
2020年7月 WWFジャパン事務局長就任
座右の銘は、Together possible 「一緒なら達成できる」

自然保護に取り組み30年近く。これまでのフィールドは、日本では南は石垣島のサンゴ礁から、北海道の風蓮湖まで、世界ではペンギンの生きる南米の海から、渡り鳥の楽園の黄海、そしてミャンマー・タイの東南アジア最大級の手つかずの森まで。野生生物と人の暮らしが交差する現場で、現地の人々や研究者、グローバル企業、国際機関の方々とご一緒に、自然保護と持続可能な未来を目指して日々取り組んでいます。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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