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チョコっと覗くカカオ生産の裏側


コトカ国際空港を出ると聞こえてくる家族や友人を出迎える人たちの歌や太鼓の音。

ここは日本から約13,000km離れたガーナ共和国。

私たちが今取り組んでいる、西アフリカの森林保全と、持続可能なカカオ生産のフィールドがある国です。

出迎えの人たちでごった返しているコトカ国際空港。エネルギッシュな群衆の空気感に圧倒されました。
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出迎えの人たちでごった返しているコトカ国際空港。エネルギッシュな群衆の空気感に圧倒されました。

ガーナはチョコレートの原材料となるカカオの世界有数の生産地。
日本に輸入されるカカオの7割以上はガーナ産です。

しかし、その生産のためガーナではカカオ農園が急激に広がり、森林破壊を引き起こしてきました。

特に、カカオの木ばかりを栽培するモノカルチャー農園の拡大は、植物の多様性を損ない、森林を劣化させる大きな要因になっています。

ガーナの仲買人の倉庫で一時保管されていたカカオ豆。遠い国に感じるかもしれませんが、日ごろ私たちがチョコレートを食べることができているのはガーナのおかげといえます。
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ガーナの仲買人の倉庫で一時保管されていたカカオ豆。遠い国に感じるかもしれませんが、日ごろ私たちがチョコレートを食べることができているのはガーナのおかげといえます。

そこで、WWFジャパンは2022年から、カカオのモノカルチャー農園をアグロフォレストリーに転換するプロジェクトを実施しています。

農園の生産性を上げ、新たな森の開発を防ぐことがその目的です。

発芽したばかりのカカオ。農家向けに届ける苗木の育成も支援しています。
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発芽したばかりのカカオ。農家向けに届ける苗木の育成も支援しています。

実はカカオの木は直射日光が苦手。
そこで日陰を作ってくれる樹木(シェードツリー)を植えることで、カカオ豆の生産に適した環境を整えます。

また、シェードツリーに、もともとガーナの地に生育していた在来植物を選ぶことで、森の生物多様性を回復させる効果も期待できます。

こうした多様な植物を組み合わせて行なう農業が「アグロフォレストリー」なのです。

大きく育ったシェードツリーと、カカオ栽培歴35年の大ベテランのアンポワ氏(写真中央)。「シェードツリーがあると日陰ができるだけでなく、土壌の保水性や健全性が保たれるので収量が安定する」というお話を聞かせてくれました。
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大きく育ったシェードツリーと、カカオ栽培歴35年の大ベテランのアンポワ氏(写真中央)。「シェードツリーがあると日陰ができるだけでなく、土壌の保水性や健全性が保たれるので収量が安定する」というお話を聞かせてくれました。

大切なことは、農家さんがシェードツリーの機能や重要性をしっかり理解していること。

そうした農家の皆さんと共に、持続可能なカカオの生産を目指していく、その第一歩として、アグロフォレストリーの取り組みをしっかり進めていきたいと思います。

こうした活動を通じて、チョコレートが好きな皆さんに、ぜひカカオが抱える問題について、より深く知っていただきたいと考えています。

シェードツリーの苗木(2023年)。右:シェードツリーの苗木(2024年)。1年前は20~30cmだった苗木が、120~130㎝程度まで順調に成長していました。過去には国の政策で、効率よく農地を活用するため、シェードツリーを伐採し、逆に収量が減少してしまったこともありました。農家の皆さんがそんな過去の経験に基づいて、シェードツリーの重要性を実感されていることが、今回の視察でよくわかりました。
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シェードツリーの苗木(2023年)。右:シェードツリーの苗木(2024年)。1年前は20~30cmだった苗木が、120~130㎝程度まで順調に成長していました。過去には国の政策で、効率よく農地を活用するため、シェードツリーを伐採し、逆に収量が減少してしまったこともありました。農家の皆さんがそんな過去の経験に基づいて、シェードツリーの重要性を実感されていることが、今回の視察でよくわかりました。

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溝口 拓朗

農学博士。大学卒業後、新卒で種苗メーカーに就職し葉根菜類の種子生産業務を経験。その後、大学で東南アジアの種多様性保全や国内林業における生態系サービスを考慮した施業方法について研究したのち、2024年にWWFジャパン入局。現在は、ガーナでの森林保全やカカオに関わる国内企業の行動変容に関する業務に従事。

リオデジャネイロ宣言がなされた年に生を受け、自然豊かな土地で育ちました。生活の中で日々享受している自然の恵みは、失って初めてその重要性を実感することが多いです。「足るを知る」。目の前に豊かな自然があるのは当たり前ではありません。一人一人の行動・選択がネイチャーポジティブな未来につながるよう尽力していきます。

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