コロナ禍で森林破壊は悪化したか?
2021/04/08
結論から言うと、熱帯の原生林は2020年に420万haが失われ、2019年より12%増加していました(*1)。
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熱帯原生林の減少量。緑の棒グラフは年ごとの減少量、黒の曲線は3年移動平均。
新型コロナウイルス感染症によって、森林破壊が激増するのではないか。
そんな懸念が私たちWWFスタッフの間でも広まっていました。
ロックダウンにより、保護区の維持管理を支える重要な財源であるエコツーリズムが激減したことに加え、財政難に陥った各国政府が保護区への予算を削減していたからです(*2)
ブラジルなどでは、経済回復のために森林保護に関わる法律を弱める動きもありました。
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年間420万haもの熱帯原生林の消失は、2016年と2017年を除けば2002年以降で最悪の記録。この事実は、依然として世界の森が危機的状況にあることを示しています。
12%増を、多いと見るか少ないと見るかは、意見の分かれるところかも知れませんが、データを発表したWorld Resource Institute(世界資源研究所)は、コロナとの明瞭な因果関係を認めていません。
しかし、コロナの影響がこれから現れてくる可能性はあります。
保護区への予算削減などが、その影響を及ぼし始めるのは、まさにこれからとなるからです。
何より、多くの専門家が繰り返し警告してきた通り、森林減少が続けば、次のパンデミックのリスクも高めることになります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が収まらないうちに、次のパンデミックが起こらないとも限らないのです。
グリーン・リカバリーを進め、いかに森林破壊を伴わない社会のあり方、生産と消費の仕組みを実現できるかに、人とこの惑星の未来がかかっています。
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参考文献
*1 https://research.wri.org/gfr/forest-pulse?utm_medium=media&utm_source=article&utm_campaign=globalforestreview
*2 IUCN WCPA (2021). PARKS. The International Journal of Protected Areas and Conservation, Volume 27 (Special Issue), Gland, Switzerland: IUCN.