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日本人によるベッコウ密輸事件発覚!


甲羅を利用したベッコウ製品
©TRAFFIC

甲羅を利用したベッコウ製品

先日、日本人の事業者がベッコウを密輸した疑いで逮捕される、というニュースが飛び込んできました。

「ベッコウ」は、ウミガメの1種タイマイの甲羅を使った装飾品の材料のこと。

古くからアクセサリーやメガネのフレームなどに利用されてきました。
しかし、甲羅を目的とした乱獲や、漁網に誤って絡まり命を落とす混獲などが原因で、タイマイは激減。

現在は生息国の多くで保護の対象とされ、甲羅の国際取引も1977年より全面的に禁止されていますが、今なお深刻な絶滅の危機にあります。

日本は1994年まで国際取引禁止を受け入れず、輸入を続けていました。現在も、輸入禁止前に海外から輸入された甲羅の在庫が国内にあり、ベッコウ製品の製造と国内取引が行なわれています。

しかし、この在庫を利用したベッコウ製品には、一つ問題があります。

新たに密漁され、密輸されたタイマイの甲羅を使った製品が混ざりこんでも、日本の市場ではそれを区別することができないのです。

こうした状況の中、ベッコウを扱う事業者が違法行為に及んだことは、由々しき問題です。

主にサンゴ礁が発達した温かい海、なかでもインドネシアやミクロネシアの海に多くすんでいます。エビやカニのほか、尖った口と前肢で、死んだサンゴのがれきの下からカイメンを器用に選り分けて食べます。
©James Morgan / WWF-US

主にサンゴ礁が発達した温かい海、なかでもインドネシアやミクロネシアの海に多くすんでいます。エビやカニのほか、尖った口と前肢で、死んだサンゴのがれきの下からカイメンを器用に選り分けて食べます。

日本の規制の甘さが、こうした違法行為を許してしまう現状は、他の事例でも見受けられます。


象牙については、密輸入ではなく、日本から中国などに密輸出する事例が後を絶ちません。

こうした国際社会において保護・規制強化が進む野生生物由来の製品が、日本の市場で今も取引され続けている問題に対し、私たちWWFジャパンでは、政府に政策の見直しを要望しています。

世界の野生生物に影響を及ぼす可能性のある、日本の国内取引や野生生物の利用の在り方を、消費者の視点もまじえながら、今一度考える必要があります。

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自然保護室(野生生物 グループ長)、TRAFFIC
西野 亮子

学士(芸術文化)
2009年よりTRAFFICにて広報分野を中心に従事し、イベント運営、出版物作成などワシントン条約に関する普及啓発に努める。2016年からは重点種(特に注力すべき種)プログラム推進に携わり、取引を中心とした現状調査を担当。2018年以降は、関係する行政機関や企業へ働きかけ、取り組み促進を促す活動に従事し、野生生物の違法取引(IWT)の撲滅、持続可能ではない野生生物取引削減を目指す。ワシントン条約第70回常設委員会参加。東京都象牙取引規制に関する有識者会議委員(2022年3月終了)

「野生生物を守る」ことを起点に、そこに暮らす人、その場所の環境、そして利用する側の意識、すべての段階で取り組みが必要です。生息地から市場まで、それらを繋ぐことが私の役割です。

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