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熱帯マグロの持続可能な資源管理を日本企業が要望

この記事のポイント
世界で多く消費され資源低下が懸念されている熱帯マグロ類(カツオ、キハダ、メバチ)。その最大の漁場である中西部太平洋の漁業を管理する国際機関WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)と、日本の水産庁に対し、持続可能な熱帯マグロ漁業を求める要望書が、日本の18の企業・団体より提出されました。世界有数の水産マーケットを有する日本の企業が、難航するWCPFCでの国際交渉の場に対し要望したことにより、持続可能な熱帯マグロ漁業にむけた議論が前進することが期待されます。
目次

悪化している熱帯マグロ類資源のゆくえ

熱帯マグロ類とは、赤道付近の熱帯域に産卵場があるカツオ、メバチ、キハダの3種の総称であり、日本が位置する中西部太平洋は最大の漁場です。

カツオは、お刺身やタタキ、かつお節の原材料として用いられており、和食にとって大変重要な魚の一種です。

メバチ、キハダは、お刺身して多く消費されており、クロマグロなどに比べて安価で取引されることから人気があります。

一方海外では、カツオ、キハダはツナ缶材料として重宝され、安価なタンパク源として発展途上国を中心に漁獲量が増大し続けています。

その結果、これら熱帯マグロの最大の漁場である中西部太平洋では、熱帯マグロの資源量低下が懸念されており、カツオにいたっては近年、過去最低レベルまで低下してしまいました。

そのため、熱帯マグロの資源が枯渇してしまうのを防ぐため、漁業管理に取り組むWCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)の会合において、日本など加盟する国々が、予防原則に従った早期の資源管理措置の導入に合意することが必要とされてきました。

しかし、熱帯マグロ3種は、一つの航海で同時に漁獲されることが多いため3種を総合的に管理する必要があり、その複雑性から、導入のための議論は難航しています。

【関連情報】カツオという生物~その特徴と漁獲・消費量
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熱帯マグロの資源保全のために 声を上げた日本のマーケット

この状況に対しWWFジャパンでは、2020年6月以降、熱帯マグロの生産と消費に関連する企業を対象に、5回にわたるウェブセミナーを開催。

日本企業とともに、資源問題を解決するための方法 について模索してきました。

そ して、こうした日本企業・団体は、2021年11月、連名で持続可能な熱帯マグロの資源管理をもとめる要望書を、WCPFCと水産庁に提出しました。

日本初 持続可能なカツオ資源管理をもとめる日本企業からの要望書

WWFも参加したこの要望書の提出は、2021年11月29日から行なわれる、WCPFCの年次会合に向けて行なわれたもので、2020年に続き2回目となります

そしてこのような積極的な行動は、SDGsの「海の豊かさを守ろう」や「つくる責任 つかう責任」の実現に、企業が大きく貢献する好例にもなっています。

2021年11月29日より始まる、次のWCPFC年次会合でも、これまでの議論を踏まえ、新しい資源管理措置が導入されることが期待されます。

世界中の水産物を多く漁獲・消費している水産大国日本からの
積極的な取り組みが活かされ、WCPFCがカツオについても、予防的な資源管理措置を導入する決議を行なうよう、WWFジャパンは引き続き活動していきます。

持続可能な熱帯マグロ資源管理を求める要望書

20211126
中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC
18回年次会合
日本代表団 御中
WCPFC議長 Jung-re Riley Kim殿

我々、持続可能な熱帯マグロ(カツオ、キハダ、メバチ)の生産と消費を推進する日本の18の団体は20211129日から始まる中西部太平洋まぐろ委員会(以下、WCPFC)年次会合において、熱帯マグロ資源の持続可能な利用と保全のため、予防原則に従った漁獲戦略が導入されることを強く要請いたします。

特に近年、中西部太平洋のカツオの漁獲量は急激に増加し、資源量は過去最低水準まで減少しているにも関わらず、漁獲圧は増加し続けています。キハダやメバチも同様に漁獲圧の増加や資源量の低下が危惧されています。もしこの状況を看過することになれば、世界のマグロ・カツオ産業のみならず健全な海洋生態系の存続が危ぶまれます。

このような状況を解決するために、WCPFC加盟国は、管轄下にある熱帯マグロについて、目標/限界管理基準値および漁獲制御ルールを含む、予防原則に従った漁獲戦略の導入を、早期に採択すべきです。
 
熱帯マグロは、世界で大量に漁獲されており、なかでも中西部太平洋はその世界最大の漁場です。WCPFCで上記を実現することは、世界における持続可能な漁業管理の推進にもつながります。よって、私たちはWCPFCが責任ある決定を下すことを期待します。

また日本は、熱帯マグロの世界有数の漁獲国であると同時に消費国でもあります。日本代表団には、熱帯マグロ漁業において、予防原則に従った漁獲戦略が採択されるよう、WCPFCにおいてリーダーシップを発揮することを期待します。
以上

賛同企業・団体

  • イオン株式会社 (AEON Co., Ltd.)
  • 石原水産株式会社 (ISHIHARA MARINE PRODUCTS. Co., Ltd.)
  • 石巻漁業株式会社 (Ishinomaki Fishery Co., Ltd.)
  • 一般社団法人日本鰹節協会 (Japan Katsuobushi Association)
  • 日本生活協同組合連合会 (JAPANESE CONSUMERS' CO-OPERATIVE UNION)
  • 株式会社きじま (KIJIMA Co., Ltd.)
  • 共和水産株式会社 (Kyowa Fishery co.,ltd.)
  • マルハニチロ株式会社 (Maruha Nichiro Corporation)
  • 明豊漁業株式会社 (MEIHOGYOGYO Co., Ltd.)
  • 三菱商事株式会社 (Mitsubishi Corporation)
  • MSCジャパン (MSC Japan) (日本代表団宛てのみ賛同)
  • 株式会社にんべん (NINBEN CO.,LTD.)
  • 日本水産株式会社 (Nippon Suisan Kaisha, Ltd.)
  • 株式会社シーフードレガシー (Seafood Legacy Co., Ltd.)
  • 大洋エーアンドエフ株式会社 (Taiyo A&F Co., Ltd.)
  • 東海漁業株式会社 (Tokai Fishery co.,ltd.)
  • 東洋冷蔵株式会社 (Toyo Reizo Co.,Ltd)
  • WWFジャパン (WWF Japan)
消費者の視点で海の資源を考える「おさかなハンドブック」

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