脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ
2024/05/31
- 脱炭素社会に向けた 2050 年ゼロシナリオ 〈2024年版〉
- 脱炭素社会に向けた 2050 年ゼロシナリオ 〈2021年版〉
- 脱炭素社会に向けた長期シナリオ(2017年版)
- 原発も温暖化もない未来を!WWFのエネルギーシナリオ(2011/2013年版)
日本での「自然エネルギー100%」という選択肢
「自然エネルギー100%」という選択肢は、決して容易に達成できるものではありませんが、日本にある自然エネルギーのポテンシャルを活かせれば、十分に実現可能です。そして、東日本大震災・福島第一原発事故という未曾有の危機を経験した後に検討されるエネルギーの将来像は、「いままでのなりゆき」通りのシナリオであってはならないことも確かです。
WWFジャパンは、WWFインターナショナルの検討を参考に、今後、日本が持続可能なエネルギー社会を実現していくにあたっては、基本的に以下の3つを達成していくことが必要であると考えています。
そして、福島第一原発の事故発生後、この3つを達成する道筋(シナリオ)を描いた、『脱炭素社会に向けた長期シナリオ提案』を提示しました。その後2015年のパリ協定成立を受け、2017年に『脱炭素社会に向けた長期シナリオ』を発表、さらに2020年に発表された日本の2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、2020年から2021年にかけて、『脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ』を提案しました。
持続可能なエネルギー社会を、私たち自身の力でつかみ取るために、このシナリオ提案が役に立つことをWWFは願っています。
【2024年 アップデート版】 日本はCOP28の要請に応えられるか? 2035年GHG60%以上削減を可能とするエネミックス提案(2024年5月発表)
2023年12月ドバイで開催されたCOP28では、世界全体での気候変動対策の進捗評価の仕組み「グローバル・ストックテイク」が実施され、1.5度目標を達成するためには、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示した2035年までに世界全体で温室効果ガス(GHG)排出量を60%削減(2019年比)する必要があることが確認されました。また、同時に2030年に向けて再生可能エネルギー設備容量を3倍に拡大すること、エネルギー効率改善率を2倍にすること、そしてエネルギーシステムにおいて化石燃料から転換する取り組みを加速していくことも合意されました。
しかしながら、現在の日本のエネルギー基本計画やGHG削減目標等を定めるNDCは、COP28で決定した世界目標の達成には残念ながら整合していません。現在、政府は、エネルギー基本計画の更新とNDCの改定に向けた議論を開始しましたが、日本は、先進国としての責任を果たし世界の脱炭素をリードするために、少なくとも2035年60%削減を超える、高いGHG削減目標と再生可能エネルギーの最大限の導入の方向性を掲げることが求められます。
これまでWWFジャパンでは、2050年にGHG排出ゼロを実現するための道筋を描いた「脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ」を発表してきました。今般、このシナリオをアップデートし、2030年までに再エネ3倍(太陽光2.9倍、風力10倍)が可能であり、その延長線上で2035年にGHG排出量を60%以上削減可能であることがわかりました。
- WWF「2035 年 60%以上(2019 年比)の温室効果ガス削減を可能とする 「2035 年エネルギーミックスと NDC」提案」 PDF)
- WWF「脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ2024年版」
【開催報告】WWF「脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ2024版」発表会 ~日本はCOP28の要請に応えられるか? 2035年GHG60%以上削減を可能とするエネミックス提案~
【2021年 アップデート版】 検証:日本で「2050年に100%自然エネルギー社会は可能」(2021年9月発表)
2020年10月、菅義偉総理は就任後初の所信表明演説の中で、「2050年温室効果ガス排出量ゼロ」を表明。さらに2021年4月にパリ協定に提出する2030年目標として「2030年温室効果ガス46%削減、さらに50%の高みを目指す」と公表しました。
これを受け、WWFジャパンは、2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを実現する、日本の「エネルギーシナリオ」のアップデート版を2020年から2021年にかけて発表しました。
これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)からの経済回復が志向される中で、日本の産業構造の変革・強化につながる、今後の政策、施策をまとめたものです。
同時に2050年ゼロに向けた現実的な2030年のエネルギーミックスの在り方と、「パリ協定」に再提出するべき日本の国別削減目標(NDC)についても、提言を行ないました。
- WWFジャパン『脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ』(PDF)
