© Scandinavian Fishing Yearbook / WWF

熱帯マグロ漁で広がるサステナブルな利用の動き


マグロ、というと、どのような魚を思い浮かべるでしょうか。
寿司や刺身の食材でしょうか。大きさ2m、初競りでは数千万円の値が付く高級魚、そんな印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

でも、マグロはもっと身近な魚でもあります。
たとえば、ツナ缶でよく使われているキハダ、そしてカツオも、歴としたマグロの一種。

そして、本まぐろ同様、資源の乱獲や枯渇が心配されている魚でもあります。

© Ezequiel NAVIO / WWF

南洋に生息する熱帯マグロの一種キハダ。日本でも重要な食材ですが、海外でも「Tuna」として、欧米をはじめ多くの国々で大量に利用されています。世界最大のカツオ・キハダの漁場である太平洋では、資源量が過去最低レベルまで減少しています。

私たちはこうしたシーフードの「持続可能(サステナブル)な利用」を促進するため、MSC(海洋管理協議会)による国際認証の普及に取り組んできました。

これは、資源量や海の環境に配慮した漁業を認証し、そこで生産されたシーフードにMSCのエコラベルを付け、消費者にも一目で、サステナブルなものであることが分かるようにする、世界共通の仕組みです。

環境や資源への配慮には、手間もコストもかかるため、これを実践する漁業者や水産会社の苦労は一通りではありません。

それでも、今では多くのシーフード関係者が、海の未来に危機感を抱き、協力しながらこうした取り組みを進め始めています。

© WWF Japan

MSC認証を受けた水産物。店頭で販売されるパッケージには、MSCのロゴがエコラベルとしてつけられています。

その成果として2月15日、私たちWWFも協力してきた、カツオ・キハダのまき網漁が、この漁法では日本では初となるMSC認証を取得。

続いて2月27日にも、日本企業とミクロネシア連邦の国営企業の合弁会社によるカツオ・キハダのまき網漁が、同じくMSC認証を取得しました。

マグロは、私たちにとって、食べられることが当たり前、の魚かもしれませんが、サステナブルなシーフードとしては、まだ当たり前ではありません。

MSC認証をより広めながら、未来に向け、マグロのいる豊かな海を守っていきたいと思います。

© Jürgen Freund / WWF

魚は生きものですから、獲りつくさなければ、また新たな命を生み、回復します。そのスピードと、使う量をきちんと考え、人が漁業を管理すれば、「持続可能」な水産物の利用は十分に可能なのです。

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自然保護室(海洋水産 IUU漁業対策マネージャー、水産資源管理マネージャー)
植松 周平

農学博士。東京大学大学院農学生命科学研究科において水域保全学に関する博士号を取得。その後、経営コンサルティング会社を経て、国際水産資源研究所(現 水産研究・教育機構)に入所。太平洋クロマグロの資源研究を行う。2013年よりWWFジャパンで勤務し、マグロ、カツオ、サンマといった国際水産資源の保全やIUU漁業対策に関わる業務に加え、事業戦略立案や各種業務改善等の社内コンサルタント業務にも従事。2021年には水産庁水産流通適正化法検討委員を務めた。

子供の頃から、田んぼや川、海で遊ぶことが大好きでした。高校生の時、幼少時の遊び場の環境破壊を目の当たりにし、「なんとかせねば」と思い環境保全の道を目指すことに。環境保全とは、生き物だけでなく、人々の生活も守ること。それは、とても難しいことだけど必要なことです。海洋保全研究者だけでなく、経営コンサルタントの経験も活かし、子供たちの未来のために、皆様と一緒に頑張っていきたいです。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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