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クロマグロ 値段より大事なこと


海洋水産グループ マグロ担当の植松です。

11月29日から12月7日まで、太平洋クロマグロの資源管理について協議する国際会議、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の年次会合が開かれ、2022年から30キログラム以上の成魚の漁獲枠を21年比で15%増やすことが合意されました。

これを受けて、あたかもマグロが安く買えるようになるような報道が多くありましたが、実は、この増枠が原因で大きく安くなることはあまりないと思っています。

というのも、今回増枠されるのは、高級な成魚のみで、基本、高級寿司屋やレストランに多く流通しているものだからです。

コロナの影響で高級マグロの需要は低下している一方、その他クロマグロ類(大西洋クロマグロ、ミナミマグロ、完全養殖クロマグロ)によって供給量が増大しており、すでに価格が下がっている状況です。

また、漁獲枠が増えたことについても、時期尚早と考えています。

資源管理の結果、ここ数年、関係者の間ではクロマグロは増えている、たくさんいるという話が聞かれるようになり、実際資源評価も増加傾向にあり、絶滅危惧種指定も解除されました。

そのよう状況ですが、資源量は歴史的には依然として低水準(他魚種では禁漁するレベル)で、目標値も達成しておらず、管理措置も十分ではないからです。

確かに太平洋クロマグロの資源量は少し回復しており、今回、日本の漁獲枠の増枠が決定したことは事実ですが、値段が下がるとか上がるとかより、マグロ資源が今どういう状況にあるのか、それはなぜそうなっているのか、もっと本質的なことを報道して欲しいと、心から願っています。

消費者の視点で海の資源を考える「おさかなハンドブック」

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自然保護室(海洋水産 IUU漁業対策マネージャー、水産資源管理マネージャー)
植松 周平

農学博士。東京大学大学院農学生命科学研究科において水域保全学に関する博士号を取得。その後、経営コンサルティング会社を経て、国際水産資源研究所(現 水産研究・教育機構)に入所。太平洋クロマグロの資源研究を行う。2013年よりWWFジャパンで勤務し、マグロ、カツオ、サンマといった国際水産資源の保全やIUU漁業対策に関わる業務に加え、事業戦略立案や各種業務改善等の社内コンサルタント業務にも従事。2021年には水産庁水産流通適正化法検討委員を務めた。

子供の頃から、田んぼや川、海で遊ぶことが大好きでした。高校生の時、幼少時の遊び場の環境破壊を目の当たりにし、「なんとかせねば」と思い環境保全の道を目指すことに。環境保全とは、生き物だけでなく、人々の生活も守ること。それは、とても難しいことだけど必要なことです。海洋保全研究者だけでなく、経営コンサルタントの経験も活かし、子供たちの未来のために、皆様と一緒に頑張っていきたいです。

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