- WWFジャパン『脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ』コスト算定編(PDF)
- WWFジャパン『脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ』インフォグラフィックス(PDF)
46%、さらに50%の温室効果ガス削減目標(2030年)を実現する 「2030年エネルギーミックス」提案~2050年100%自然エネルギーで賄う社会に向けて~
【開催報告】WWFエネルギーシナリオシンポジウム~2030年46%削減はどのようにして実現可能か~
脱炭素社会に向けた長期シナリオ(2017年2月発表)
パリ協定の下で、各国は2050年までの「長期戦略」を描き、国連に提出することが求められています。その内容は、当然ながら、パリ協定が目指す「脱炭素化」に貢献しなければなりません。
この「長期戦略」へのインプットとして、WWFジャパンは、2011〜2013年に作成したシナリオをアップデートしました。基本的な考え方は変わりませんが、新版では、政府が掲げる「2050年までに80%削減」に対応したブリッジシナリオも含めています。加えて、改めて、「100%」自然エネルギーが可能であることを、省エネルギーの可能性、自然エネルギーのポテンシャル、必要なコストの3点から示しています。
※2017年版は、2011/13年版の第1部〜第4部を1冊にまとめてアップデートしています。電力系統については、2011/13年版・第4部の内容がほぼそのまま適用できます。
- ※費用算定部分の計算に一部誤りがあったため、本編および概要版の修正を致しました(2017年4月13日)。
- 『脱炭素社会に向けた長期シナリオ2017 ~パリ協定時代の2050年日本社会像~』を発表
新しいエネルギー社会に向けた
『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案』
このシナリオは、以下の4つの分冊から成っています。
【2011/2013年版・第1部】省エネルギー編 (2011年7月発表)
再生可能な自然エネルギーが主要な役割を担う社会の未来を構想するとき、基本になるのは、高い効率「省エネルギー」による資源浪費のない快適な暮らしです。
ここで必要とされるエネルギーが少なければ、それだけ再生可能エネルギーによる「100%」供給を実現できる可能性が高くなるからです。
したがって、「脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ」の内容は、現在のエネルギー消費を見つめなおし、それを効率化する「省エネルギー」が出発点となります。
【2011/2013年版・第2部】自然エネルギー100%編 (2011年11月発表)
第一部で作成した「省エネルギー」の想定を基に、必要とされるエネルギー需要に対して、日本国内にある水力、太陽光、風力、地熱、太陽熱、バイオマスの自然エネルギーによる供給シナリオを検討しました。
ここでは、日本全国842地点の1年間の気象データを用いて、1時間ごとの太陽光や風力によるエネルギー供給を計算し、生じた過不足については、揚水発電とバッテリーの適切な電力貯蔵について、シミュレーションしています。
また、2050年の電力需要を、こうしたエネルギーが年間365日通じて満たせるかどうかについてもシミュレーションを行ない、年間の需要変動にあわせた形で、自然エネルギーを供給できる可能性を明らかにしました。
【2011/2013年版・第3部】費用算定編 (2013年3月発表)
第3部は、日本で「2050年までに自然エネルギー100%」を実現する上で必要な費用を試算します。省エネルギー推進にかかる設備や運転の費用を、産業や家庭といった部門ごと算定。また、太陽光発電、風力発電、地熱発電、水力発電、太陽熱、バイオマスについても同じく算定しました。
その結果、必要とされる追加的投資は、2010年からの40年間に節約されるエネルギー費用と比較すると、232兆円の利益として還元されることがわかりました。
これは、省エネルギーと自然エネルギーへの投資の総費用は、年間GDPの1.6%程度に収まること、そして、2030年ごろには節約できる金額が投資費用を上り、2050年には大きな便益となることを示すものです。
【2011/2013年版・第4部】電力系統編 (2013年9月発表)
風力や太陽光は、天候や気象によって出力が変動しますが、日本の国内で、電力が不足している地域と、余っている地域を結び、過不足の変動を吸収できれば、自然エネルギーを大量に普及させることが可能です。
第4部では、日本の「電力系統」が大量の自然エネルギーを受け入れられるのか、また、どのくらい系統間の連系が必要となるのかを追及しました。
検討の結果、コスト的、技術的にも、自然エネルギーが日本の電力全体に占める割合を、2050年までに100%まで引き上げられる可能性が見えてきました。
【2011/2013年版・補論】
検証:自然エネルギー接続保留に関する定量的分析(2014年11月)
2014年11月、九州電力を含む電力各社の再生可能エネルギー接続保留問題を受けて、WWFジャパンでは、九州電力管内における再エネの導入について、シミュレーションを行ないました。
その結果、九州電力管内に1,260万キロワットの再生可能エネルギーが導入されても、揚水発電や地域間連系線など活用すれば、現状の系統システムで吸収可能であることが分かりました。
さらに、電力会社が行なう接続可能量の検証が、過大に再生可能エネルギーの出力抑制を見込んでしまう可能性があることも明らかになりました。